パラリンピック・陸上競技編~パラ陸上のルールは?
スポーツ 身体障害パラリンピックで最も参加人数が多い陸上競技。障害に応じて、クラス分けも細かく分類されています。パラリンピック陸上は、参加人数などに応じて実施種目は大会ごとに検討されるため、固定されていません。競技用に使用される義手、義足、車いすについての解説と種目の説明をさせて頂きます。種目は、短距離走(100メートル、200メートル、400メートル走)、中距離走(800メートル走、1500メートル走、5000メートル走)、100×400リレー、マラソン、走り幅跳び、走り高跳び、投てき種目(こん棒投げ、円盤投げ、やり投げ、砲丸投げ)があります。この記事では、トラック競技、マラソン、フィールド競技の順で紹介をさせて頂きます。
トラック競技・・・競技用義手
短距離走(100メートル走~400メートル走)では、クラウチングスタートで走ります。手が欠損している選手は、スタート時にバランスを崩し、身体が傾いてしまいまうことがあります。そのため、義手を使用が許可されています。義手を着用すると、走っている間もバランスが取ることができ、選手の能力を引き出すことができます。
トラック競技・・・競技用義足
現在では競技用の義足には、軽い素材のカーボンファイバー製を使用しており、義足の進化にこの競技のともない記録が大幅に伸びています。しかし、誰もが義足を付けたら記録が簡単に伸びるのかと言われると、違います。関節や筋肉が繋がっていない義足を使いこなすのは、膨大な練習が必要不可欠です。バネの大きな反発力を制御するためには相当な筋力が必要で、競技用義足を使いこなすのに何年もかかる選手もいます。義足に関しては、トラック、フィールド競技に関係なく幅広く使用されています。
トラック競技・・・競技用車いす
パラリンピック陸上で使用される車いすは「レーサー」と呼ばれています。このレーサーは全長180センチ、重さ10キロ前後で、通常の車いすの半分ほどの重さです。2つの大きな後輪と前に突き出た前輪があります。この前輪の中心軸がフィニッシュラインを超えるとゴールです。車いすのスピードは、最高時速約30キロメートルに達します。そのため選手は特殊な手袋をして後輪の中央の軸を叩くように回します。
トラック競技・・・視覚障害者
視覚障害の重いクラスでは、トラック競技ではガイドランナーと呼ばれる伴走者が付きます。規約で決められた全長50センチのロープや紐を輪っかのようにして、お互い握り合いゴールを目指します。日本では、このロープは「絆」の愛称で呼ばれています。
100メートル走から5000メートル走までと、マラソンの種目が、ガイドランナーを伴うことができます。特に100メートル走などスピード勝負のレースでは、併走者が選手と阿吽の呼吸でレースに臨む様子は、見どころがあります。
しかし、失格が多いのもこのクラスの特徴です。ガイドランナーが選手を引っ張ることや、ゴール前に選手よりも、先にフィニッシュラインを超えると失格です。また5000メートル以上の競技ではガイドランナーは2人まで認められており、レース中に1回だけ交代できます。
トラック競技・・・聴覚障害
トラック競技はピストルの音を合図にスタートします。しかし、聴覚障害の選手は音でスタートの合図が分かりません。そのため、スタートに合わせて光るシグナル(信号機)もあり、目で合図を確認できます。もし、フライングがあれば審判員が旗を振って選手に伝えます。
東京パラリンピックから正式種目となるユニバーサルリレー
ユニバーサルリレーとは、第1走者が視覚障害、第2走者が立位及び機能障害、第3走者が脳性まひ障害、第4走者が車いすの順番で、男女2名ずつ計4名で競うリレーです。1人当たり100メートルずつ走り、合計400メートルのタイムを競います。通常のリレーと違って、バトンを使わず相手の身体をタッチすることで、次の走者に繋げます。
男女の順番は自由なため、どの順番で誰が走るかも重要な戦略です。障害や性別を超えた多様性のある競技です。
マラソン
オリンピックのマラソンは、札幌に開催が決定されましたが、パラリンピックマラソンは、予定通り東京で開催されます。暑さに配慮し、午前6時30分からスタート開始となります。車いすの選手が最初にスタートし、次に上肢障害の選手が続き、最後に視覚障害の選手がスタートします。東京の名所を周る広域コースとなっています。視覚障害の選手は、トラック競技と同じく、ガイドランナーと一緒に走ります。
フィールド競技・・・走り幅跳び、走り高跳び、投てき種目(こん棒投げ、円盤投げ、やり投げ、砲丸投げ)
走り幅跳び・・・視覚障害のクラスでは、試合が始まると、選手とコーラーが踏み切り位置から歩数を数えながら、スタート位置まで移動します。助走を開始すると、コーラーの掛け声と、手拍子に向かって、選手は走り出します。もし、途中でコースから外れてしまっても、止まった位置が踏切の手前ならやり直しができます。制限時間以内なら何度でも挑戦可能です。視覚障害のクラスでは踏切板ではなく、より広い踏切エリアが設けられています。
走り高跳び助走をつけて、バーを跳び越える競技です。両足で踏み切ると失格になります。下肢障害や視覚障害の選手が出場します。
投てき種目(こん棒投げ、円盤投げ、やり投げ、砲丸投げ)フィールド競技には、やり投げ、円盤投げ、砲丸投げの投てき種目があります。投てき台に腰など体が浮かないようにベルトで固定して、競技をします。選手はルールに決められたルールに従って、投てき台を使用します。
投げ方に規則がなく自由に投げることができます。
やり投げ・・・下肢に障害がある選手は、ルールで足や腰が浮かないようにベルトで固定して、投てき台を使用します。その他のルールはオリンピックと同じです。
砲丸投げ・・・砲丸投げは、男子は約7キロ、女子は約4キロの砲丸を使用します。
こん棒投げこん棒投げは、握力が弱いために、やり投げが出来ない選手が対象になります。長さ約40センチ、重さ約400グラムでボウリングのピンに似た、木製のこん棒を投げ距離を競います。やり投げと同じルールで行われますが、こん棒の投げ方に規定はありません。
コーラー・・・声や音で選手を支援する補助者
視覚障害を持っている選手が参加するフィールド競技(走り幅跳び、やり投げ等)では、声や拍手で踏み切り位置や投げる方向を教える、「コーラー」と呼ばれる人がいます。走り幅跳び、やり投げなどで踏み込むタイミングを選手に伝えます。また、投てき種目では選手の投げる方向に手を添えて伝えることもあります。
陸上競技は種目、障害の多様性により見どころの非常に多い競技です。ぜひ皆さんも観戦してみてください。きっとお気に入りの競技が見つかります。
参考文献
【TOKYO2020】
https://tokyo2020.org/jp/games/sport/paralympic/
【NHK SPORTS STORY】
https://www.nhk.or.jp/sports-story/index.html
【一般社団法人日本パラ陸上競技連盟 パラ陸上競技連盟公式ガイド】
https://jaafd.org/
【JPA 一般社団法人 日本パラ陸上競技連盟】
https://jaafd.org/
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