映画「37セカンズ」HIKARI監督、佳山明さん、大東駿介さんへインタビュー

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映画のあらすじ

主人公の貴田夢馬(ユマ)は脳性麻痺で車いす生活をしている、23歳の漫画家志望です。しかし、今は友人のゴーストライターをしており、自分の作品を世に出せないでいます。また、一緒に暮らしている母親からは、過保護なまでの束縛を受けています。ある日夢馬は、母親から自立したいという気持ちと、自分の作品を世に出したい気持ちから、アダルト雑誌に自分の原稿を持ち込みます。しかし「いい作品だけども、作者に経験がないせいでリアリティがない」と言われてしまいます。漫画を完成させようと努力を重ねるユマは歓楽街で、障害者を中心にサービスを提供する舞という女性に出会います。彼女との出会いがやがて、夢馬の人生を大きく変えていくことになります。

主人公を演じるのは、脳性麻痺の一般女性

主人公である夢馬(ユマ)を演じるのは佳山明(カヤマメイ)さん。一般応募のオーディションで選ばれた彼女は、生まれつき脳性麻痺を患っています。彼女の視線や声のトーンを活かした演技は初演技とは思えないほどです。

映画『37セカンズ』HIKARI監督、佳山明さん、大東駿介さんへのインタビュー

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──ヒロイン役の佳山さんはどういった印象でしたか?

HIKARI監督「社会に出て一年目の初々しさ、彼女のピュアさが好印象でした。後は、演技をしようというのではなくて、目の前の事を反射的に答える姿勢が凄く良かった」

大東駿介「よく『主人公の活き活きとした姿に心動かされた』という感想を貰います。メイちゃん(佳山さん)の、カメラの前で『この瞬間を全力で生きる』姿勢が、ユマの活き活きとした姿に繋がっていったと思います。僕もその姿勢にすごく学ぶところがありました」

──演じてみて共感したことや、演じにくかったことはありますか。

佳山明「共感したのは主人公も障害当事者なのでそこからくる思いなどです。撮影では初めてのことが多くて、演じること自体が難しかったです」

──障害者の当事者で描かれている映画は珍しいと思います。実際に当事者が演じるのではなく、役者さんが演じることが多く、俗にいう「感動物」ばかりという話もあります。そのあたり何か意識されてますか?

HIKARI監督「かわいいアイドルが車いすにぎこちなく乗って演じていても、全然リアル感が無いじゃないですか?残念ながらヒットだけを考えて作られる映画はまだまだあって、特に「感動物」と言われる作品は、制作側が「これなら感動するだろう」という予測で作られていて、そこにリアルさは追求されません。私が作りたかった映画は、普段ある事をそのまま描写した映画。嘘はつきたくなかった。そしてスタッフ全員が私の熱意を受け取ってくれたので、この映画が出来上がりました」

──メイさんに聞きたいのですが、今後も女優業を続けたいと思いますか?

佳山明「今は、たくさんの人に映画を見て頂いてありがたいという想いです。今回の映画を通して、表現することの面白さを皆さんに教えていただいたので、もし機会をいただけたらありがたいなというのが今の思いです」

──大東さんは、実際に役を演じられて障害に対しての見方は変わられましたか?

大東駿介「凄く変わりましたね。実家の横が障害者センターだったので、子どもの時から接する機会が多く、偏見とか無かったのですけれど、大人になって常識というものが段々重なっていくもので、障害に偏見や差別意識が無いつもりでも、ハッと出会った時にどう接してしていいか分からなくなることがあり、そんな自分にショックを受けました。でもやはり、顔を見て触れ合って分かり合えばそんな考えはすぐになくなって。「知らない」ということが物事や考えを複雑にしているんだなと感じました」

HIKARI監督「我慢せずに、隠さずに、言いたい事を発すればいいと思います。「我慢強い」という言葉が美徳とされる日本ですが、それではみんな病気になってしまいます。これは障害者健常者関係なく、自分の意思をしっかり発言する事ができれば、互いに理解しあえる平和な社会が築き上げれると私は信じています」

──お互いが遠慮してしまうのですね。当事者が本音をぶつけ合えるのがいいと思います。

HIKARI監督「「言霊」という言葉があるように私達の言葉は魂を持っています。そしてその言葉は『波動』となって人々に伝わります。思いも同じです。だから「こうなりたい」という気持ちを常に抱き、それを言葉で発し行動する。失敗してもいい。その先には学ぶ事がたくさんあるから。そして自分が幸せになると、きっと周りも幸せになります」

──メイさんが映画では、素の気持ちで演技したのか、『演じた』のかどっちでしたか。

佳山明「私はどちらもあると思います」

HIKARI監督「両方だと思います。私がもともとメイさんに惹かれた理由は「演技が演技と感じない」ところ。反射的に相手に対して反応するところがとても自然でした。そしてこれは私が常に役者に求める「演技法」であって、今回私たちがマッチした理由なんだと思います」

佳山明「時間もそうですけど、皆さんに色々助けて頂いてという感じですかね」

映画情報

映画『37セカンズ』
2020年2月7日、新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
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http://37seconds.jp

障害者ドットコムニュース編集部

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