衝撃や振動による脳への障害、高次脳機能障害とPTSDの関連性~軽度外傷性脳損傷という病気をご存知ですか?①

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「軽度外傷性脳損傷」という傷病名をご存知でしょうか?あまり日本では知られていない傷病名ですが、後々、高次脳機能障害やPTSDの原因となる可能性があるということが分かってきました。日本の場合、地震などの自然災害が多いため、誰もがPTSDになる可能性があります。簡単ながら紹介させて頂きます。

高次脳機能障害とは?

ケガや病気により、脳に損傷を負う事で記憶障害、注意障害、遂行機能障害が出ることがあります。これらの症状により、日常の生活、社会生活に支障のある状態、これが「高次脳機能障害」です。障害者手帳の区分は、身体障害ではなく精神障害に分類されます。

高次脳機能障害になる原因は交通事故のほか、滑落事故、暴力、乳児の揺さぶり、スポーツによる怪我、爆発などによる爆風被害など、多岐にわたります。最近の研究で物理的な衝撃ではなく、目に見えない衝撃波が高次脳機能障害とPTSDに影響を及ぼしている可能性が指摘されています。

あまり日本では知られていない軽度外傷性脳損傷

高次脳機能障害とまで重症と判断されなくても、軽度外傷性脳損傷になっているケースもあります。いくつかのケースを挙げます。

アメリカの疾病対策センター(CDC)の連邦議会への報告のなかで「アメリカの人口の約2%が軽度外傷性脳損傷である」としています。アメリカでの研究によると、野球選手の頭部へのデッドボール、アイスホッケー選手やアメリカンフットボール選手の試合中での衝突が、軽度外傷性脳損傷を引き起こしていることがわかりました。

日本では知られていませんが、軽度外傷性脳損傷(Mild Trau-matic Brain Injury=MTBI)はありふれた病気です。日本にはいまだ診断基準がなく、軽度外傷性脳損傷を適切に診断できる医師も限られているのが現状です。

軽度外傷性脳損傷はどのような病気なのか?

WHO(世界保健機構)は軽度外傷性脳損傷を「物理的に外部から力が加わることで発生する急性の脳損傷」と定義しています。また「最大の要因は交通事故である」と見られています。「頭に物がぶつかる」「急に頭が動かされる、もしくは急に動きが止まる」など頭を揺さぶられると、脳の神経細胞(ニューロン)の軸索(神経細胞の情報を送り出す突起)が損傷して外傷性脳損傷(TBI)を発症することがあります。また、MRI検査で異常が見つかりにくい病気であることも、この病気の特徴です。

軽度外傷性脳損傷は、単に「むち打ち」と診断されやすいです。仮に軽度外傷性脳損傷と判明しても病名に軽度と付いているために「軽傷だ」と誤解されやすいのですが、これは診断を受けた時の「受傷時の意識障害が軽度である」という意味です。特徴的な症状は受傷後すぐには現れず、早くて数時間後、長いと数週間後に現れることがあります。そのため、診断が難しい病気でもあるのです。

また、動物実験では、脳の神経細胞(ニューロン)の軸索は(神経細胞の情報を送り出す突起)衝撃を受けた瞬間ではなく、ゆっくりと時間をかけて断裂することがわかっています。そのため、本人も気付きにくい病気なのです。日本では認知度が低いため、さまざまな症状が現れても気付かずに高次脳機能障害やPTSDに発展する可能性もあるのです。

衝撃波による脳機能障害の怖さ

一般に爆発による怪我と言われたら何が思い浮かぶでしょうか?ニュースで流れる外国での爆弾テロ、紛争地帯での爆発、工場が爆発したなどを思い浮かぶ人が多いでしょう。しかし、爆発が起きると同時に衝撃波が発生して、それが人体に重大な影響を及ぼすことが、最近の研究で徐々に分かってきたのです。衝撃波は爆発だけで起きるわけではありません。交通事故などの衝撃でも、音速(約時速0.34㎞)を超えた衝撃波が発生します。日本での高次脳機能障害は、この交通事故の衝撃により引き起こされる事例が、ほとんどです。交通事故といっても、自動車での事故に限らず、自転車で壁にぶつかる、転倒したりするなどの衝撃でも起こりえます。

衝撃波は、軽度外傷性脳損傷(MTBI)を引き起こす可能性があり、脳の機能を低下させ、認知能力や記憶能力、運動能力などに悪影響を与えることが分かってきました。また健忘症や不安障害といった心的外傷後ストレス障害(PTSD)に似た症状が現れることも判明しています。軽度外傷性脳損傷(MTBI)は外から見ても発症が分からないため、しばしば心のダメージであるPTSDと混同されることが多く、対処が遅れるケースが多発しているのです。

事故や自然災害でも起きうるPTSD

PTSDと聞くと、コラムを読んでいる方の多くは、ニュースや映画などで初めてPTSDという言葉を知ったという方も多いのではないでしょうか?アカデミー賞を受賞した「アメリカンスナイパー」のように、帰還兵のPTSDを扱った映画は多くあります。では、日本の場合はPTSDは起こりづらいのでしょうか?

冒頭のように日本は自然災害が非常に多いです。ここ最近、毎年のように自然災害が起こる日本では、PTSDに誰でもなりやすい環境とも言えます。自然災害を体験した、交通事故を目撃したなど、日常にも危険は潜んでいます。次のコラムではTBIとPTSD両方の視点から、事故や災害に遭ったときに起きる振動や衝撃波が、身体や精神にどれだけ影響があるかを紹介したいと思います。

▶次の記事:衝撃や振動による脳への障害、高次脳機能障害とPTSDの関連性~軽度外傷性脳損傷という病気をご存知ですか?②

参考文献

【PLOS ONE】
https://journals.plos.org/plosone/

【NHK健康chこれって高次脳機能障害?】
https://www.nhk.or.jp/kenko/

【国立障害者リハビリテーションセンター高次脳機能障害情報・支援センター 高次脳機能障害を理解する】
http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/

【全日本民医連 けんこう教室 軽度外傷性脳損傷 誰でも起こりうる身近な病気 MRIに現れず、症状は多岐にわたる】
https://www.min-iren.gr.jp/

【国立大学法人 東京農工大学】
https://www.tuat.ac.jp/

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tkbn

40代男性。30代半ばでうつ病を発症。40代になって発達障害の疑いありと診断される。就労支援機関で自分の特性について学び、最後の就活を終えコラムを書いています。趣味は鉱石収集。年2回大阪・京都で行わるミネラルショーや即売会に行って、気に入ったものをコレクションするのが楽しみですが、部屋で飾る場所が無くなっているのが最近の悩みです。

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