詐病は法廷で通用しない

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2010年神戸市で高校生が刺殺され、2021年に犯人が逮捕された事件の公判で「詐病」が注目されました。弁護側は被告に精神疾患があったことを主張していましたが、精神鑑定に当たった医師が「詐病の可能性が高い」と判定したのです。

被告は精神鑑定で「自分は統合失調症で幻聴や妄想があった」と訴えていましたが、統合失調症にしてはおかしな点が幾つも出てきたそうです。「思考障害が一切みられない」「事件後に治療なしで改善したと言い張る」「妄想や幻聴のことを『後で思い出した』などと言う」などです。結果、詐病を見極める基準において10項目中8項目も該当する有様でした。

「責任能力なし」と判断されれば無罪判決にも繋がりますので、被告や弁護人によっては「おかしさ」を強調したり本件のように詐病を用いたりすることがあります。植松聖の裁判では思想をまとめたノートを晒す一幕がありましたが、あれも弁護側が用いた「おかしさ」を強調するための戦術です。小手先の詐術は大抵見破られるので、判決に影響することはほとんどありませんが。

呆気なく詐病を見破られた弁護人は「他の精神疾患には該当するんじゃないのか」と食い下がりましたが、医師は一つ一つの疾患名と特徴を挙げながら、いずれも被告には該当しないと返しました。こうしたこともあってか、神戸地裁では懲役18年の実刑判決が下っています。

なお、仮に詐病戦術が通って無罪になったとしても釈放の前に精神病棟への措置入院が待っています。寛解が認められるまで退院は許されず、その退院も措置入院した被告全体で2割弱に留まります。行き場のない処罰感情は兎も角、すぐ無罪放免となる訳ではないことは押さえておきたいですね。

なんにせよ、詐病は法廷へ臨むにあたって姑息でセコくて自己中心的な態度です。無理矢理にでも責任能力の問題に持っていこうとするのは、偏見が鋭い者の餌にしかならないのでやめてもらいたいですね。そもそも知識や経験の豊富な精神科医を素人が騙そうとするなど烏滸がましいにもほどがあります。

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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