大震災と障害者〜熊本、福島・東北、阪神淡路の現在
イベント9月25日、大阪府堺市の国際障害者交流センター「ビッグ・アイ」にてシンポジウムが開催されました。
被災地からの報告とこれからを語り合う会として、9月25日、堺市の国際障害者交流センター、通称「ビッグ・アイ」にて、シンポジウムが開催されました。
約560人が集い、3つの大震災がもたらした災害を通して見えてきた課題や、常日頃から行っておくべき予防策などを、検証して考えていく機会にしていきたいとして行われました。
まず、被災地障害者センターくまもと事務局長、東俊裕さんから熊本大震災についてのお話がありました。
今回の熊本地震でも多くの障害者の方が避難所を利用できず、阪神大震災や東日本大震災などの教訓が生かされていないということです。避難所に段差があったり、車いす用のトイレがなかったり、発達障害や精神障害に理解がないことなどにより多くの障害者が避難所を利用できなかったのです。
また、熊本市の障害者手帳所持者は、4万2千人。そのうち9千人の方は、重度の障害をお持ちなのですが、福祉サービスを受けていないという実情がありました。そのため、安否確認は非常に困難だったようです。
東さんは被災地障害者センターを立ち上げ、独自にSOSのチラシを配布することから活動を始めました。しかし、全ての障害者の手元に届くはずはありませんし、行政の安否確認も不十分だったので、熊本市と交渉してSOSチラシを郵送して貰いました。多い時で1日70件の電話があり、これまでおよそ400人の障害者の方からSOSに対し、全国から駆け付けた延べ約2~3千人のボランティアで支援にあたりました。
課題として、避難所における合理的配慮がなされて事なかったことや現在は特に仮設住宅を障害者が利用できないことがありますが、その前提として従来の福祉の貧しさがあることです。情報開示に基づく安否確認も不十分で、平時での法を緊急時にはどう扱うのかといった事も問われると思います。
被災時という緊急状態の中、精神障害の方々を支援するに当たっての課題もまた、浮き彫りになったとのことです。精神障害の方の場合は、じっくりと話を聞く所から支援が始まります。何に困っておられるのか、どういった所を不安に感じておられるのか、1人1人に向き合い、ヒアリングする時間が非常に大切だとのことでした。
人とのつながりをなくすと、精神障害の方は、とてつもない不安に襲われます。緊急時の一時的な支援で終わらせるのではなく、継続的に支援を続けることが大切だという事です。
続いて、熊本学園大学社会福祉学部教授の花田昌宣さんからお話がありました。
熊本学園大学には、多数の被災者の方が、避難されて来ました。震災初日の14日夜は約30名程でしたが、16日のM7.3の地震の後は、約750人の方が避難されてきたようです。
その中には、障害者の方もいらっしゃったのですが、障害者の方も、それまで施設に入っていたわけではなく、地域の中で普通に暮らされていた方々が、今回避難しに来られたのだということ。福祉避難所に移ってもらうという考えはなく、地域の避難所として大学で受け容れようと考えられたそうです。
「福祉避難所」という発想ではなく、障害者のあるなしに関係なく、誰もが同じように避難できる場所にしたいという思いで取り組まれてこられました。
その後のシンポジウムでは、福島、熊本、阪神淡路それぞれの被災した当事者より被災地の現状が伝えられました。
くまもと障害者労働センターのスタッフである松尾芳美さんは、「震災で同センターのORANGE CAFE(オレンジカフェ)の運営が大変な状況にあるが、がんばって利用者の支援を継続していきたい。商品を注文いただき、みなさんの協力をいただきたい。」と話されていました。
自立生活センター神戸 Beすけっとのスタッフの井奥裕之さんは、自身も障害を抱え、21年前の阪神淡路大震災に被災されました。被災体験を生かし、当事者団体同士が結束して「ハートでアートこうべ」などのイベントを企画して熊本地震で被災した障害者を支援しています。井奥さんは「障害者にとって、未だに地域の商店街は、歩きにくいし、車いすトイレが少ない。若い障害者が自分のまちづくりを考えて、社会参加していってほしい。」と語っていました。
NPO法人ケア・ステーションゆうとぴあ理事長の鈴木絹江さんは、「福島県内では、未だに標準の20倍以上の放射能の危険にさらされたままである。その中で、甲状腺がんの疑いがある子どもが173人以上にのぼり、若い人が他県に避難し、高齢者と障害者ばかりが残され、福祉サービスが成り立たなくなっている。この状況を改善していき、要援護者が尊厳を持ち続けて生活できるよう活動を続けていきたい。」と訴えられました。
今回の熊本地震の現状報告&シンポジウムでは、全国各地の当事者団体や福祉関係者が参加して交流が深められました。阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震での体験で感じ得た教訓をこれからもしっかり受け継いで、障害者が安全で安心して震災に備えられる社会の実現が求められています。