IT技術者の私がうつ病になり回復するまで

うつ病

出典:Photo by Parker Byrd on Unsplash

「私は他人に対して私が出来ないこと、やりたくないことは求めない」ことと「不満を口に出さずに貯め込む」といった気質を持っています。私がIT業界に勤め、現場であったショックな出来事、そしてうつ病になり、回復するまでの過程をご紹介します。

憧れのIT業界、理想と現実

日本のIT業界はよく「きつい、帰れない、給料が安い」新3Kといわれています。私が入社した会社は顧客が要望するシステムを開発するメーカーでした。転勤なし、残業なしといった内容で求人していたため入社を希望したのです。しかし、待っていたのはやはり新3Kの現場でした。

まずは常態化した残業です。常に短納期の厄介な案件を複数抱えており、終日までの残業をいくら続けても終わらないといった状況でした。私も入社後2週間でこの業務体系に組み込まれ、週末の土曜日になるとフラフラになりながら帰っていました。

2つ目の問題は、残業は裁量労働として扱われ定額で賃金が支払われていたのです。毎日終日まで残業をして、貰える賃金が2万円程度になります。管理職の社員にいたっては残業代も支給されなかったそうです。

こうした事情から社内では、毎年人ががらっと変わり中堅社員が育たず、自社製品の使い方、開発の仕方がわからないといったことが頻発してました。そしてこの環境に耐えられず誰かが辞めていく時には「あの人は使えない人だから辞めた」と陰口が横行していたのも私の心を挫かせる原因でした。私は使えない人と烙印を押されて辞めるのは嫌だと思い仕事を続けてしまったのです。

上司と部下・派遣社員との板挟み

このような現場で仕事を続けて数年、いつの間にか中堅社員となっていました。当時、人員が育たないからとにかく人を増やそうという動きがあり、PCに触ったことがない新卒学生や開発経験があまりない方までも採用し始めました。その結果、本来の業務に加え、新人たちに書類の作り方から開発の仕方まで指導が必要になったのです。

私は他人を指導するのが苦手です。これは私の癖になるのですが人に物を教える際、丁寧に伝えすぎることがあります。他人に対して私ができないこと、やりたくないことは求めないといった気質があるからです。担当する仕事を進めて指導もしなければならないといった状態は、まさにタスクオーバーでした。指導に時間を費やして私の仕事が進まない件を、上司から毎日のようにお叱りを受けていました。

そして半年ほど同じことを繰り返したため、私の癖が治らないことに業を煮やした上司は、ある日から私がいかに仕事ができないかを会議や打ち合わせの場所で責めるようになりました。それまで上司を信頼し、毎日多くの業務を残ってでもこなし、部下には丁寧に仕事を教えていましたが、私の精神は限界でした。

ついに拒食症、睡眠障害、倦怠感、片頭痛、吐き気といった症状が出始めたため、心療内科の診断を受けたところ、神経症と診断されました。そして会社に診断結果を伝えたときは自己退職をうながされました。

私の中でも「これ以上、この会社と信頼関係を築くのは無理だ」と感じ退職しました。

退職後の生活

退職後に精神的に落ち込んだ私は医師のすすめもあり、とにかく1年間自由に生活することにしました。しかし今考えると、これは大きな失敗だったと思っています。生活が不安定になり、不健康になっただけだからです。例えば、自由にやりたいことをやってみましたが、何においても将来への不安を感じて楽しめなかったり、好きな時間に起床と就寝したことで、昼夜逆転生活をおくるようになったり、食生活が乱れて肥満・高血圧になったりと、自由に生活した結果として良いことはなかったです。

そして退職から1年半が経ち、お金も尽きてきた私は職業安定所に行くことにしました。受付で前職の職務内容や希望する職種を聞かれて何とも言えない気分になりました。IT業界は嫌だという気持ちと、自分に合った仕事が分からなかったためです。職業安定所は私のことは教えてくれません。

そこからさらに半年後、職業安定所をとおして就労移行支援事業所を知りました。

安定した生活を送るまで

私は今、就労移行支援事業所に通っています。精神的な疾病がある方や就職活動に不安を感じている人の社会復帰に向けた支援活動をしている一般社団法人です。私の通っている事業所では物事についての考え方・とらえ方を中心に学習することができます。ここに通うことを決めたのは通う日程、学習内容、考え方を自由に選択できるためです。行動を強制されることはありません。そして支援員さんを通してコミュニケーションについて学ぶことができ、利用者全員が自発的に動かれています。私は今、週5日、1日4時間のペースで通っており、社会復帰に向けて自分のペースで活動しています。

私のように精神的に不安があり迷っている方へ、回復するのに自由に過ごすというのもひとつの手段です。しかし私は他人と関わって別の価値観や知識、考え方を吸収しながらコミュニケーションをする方が経験がえられ、社会復帰が早まると思います。ほんの少しだけ前を向いて歩いてみませんか。

ケロッピィ

ケロッピィ

IT業界に新卒で入り、ITエンジニアの待遇と厳しさを知り挫折。
日々、上司と新人・派遣の間に挟まりストレスから神経症(不眠症、片頭痛、嘔吐症)を発症しました。
今は就労移行支援事業所に通う事で生活が安定したため就職活動中。
第二の人生に向けて歩み始めたところです。

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