コロナ禍でさららに深刻化する「アルコール依存症」~誰もなりえる「病気」と回復への道のり

依存症

出典:Photo by Erik Mclean on Unsplash

スーパーの飲料コーナーでは、清涼飲料水よりも大きく幅をとって売り出している「アルコール飲料」が目に入ります。しばらく私はそこを避けて通るようにしていました。私は断酒して10年目に入ります。

昨日もコンビニで若い方が昼から、ジュースを買うようにアルコールのロング缶を手に取るのをふと見てしまいました。それくらいにカジュアルに飲める自由があるということは、かなり危険なことだとお伝えしたいと思い筆をとりました。

アルコールの「適量」とは

酒造メーカーが推奨するアルコールの1日の適量は、グラム換算で純アルコール20グラムと表記してあり、具体的には、ビールなら500ミリリットル(大ビン1本)、7%度数の缶酎ハイ1本、日本酒1合、焼酎なら100ミリリットル、ワインなら200ミリリットル、ウイスキーなら60ミリリットルと書いてあります。適量を守っていさえすれば大丈夫なんていうのは、罠です。

現代は多種多様のオシャレなパッケージの缶チューハイが売られています。9%もあれば、0.5%の「微アル」というものまで多種発売されていて、メーカーは手を変え品を変え提供しています。テレビの宣伝もすさまじいものがあります。20時を過ぎたあたりで、「あー!うまい!」とアルコールのCMが垂れ流しにされています。お酒を飲むことを推奨する番組も多いです。

私には高校生の子どもがいます。一緒にテレビを見ていると「お酒ってそんなにおいしいの?」「いいなあお酒って、かっこいい」と言います。私がアルコール依存症であることは子どもは知っています。

しかし、好奇心旺盛な年ごろです。私も子どもの時から大人たちがお酒を飲む姿を見てきたので、違和感なく、それこそ時代でしたから「飲めない」ということは、大人になれないという思い込みも刷り込まれていたように思います。飲んで吐いて強くなる。そう思い込んでいました。子どもには、私のような苦しみを引き継がせてはいけないと強く決心していて、断酒を継続しています。しかしながらお酒を飲むことを「ダメ、絶対」とはいいません。

自分の意思だけではどうにもならない「病気」

適量を守って調整して飲めているのなら問題ないと思われます。しかしながら、アルコールの怖いところをは、適量を守れないところです。コントロールができなくなってしまう「病気」になるからです。

昔から言われる「一軒のつもりが二軒、三軒」とかのように飲みだしたら止まらないのがアルコールの罠です。フワフワと幸せな気持ちで酔えるのは、ほんの数時間程度のことで「ここまで」となかなかやめられないものだと私は体験してきました。

「酔いが覚めたら丸裸になったような感覚に陥り、また飲むの繰り返し」が依存症への入り口です。酔わなければ自分が保てない感覚になりました。そしてそこから抜け出すことはとても困難なことなのです。飲んで酔っている本人は気づきません。そしてその家族や周りの大切な人を傷つけ、自身までも大病や命を落としかねません。

完治はないが、回復できる「病気」

厚生労働省のホームページには「日本では、アルコール依存症:約10万人、薬物依存症:約1万人、ギャンブル等依存症:約3,000人が病院で治療を受けています」と書かれていますが、適切な治療に受けている方は氷山の一角です。

私は幸いながらすぐに専門医につないでもらいました。しかし自分で自分を「アルコール依存症」と認めるには時間がかかりました。怖いことなのです。勧められた自助グループ(AA、断酒会)にも抵抗がありました。

でもどうしようもないのです。抗酒剤などを処方されても効果はありませんでした。泣きながら自助グループに通い続けることが、回復の道になってきたと今になって思えてきています。それには、私の場合10年かかりました。長く苦しい道のりでした。まだ回復途中です。

どこにでも安価で売られているお酒に手を出すことはあまりにも簡単で、簡単だからこそ「なぜ、私は酔いが必要だったのだろう」と自問自答したり、相談したり、自分の心の声を言語化することが、これほど重要なことだとは思いませんでした。

飲むスタイルが変わったコロナ禍

コロナ禍で自粛をする飲食店の話題がニュースに真っ先に出た2021年。外でお酒を楽しく飲めないこと、早く外で大いに飲みたいとをアナウンスする声に私は疑問を持ちました。そして怖いなとも思っています。店で飲めないのならコンビニで買って飲むといった「路上飲み」というワードも頻繁に出てきました。オンラインで飲み会がおこなわれ、人は「閉店」を忘れ、家で何時でもどこでも安く手っ取り早く期限なく飲めるようになりました。ひとりなら誰も止める人はいません。

スーパーでよく見かける酒類の「箱買い」も、家に常備しておかないといけないアルコール類を見て、子どもたちはどう思うのかをイメージするには簡単です。私の子どもが言う「みんな、友だちの家には当たり前にある」という環境は本当によいことなのでしょうか。

まとめ

私はアルコール依存症です。これからもアルコール依存症です。だからとても気をつけています。しかし、家にお酒を置かない我が家の当たり前が、世間ではもはや普通ではないということに驚いています。

心の穴を埋めてくれる「酔い」は、必ず覚めます。孤独におちいりやすくなる現状に、ストロング系缶チューハイの飲みやすさは、誰しもアルコール依存症になりえるのです。「あなた、飲みすぎよ」だけでは済まされない悲劇を、もうこれ以上生み出さないために。

参考文献

【厚生労働省ホームページ~知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス】
https://www.mhlw.go.jp/

リンリン

リンリン

アルコール依存症と複雑性PTSD。断酒して10年目です。
まだまだ回復途中。本と映画とラジオとテレビが大好き。
自分軸で生きていこうと日々奮闘、模索中です。

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