同じ行動を繰り返してしまうというこだわりは障害・病気だった~ずっと家族にも言えなかった苦悩の日々
強迫性障害あれは私が小学校3年生の時のことでした。ある日、家にある段ボールを見る時に、いつもパチパチッとまばたきを2回していたことに気づきました。最初は癖のようなものだったと思います。それが、何か動作をしようとするたびに、2回ずつするようになっていったのです。例えば、ズボンのチャックを閉める時に、1回で閉めずにもう一度開けて2回目で閉める、学校の宿題をやる時には、書いた文字を1回消してもう一度書く、とかです。そして、その回数は4回、6回、8回と2の倍数で増えていきました。
幼少期の不安と繰り返し行動
なぜ、こんなことをしていたのでしょうか。当時の私はあたたかい家族に恵まれ、悩みもなく、とても幸せでした。ずっとこの幸せな状態が続いていけばいい、と心から思っていました。しかし、そんな幸せを感じている間にも、時間は刻一刻と流れていきます。時間が経っていけば、今の幸せな状態が変わるかもしれない、しかも時間の流れていく先には、必ず訪れる死が待ち受けている、そんな不安が子どもだった私の心に中にはありました。同じ動作をするという事は、もう一度同じことをして、その動作をする前の状態に戻す、つまり自分の動作をリセットして、時間を戻そうとしていたのだと思います。2の倍数で回数が増えていったのも、このような理由からだと思います。無情にも流れていく時間を、同じ動作を繰り返すことで何とか止めようとしていたのです。この同じことを繰り返すことは、人前ではやらず、誰にも言えませんでした。家族にも言わなかったです。自分の中で恥ずかしいという気持ちがあったからです。また、これを病気だと思ったこともありませんでした。単なる癖だと思っていました。
それは障害だったのです
やがて、私のこの変な癖は、自分の意思に関係なく現れ始め、自分に命令するようになっていきます。成人になってからは、もはや動作の回数は関係なくなり、心にしこりのようなものができているという感じになりました。そのしこりを取り除くために同じ動作を繰り返すという感じです。そのため、普通の生活をしているだけでも、疲れ切ってしまうようになりました。心にしこりができないようにするため、できるだけ決まった動作だけをするようにし、行動する範囲が狭くなってきました。「強迫性障害」という言葉を知ったのは、今から10年ほど前のことです。その障害について調べていくうちに、心が楽になっていったのを覚えています。
強迫性障害