やられたら、やられっぱなしではない!~「半沢直樹」の同期・近藤について
エンタメ2013年夏、最高視聴率42.2%(関東地区 ビデオリサーチ調べ)を叩き出し、劇中で使われていたセリフ「倍返し」がその年の流行語大賞にもなったドラマ「半沢直樹」。私はドラマでしか見ておりませんが、その中身は、これまで見てきた中で最もインパクトがあり共感する箇所が多いドラマでした。5年たった今でも、自宅でDVD鑑賞をするほど大好きなドラマです。
その中で、半沢直樹の同期の「近藤直弼」という人物が登場します。近藤はドラマの第1話で描かれているように、いわゆる「上司からのパワハラ」が原因で精神疾患(統合失調症)を患い、現場の第一線から身を引くことになり、一度は銀行を追い出されて出向となるも、銀行上層部の弱みを握りつぶされることと引き換えに銀行の広報部に戻ってきたという人物です。
そうなんです。この方も我々と同じ「精神障害者」なのです。その生き様から見えてきた私の思い、又周りを取り巻く環境から見えてくる現代社会の問題について、私見を交えながらお話したいと思います。
近藤のプロフィール
近藤は、半沢らを差し置いて、同期のなかで最も早く課長に昇進した、いわゆる「銀行内でのエリート」でした。しかし当時勤めていた支店の支店長から、きついノルマを課されていたり、部下のいる前で毎日のように罵声を浴びせられたりされ、徐々に精神的に追い詰められていきました。そして統合失調症を患い、休職期間を経て、現場の第一線から退くことになりました。その後システム関係の部署に配属となりましたが、最終的に出向が決まり、出向先がどこになるか怯えながら日々を過ごしていました。この時近藤は既に関西に一戸建てを構え、妻と小学生になる息子の3人で暮らしていましたが、その一戸建てを売り払い、家族全員で東京に引っ越しました。(第1話、第2話より)
その後「タミヤ電機」という会社の経理部長として出向させられたものの、職場の人間からは「元銀行さん」と馬鹿にされながら実務に殆ど携わることができず、元々いた銀行からのお金を融資してもらう為だけに来てもらったと言われる程でした。しかしその銀行からも担当課長(代理)からの「いじめ」に遭い、近藤の症状の1つである「数字を見て現実逃避をする」という症状が出るまで精神的に追い詰められました。(第6話より)
その後半沢ら同期に支えられ、時には協力しながら、タミヤ電機での業務を全うし、東京中央銀行とタミヤ電機の「黒い関係」を正常化させる為に尽力しました。最終的に「黒い関係」の真実を突き止めたものの、その当事者であった常務から、その情報を公にしない代わりに銀行に戻すと言われ、家庭環境を最優先に考えた結果その交換条件を了承し、銀行員として復活を果たすのです。(第7話~10話より)
近藤の家族
近藤が精神疾患を患っても、家族は決して近藤の事を見放すことはしませんでした。近藤自身、統合失調症になった後も、配置転換、自宅売却、転居、出向、執拗な嫌がらせなど精神的に追い詰めていき、家族にとっても負担が大きくのしかかったと思います。その為妻には離婚という選択肢もあったはずですが、それを考えないどころか夫を献身的に支えました。
これこそが家族の在り方だと思いました。精神障害を抱える者にとっては、家族のサポートは何よりもありがたいものです。私自身も、これまでの家族の支えに感謝していますし、今後誰かが体調を崩したら、私の体調にもよりますが、支える側に回りたいと思います。
近藤を取り巻く社会環境
一方で、近藤をここまで陥れた人間、あるいは陥れた後も弄んだ人間がドラマでは多く描かれていました。これはドラマだから現実に起こっているかどうかは分からないですが、もしこれが現実として起こっていたら皆さんはどう思いますか?
非常に大きな問題ではありませんか?
ある特定の人間の私利私欲によって、いち人材の将来を握りつぶし、その握りつぶした人間が平然と会社で残り仕事を続ける・・・最悪です。
しかも統合失調症と分かっていながらさらに弄ぶ行為は、
です。絶対にあってはならない行為です。
今、「働き方改革」というスローガンのもと、パワハラの防止や長時間残業の是正などを行い働きやすい環境づくりに努力されていると思いますが、
この問題について、自分や自分の会社のことに置き換え、真剣に考えてみていただきたいと思います。
まとめ
私がうつになる前は、いち銀行員が上司に立ち向かっていくという勇敢な物語としか捉えていませんでした。しかし今もう一度見返すと、精神疾患の患者という立場から物事を捉え、今の社会の問題点が見えてきたように思えます。
私はこの記事を、非常に強い思いで、時には目頭を熱くしながら作成しました。
「半沢直樹」という作品をご存知の方も、そうでなく初めて見てみたいと思われる方も、一度この視点に立ってご覧頂ければ幸いです。
参考文献
半沢直樹
http://www.tbs.co.jp/hanzawa_naoki/
障害者ドットコム「障害者虐待をなくそう!あなたは虐待で苦しんでいませんか?悩まずにすぐ相談を」
https://shohgaisha.com