自閉症ダンサー 光陽師 想真さん、「地球全体のこころを豊かに」表現し続ける

発達障害 エンタメ

©︎Izima Kaoru

ダンスを始めたきっかけ

──ダンスを始めたきっかけについて教えてください。

「小さい頃、世界各地の争いの写真などを見て『世界中の病気をなくしたい』と思いました。その頃は、発語も無く、学校も行けず、ひきこもり生活だったので、単純に地球での使命を感じただけで終わりました。ダンスはやっていなかったのですが、身体を動かすことは好きでした。実際にダンスを始めようと思ったのは、舞台を観て『やってみたいな』と思ったからです。障害者でも参加できるクラスを探し、通うようになりました。それから引きこもりもかなり減りました。2012年からなので、活動歴は8年半くらいです」

──障害者クラスを探したということは、手帳は交付されていたのですか。

「『自閉症スペクトラム』で障害者手帳を持って生活しています。神経科への通院も続けています」


©︎Izima Kaoru

気ままな通院

──通院は周囲の勧めですか。それともご自分の意志ですか。

「通うのが当然というか、ルーティン化しています。ずっとそうしてきているから。ただ、本当は2週間に1回行かなければならないのですが、僕は好きな時に通院しています。薬は処方されていますが、ダンスに集中出来なくなるので、今はほぼ服薬しなくなりました」

──服薬のメリットは感じていましたか。

「安心感です。でも、ダンスのために薬を控えたことで周囲に迷惑をかけることも増えた気がします。迷惑をかけたりパニックになり『ごめんなさい』と謝ることを繰り返しています。許してくださったり、僕を迷惑と感じなかったりしてくださる方が周りにいてくれて感謝です」

──自傷行為は薬を止める前と後で変化はありましたか。

「薬を飲まなくなってからのほうが、リストカットが減りました。今ではもうしていません。それは、リストカットする行為より、表現としてボディメイクしたほうが良いことに気づいたからです。マジックで身体中を塗りたぐってみたらパニックが落ち着いたのがきっかけでした。僕にはこれが合っているようです」


©︎Izima Kaoru

ありのままで感覚過敏と向き合う

──感覚過敏についてお聞かせください。

「ほぼ全て過敏です。音も光も触覚も。例えば音は、音量調節がうまくできず近くの音も遠くの音もすべて響いています。聞こえすぎると脳が自然とシャットアウトして、逆に全部聞こえなくなることもあります。そんな時は自分の声もうまく聴こえていないので、つい大声を張り上げてしまうこともあります。舞台では音を聴きとれるように、音響スタッフさんにボリューム大きめにいつもお願いしています。ノイズキャンセラーやイヤーマフは使っていません。触覚過敏の問題もありますが、どちらかというと物に頼るより、そのままの僕でなんとかできないか考えるのが好きです」

「感覚過敏がありますが、僕はどこへでも行きます。普段は光が眩しいのですが、えんとつ町のプペル 光る絵本展に行き、とても楽しく過ごせました。電車もパニックにはなりますが乗ります、飛行機も。過敏があるから無理だね、と配慮され過ぎてトライできないことがあると僕は寂しいですね。日によって変化したり一緒にいる人によっても感覚は変化するので、『今日はなんか無理だ』『今は大丈夫!』などと言える環境が創れたら嬉しいです」

助けられてばかりではなく、自力でも生きられるようになりたい

──嬉しかった出会いなどを

「去年4月にニューヨーク在住のミュージカル俳優さんとオンラインで出会い、この1年間オンラインレッスンを受け続けています。先生や仲間、その周りの方々、みんな優しく温かいので、いつも助けられています。僕の障害もすんなり受け入れてくれました。このコロナ期に孤立した僕が今こうして立てるのは、この皆さんのおかげです。地球上、離れていてもしっかり繋がることができることを実感しました」

──最後に、生活に困りごとを感じている人へメッセージをどうぞ

「僕は昔から石や木や風や雨など自然との対話をしていました。ネットに引きこもりの時期もありました。ダンスを始めてから社会と繋がって対話できるようになり『助けてくれる人がいっぱいいる』と実感しました。今、いろんな配慮があります。もしずっと助けられ続けていたら、今こうして自力で外を歩けなかったかもしれないと思うことがあります。なんとか色々と生きていく術を考えることができた環境に感謝しています。


想真フォトポエムBook「真呼吸」より

愛に溢れた方

想真さんとお話して思ったことは、愛に溢れた方だなぁと。たくさんの方に愛されて、その愛をお返ししたり広げるためにダンサーとして活動されています。自分の話が人のためになるのなら話す。地球のすべての人がHappyになるために踊る。苦手な環境や、自分の特性も「それが自分」だから頑張ってこられました。ダメな時はダメだと言って助けてもらう事もある。言いやすい環境や人、地球全体がそうなら生きやすくなりますね。ダンスの技術で競う事には興味がない。自分のためにする事には興味がない。自分のhappyは、みんながhappyになること。本当に素敵な考え方ですね。ダンスもとても素敵なので、ぜひご覧ください。狐舞のパフォーマンスは、幻想的な世界を圧巻のパフォーマンスで表現されているのでお薦めです。

光陽師 想真(こうようし そうしん)
公式サイト https://soushin.themedia.jp/

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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自閉症スペクトラム障害(ASD)

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