私とボッチャとの出会い~「偶然」が人生を変えるまで

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出典:Photo by Nayeli Dalton on Unsplash

「地上のカーリング」ともいわれるボッチャ。私がその選手になって早2年がたとうとしています。当初、軽い気持ちで始めたこの競技でしたが、今ではチームに所属し、実力のある選手たちとともに切磋琢磨しながら、来たる大会に向け練習に励んでいます。今回は、そんな私がボッチャを始めたきっかけと経緯などについてお話します。

スポーツには全く興味がなかった

簡潔に説明すると「ボッチャ」とは、赤と青のボールを使っていかにジャックボール(目標球)に近づけることができるかを競うスポーツです。

誤解のないよう最初に説明しておくと、競技を始めるまで私はスポーツとは縁もゆかりもありませんでした。学生時代は本当に体育が嫌いで、当時は「疲れるのになぜ取り組まなければならないのか」と常々考えていました。そもそも、私は四肢に障害があり車椅子を使っているため、周りの健常者より体を動かすことに対して困難もあります。

今思えば、私は無意識のうちに「体を動かすことはできないのが当たり前」と考えていたのかもしれません。

ボッチャを知ったきっかけ

そんな私がボッチャと出会ったのは、2021年に開催された東京パラリンピックでした。先述したように、それまでスポーツには興味がない私でしたが、4年に1度の祭典ということもあり「せっかくだし観てみるか」とその様子をスマホでなんとなく観ていました。

そんな中、公式サイトの競技一覧をチェックしていると、たまたま目にとまった競技が「ボッチャ」だったのです。

いったいどんな競技なのか、イメージできないその名前に惹かれ、試合を観てみることにしました。ルールも選手が使っている道具もシンプルなものながら、緻密な戦術と白熱した試合展開はもちろん、選手が私と同じように車椅子を使っているということから「もしかしたら私もできるかもしれない」と感じました。自分自身、その感情に驚いたのを覚えています。

体験、家族にカミングアウト

そうと決まれば割と即行動する私。さっそく、ボッチャができる場所をインターネットで検索してみると、私が通院している病院の近くに障害者スポーツセンターがあり、そこで活動しているボッチャクラブで体験ができることを知りました。

これまた偶然にも通院日とクラブの練習日が重なっていたので、これはいくしかないと思った私は、病院が終わったあとその足でスポーツセンターに向かいました。練習を見学させてもらうと、あのとき試合で観たようなスーパープレイがごく平然と繰り広げられており、思わず目を疑いました。どうやら、この場所で練習しているメンバーの多くが、大会で優勝経験のある人や代表として選出された経験のある人だったのです。

「せっかくなんで少し体験してみませんか?」と声を掛けられ、いざボールを手に取ってみると、想像していたより重く、それでいて手に馴染むような材質でできていました。目の前のジャックボールめがけてボールを投げてみると、自分が思っていた方向にいかないどころか、ジャックボールにかすりもしません。改めて選手の凄さを身をもって体感した瞬間でした。

とはいえ、この体験を通してさらにボッチャの面白さに取り憑かれた私は「ここで練習すればもっと上手くなって上を目指せるかもしれない」と感じ、競技を始めることを決心したのです。

帰宅後、私は意を決し、家族にボッチャを始めたい旨を伝えました。内心では反対されると思い、反論の言葉も考えていたのですが、意外にも家族から「いいね、いい機会だと思う」といわれたときはとても嬉しかったことを覚えています。と同時に、選手としての「覚悟」を決めたのもこのときでした。

「偶然」がもたらした大きな「夢」

晴れてボッチャ選手としての道を歩むこととなった私は現在、オープン座位クラス(国際基準に満たない軽度の障害)の選手として、大会で実力を発揮すべく練習の日々を過ごしています。始めた当初に考えていた「上を目指せるかも」という淡い期待は、まだまだ現実のものとはなっていませんが、チームメイトとともに目標に向かって頑張っています。

あのとき、あのタイミングで試合を観ていなかったら、通院日と練習日が重なっていなかったら、きっと私はボッチャを始めようとはならなかったと思います。結果、その「偶然」の出会いが私の人生を変えたといっても過言ではありません。

もしかしたら、これを読んでいるみなさんの周りの日常にも「人生が変わる出会い」が潜んでいるかもしれません。

ももっちぃ

ももっちぃ

先天性の四肢機能障害(脳性麻痺)で発達・知的障害あり。大学では主に文学や日本語教育について学んでいました。
よろしくお願いいたします。

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