今更聞けない、「潰瘍性大腸炎」とは?
暮らし「潰瘍性大腸炎」は、安倍晋三元首相の持病でもあることから、消化器系の難病では比較的知名度が高いです。その主な症状や仕組み、そして寛解期にこそ出やすい悩みなどを解説します。
指定も受けた原因不明の難病
潰瘍性大腸炎は「指定難病97」として正式に難病指定を受けています。大腸の粘膜が炎症を起こして潰瘍や糜爛(びらん:表粘膜がただれ落ちること)に繋がり、そのせいで血便・下痢・腹痛を主とした症状が出続ける病気です。「炎症性腸疾患」という括りでは同じく難病指定を受けたクローン病が存在しますが、そちらの説明は割愛します。
潰瘍性大腸炎・クローン病ともに原因は不明で、現代医学では完治に至りません。そのため、症状を抑えて寛解期を延ばす方針で治療を行います。国内の潰瘍性大腸炎の患者は、2016年時点で1000人に1人程度存在するといわれています。
症状の激しさも人それぞれです。患者の体験談は「遠出にはオムツが欠かせない」「何を飲み食いしてもすぐ下痢として出てくる」など壮絶で、重症化して発熱や貧血が出る人もいれば皮膚や目などで合併症が出る人もいます。
主な治療は薬を中心とした内科的治療ですが、内科的治療の効果が無かったり副作用などで出来なかったり癌の疑いがあったり等の理由で、外科的治療として大腸を全摘出する患者もいます。大腸全摘後は小腸で人工肛門(オストメイト)を作ったり「回腸嚢」という便を溜める袋を肛門に繋げたりします。
発症年齢自体は20代がピークとされていますが、どの年代でも発症事例があります。安倍元首相は中学時代に診断を受けたといわれていますね。なお、患者の男女比はほぼ半々で性差はないとされています。
潰瘍性大腸炎の分類
潰瘍性大腸炎には発症部位や臨床経過などによって細かな分類がなされています。この違いは患者ごとの個人差を如実に表しており、時に同じ病名を持つ患者同士で的外れなアドバイスを交わすリスクにも繋がっています。
発症(病変)部位の分類
病変の範囲によって「直腸型」「左側大腸炎型」「全大腸炎型」の3段階に分類されます。直腸から口側へ、後になるほど病変の範囲が広くなっています。
病期の分類
症状が出ている時期を「活動期」または「再燃期」と呼びます。一方、症状が落ち着ている時期は「寛解期」と呼ばれていますが、潰瘍性大腸炎は不治の病なので完治することはありません。その辺りは勘違いしないようにしましょう。
重症度の分類
症状の激しさに応じて「軽症」「中等症」「重症」の3段階に加え、重症の中でも特に重篤で緊急対応を要する「劇症(激症)」が存在します。
臨床経過の分類
寛解と再燃を繰り返す「再燃寛解型」、活動期が続き症状が収まらない「慢性持続型」、活動期や再燃期で急激に症状が悪化する「急性劇症型」、1度発症したきり再燃がみられない「初回発作型」の4種類に分けられます。ほとんどの患者は「再燃寛解型」に当てはまるそうです。
寛解期ならではの悩み
潰瘍性大腸炎の患者は、ほとんどが寛解期と再燃期を繰り返す「再燃寛解型」に当てはまります。再燃すれば当然ながら血便や下痢に苛まれるので、内科的治療は寛解期を少しでも延ばす方針で行われます。寛解期であれば再燃期のような症状はなりを潜め、健康な人と遜色ない食事などが出来ます。それゆえに寛解期ならではの悩みもまた存在します。
他の難病にも当てはまることなのですが、病状が安定しているときに「病気のくせに○○は出来るんだな」「仮病じゃないのか」などと心無い罵声を浴びせられるケースがとても多いのです。再燃期が身体的な発作であれば、寛解期には社会的な発作が出ると言えるでしょう。
具体的には、食事制限のない寛解期に好きな料理を食べているのを仮病だ何だと咎めて騒ぎ立てるようなケースです。これでは「発作」が身体から周囲に変わっただけで、症状が緩いときでさえ病気に振り回されています。
指定難病と言われると、筋ジストロフィーやALS(筋萎縮性側索硬化症)といった重度の身体障害が連想されがちです。しかし、外見に出ないものの確かに体内で発症している難病もまた多く、見た目に出ないぶん軽視されているのではないでしょうか。
難病はその症状だけでなく、「難病なら難病らしく大人しくしてろ」「病気に逃げるな甘えるな」という部外者の無知蒙昧な罵倒もまた同様に患者を苦しめます。尤も、そうして他人に仮病やサボり認定ばかりする人間は、えてして自分のハードワークぶりに酔っているのかもしれませんが。
参考サイト
潰瘍性大腸炎(指定難病97)
https://www.nanbyou.or.jp
潰瘍性大腸炎の分類
https://www.remicare.jp
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