引きこもりが就職をめざす物語 第8話(終)~企業実習に行ってきた
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就労移行支援の中で出来る訓練には限度があります。企業で実際に業務を経験してみないと得られないものもまたあります。
無情な実習事情
企業での体験実習があることは早い段階で知っていました。そのときの印象は一にも二にも
無給労働…ジャン・バルジャンですか
これに尽きます。就労移行支援を利用している間は労働収入がないので、経済的な困難を抱えている場合が少なくないのです。私もその点では事情を同じくする1人です。交通費出ませんか。せめて昼食代くらい…。無情です。少なくとも実習に行くまでは、そのような疑問も持っていました。毎日の通所のための交通費捻出さえ難しい状態だったのです。
ファースト実習
私は就労移行支援では、用意されたプログラムはとりあえずやってみるという方針で臨んでいます。「チャレンジしなくちゃ」(『ファースト・デート』)ということです。そのため疑問はありつつも実習に行ってみました。実習先等の情報はあえて伏せます。
1件目の実習先は未経験の業種ですこぶる刺激的でした。見聞が広がるから実習も良いなあと暢気に実習日程をこなしていたのですが
実習終了後にダメ出しの山
が待っていました。報連相が出来ていない等、基本的な部分についてです。誰とも会話しないので、会話のタイミング等に関する約束ごとが出来ていない、ということは引きこもりあるあるです。厄介なのは、当人にその自覚が薄いことなのです。
自分の都合ではなく、相手の心地良さで
2件目も事務系ではあるものの経験のない業種・職種です。2件目では無理を言って、途中でダメ出しをいただけるようにお願いしました。初回の実習ではフィードバックが実習終了後だったので、途中で対応が出来ず、歯がゆい思いをした経験からです。
コミュニケーションを密に取りたい人、逐一来られるのはわずらわしく感じる人などがいます。形式も、口頭を望む人、紙でのやりとりを選ぶ人もいます。私はこれまで、自分の都合で発信する傾向があって、どのようにすれば相手が心地良いかという発想に乏しかったのです。『エリザベート』で「話す相手 私が選ぶ」「誰にも束縛されず 自由に生きるの」と歌う場面があります。しかしこれを歌うエリザベートは皇妃であって企業人ではないのです。
まとめ
実習は賃金もらえないの?と思っていましたが、それは大きな心得違いで、考え方の転換がありました。授業料を払ってでも実習に行くべきです。多少の自弁費用があったとしても、実習はとても貴重でぜいたくな時間だと心から思います。
今回の物語は、ひとまずここまでとなります。今後もまた苦しい関門が待っていると思いますが、今はそれが楽しみでさえあります。最後にお送りするのは『ミス・サイゴン』から本歌取りした一節です。
就職したけりゃ 報連相をマスターしろ