高機能自閉症とは?〜話せるようで話せない

発達障害

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「高機能自閉症」を聞いたことがありますか?知的障害のない自閉症を指します。アスペルガーとの区別は、言葉の発達の遅れがあるか、という点です。高機能自閉症の方は、むしろ学力や能力の高い人も多く、一見コミュニケーションに問題がないです。しかし、当人は子どもの頃から大人になってもコミュニケーションの困難を抱えており、それは周囲から分かりづらいです。高機能自閉症だからこそコミュニケーションで困ることは何か、どう対応できるか、私自身の話を通じて紹介します。

聴き取りが苦手

幼少期の私には、周囲の話や声がまったく入ってこなかったです。自分の世界にしか興味がなかったからです。学校でも先生の指示が理解できなかったため、授業についていけなかったり、同級生ともよくトラブルになったりしました。大人になった今は、自分と周囲の違いや、相手を大切にした関わり方を学習したので、「人の話をじっくり聴く」姿勢は身につきました。しかし、人の話を聴くことを心がけるようになって初めて、私は自分の聴き取りにくさの原因は、「興味のいちじるしい限定」だけではないことを知りました。

私の場合、他の話し声やノイズが入り込むと、相手の会話が5割程度、調子が悪い時は2割しか聴き取れなくなります。また、静かな場所にいても、その日の調子や相手の声の質によっては聴こえづらくなります。この間も、母が言った「雨(あめ)まじり」を、私は「アルマジロ」と聞き間違えてしまい、二人で一緒に笑いました。騒がしい場所にいても、相手の会話をちゃんと聞き取れる現象を、「選択的注意」または「カクテルパーティー効果」と呼びます。発達障害のある方は、膨大な情報から自分の必要な情報だけを聞き取ることが苦手であることが多いです。そのせいか、電話で相手の声は非常に聴き取りづらく、レストランでも他のお客さんの会話や食器の音が飛びかうため、会話についていけないのが私の悩みです。しかも、私の場合は何の問題もなくスムーズに聴き取れる時もあれば、手話が必要なんじゃないかと思うほど聴き取れないなど、聴き取り能力の「波」が激しいです。そのため私の聴き取りづらさは、周囲にも分かりづらく、私自身も常にどう説明すれば相手に上手く伝わるのかを試しては、自問自答しています。

さらに、聴き取った話から「相手が何を訊きたいのか」、「何を伝えようとしているのか」、という意図を理解するのに時間がかかります。この場合は気を遣うところではありますが、相手の都合を配慮しつつ、分かるまで質問します。相手の方がいいよ、と言ってくれた場合は、こまめに「メモ」も取るようにしています。たとえ聴き取りに苦戦していても、相手の話をちゃんと聴いて理解しようとする誠実な姿勢を見せれば、相手の方はたいてい嫌な顔せずにOKしてくれます。

口下手なところ

高機能自閉症を含む自閉スペクトラム症は、話の「要点」をつかみ、簡潔に「まとめて」伝える、「理解する」ことが苦手な方が多い印象があります。私は非常に口下手です。人に何かを知らせ、質問したりする際も、本題から説明することをよく忘れます。自分の声は大きくないか、変なトーンになっていないか、と不安や緊張も強いため、たどたどしい話し方をよくしてしまいます。二十代以前の私は、声の抑揚やイントネーションが変わっている、と周囲に笑われ、からかわれたことが恥ずかしかったので、今も自分の声のトーンが気になります。さらに、自分の声の音量を調整することや、相手にどう伝わっているのかも、よく分からない時が多いです。話に夢中になって興奮すると、静かな廊下や授業中でも大きな声で話してしまい、周囲に怒られるまで気付けません。今は、自分の声の大きさと周りをなるべく気遣っています。それでも、やはり興奮すると声が大きくなったり、逆に小さすぎて相手に伝わらなかったりします。「言うは易く行うは難し」、と同じく、「書くは易く話すは難し」、というのは、私のように文字は得意だけれど口下手な発達障害の方に当てはまると思います。

また、幼少期はあまり気にしていませんでしたが、最近は人との「何気ない会話」に苦戦しています。昔から私は、自分の好きなマンガやアニメの世界にしか興味を抱けない特性があります。奇妙な話ですが、自分が興味ある勉強の知識はすらすら入るのに、世間一般常識とされる固有名詞、有名な芸能人の名前、番組などには、記憶するのに「努力」がいます。最近は初めて耳した言葉があれば、「とりあえずメモ」をし、時間がある時に「調べてみる」ようにしています。残念ながら、ここまでしても忘れることも多いですが、相手が話すと思い出せることもあります。塵も積もれば山になる、という言葉通り、少しずつではありますがテレビに出る固有名詞や有名人の名前が少しずつ出てくるようになりました。

文字の力

前述でもふれた通り、高機能自閉症やアスペルガーの方の中には、話すより「書く」ほうが自分の気持ちを整理・表現しやすい方が多いです。私自身も普段は口下手で、特に初対面の方と話す時は緊張して声が小さくなります。しかし、「文章」を書く時は伝えたいことが不思議とすらすら出てきます。アスペルガー症候群、ADHD(注意欠如多動性障害)、LD(算数障害)を持つ精神保健福祉士の笹森理絵さんも、心療内科の主治医に自分の困っていることを上手く伝えることが難しかった、と著書で述べています。発達障害の方は苦しさを感じていても、相手に大丈夫ですか?、と訊かれると「大丈夫です」、と答えてしまいます。しかも、無表情あるいはにこにこしているため、外から見ても分かりづらいことが多いです。そのため、笹森さんはまず自分が今困っていることは何か、体調はどうなのかについて「紙に書いて整理」してから伝えました。

発達障害の方に限りませんが、確かに頭の中で整理し、考えながら伝えることは大変です。なので、私自身も伝えたいことをスムーズに言いづらい時や、つい遠慮するクセが出てしまいます。その場合は、あらかじめ「メモ」に箇条書きしてまとめてから、それをもとに相手と話すようにしています。「文字」で書かれていれば、聴き取りや整理が苦手な発達障害の方の中に、「絵」として入りやすいです。さらに、緊張するあまりセリフが飛んでしまった場合でも、すぐにメモを確認すれば何を伝えたかったのかを、すぐに思い出せます。最近はスマートフォンやタブレットのメモ帳機能が発展しています。そちらのメリットとしては、手書きが苦手な発達障害者も「メモしやすい」ことや、自分と相手にとっても「読みやすい」、さらに「修正」がききやすい点です。今後はプライベートに限らず、学校や職場などにも当たり前のように普及していけば、発達障害者に限らず多くの方にとっても伝えやすい場所が生まれると思います。

まとめ

・高機能自閉症は、知的障害を伴わない自閉症です。
・知的能力は平均以上ですが、「書く・読む」ことは得意でも、「話すこと・伝えることが苦手」な方が多いです。※個人差はあります
・他には私の事例も含めると、苦手なことは「聴き取り」、「要点をまとめる」、「内容の意味・ニュアンスを理解する」だと思います。
・「文字」は絵として頭に入りやすく、全体像を見ることができるため、発達障害者にとって言葉を伝える時、理解する時に非常に有効なツールとなる。

高機能自閉症は、能力が平均以上である方が多いです。しかし、それゆえに困っていることがあっても、周囲には気付かれにくく、福祉の対象からこぼれてしまう方もいます。当事者の方自身と周囲は何ができるのかを、互いにやり取りを行うことは大切です。それでも当事者は「伝え方」、周囲は「気付き」に難しさを抱えている場合は、「文字のメモ」を活用することをおすすめします。また、文字も一つの手ですが、高機能自閉症を持つ一人ひとりが安心して伝えやすい方法を、周囲は一緒に考え寄り添っていくことが大切だと思います。

少しでも参考になれば幸いです。

最後までご拝読ありがとうございました。

参考文献

・「高機能自閉症とアスペルガー症候群」エール発達障害者支援センター(鳥取県)https://www.pref.tottori.lg.jp

・「選択的注意」心理学用語集・サイコタム(2011)
https://psychoterm.jp

・岡田尊司(2013)「アスペルガー症候群」幻冬舎

・笹森理絵(2013)「育つ力と育てる力 私と三人息子は発達障害です。何か?」

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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