「心の病」を持つ患者と家族の関係のあり方
暮らし支える側の重要性
うつ病を筆頭に精神障害の内容は多岐に渡っています。筆者も約10年に渡って闘病していますが、そんな中で欠かせなかったのは周囲の支援です。中でも、最も近しい場所にいて、最も筆者の心の病に影響を受けた「家族」について記させていただきます。
家族をはじめとした近しい方々でも、心に傷を持っている方に寄り添うのは非常に難しい事です。近づきすぎると「鬱陶しい」と追いやられ、遠すぎると「なんで親身になってくれないの?」と寂しがられてしまった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
筆者もそういった事を「してきた」経験があります。そして、結果的に筆者も、筆者の家族も苦しみました。ですが、心に病を持つ方に、家族など周囲のサポートは必須です。
では、どのようにして家族はサポートをしていけば良いのでしょうか?
「付かず・離れず」の距離感
心の病を持つ方には、「調子のいい時」と「調子の悪い時」があります。「調子のいい時」は何事もポジティブに考えることができ、問題はあまりありません。
問題は、「調子の悪い時」です。こういう時は、何をやっても裏目に出てしまい、結果的に患者自身も、家族など周囲の方も傷つく事になってしまうことが往々にしてあります。
ですが、サポートを一番必要としている時は、この「調子の悪い時」なのです。
そういった時は、どうすればいいのでしょうか?
具体的な行動は?
・言動をよく観察する
今、患者の方が何を求めているのか、注意深く観察する必要があります。「調子が悪い時」であっても、むやみに離れるばかりではなく、何が原因で調子が悪くなっているのか、直近の言動を考えてみる必要があります。
・むやみに同調は「しない」
ついやってしまいがちになるかもしれませんが、「そうだね、そうだね」と同意ばかりしてしまう事はありませんか?筆者もそれで気が楽になる事は、確かにありました。ですが、「事情も分からないのに頷くな!」と反発心を覚えて、怒鳴ってしまった事もありました。しっかりと観察をした上で、冷たいかもしれませんが、あえて距離を取る必要も場合によってあります。
・患者の方が思っていることを吐き出しやすい環境を作る
患者の方の行動を観察しているだけでは、その心情を察することはできません。患者の方はそれぞれ「想い」を抱いていると思います。その「想い」を吐き出す窓口に進んでなってあげてください。少しずつ吐き出すことで、患者の方も、周囲の方も、相互に理解ができていくと思います。
快方への道筋を「一緒に」作ろう!
筆者は、母に「まるで5歳児がまたできてしまったようだ」と言われたことがあります。当時は30歳になるかという筆者に5歳児とはひどいなと思ったりもしましたが、今では本当に的を射た言葉だったなと思います。
心をコントロールできなくなるのが、心の病です。幼児も情動の赴くままに、行動します。そういう意味では、あながち間違ってはいないのではないかと筆者は思います。
どちらにせよ、事実から目を離さず、じっくりと何を考えているのか観察をし、適切な方向に進めるよう付き添ってあげなければならないと思います。「過保護」になりすぎても駄目ですし、「無視」することは論外です。
適性な距離を保って、「付かず・離れず」の距離を取り、互いに傷つけあわない環境を、患者の方も、その周囲の方も、意識して作り上げていくことが、快方に向かう道筋だと考えます。