それって本当に重病?~ひとりぼっちで抱え込まないで

その他の障害・病気

出典:Photo by Chris Buckwald on Unsplash

人間は生き物なので、常に元気とはいきません。特に理由がないのに、何となくお腹が痛い、何となく頭が痛い、というときは誰しもあると思います。そんなときに「何か大変な病気なのでは?」と、漠然とした不安に駆られた経験はおありでしょうか。私はあります。

そんな根拠のない恐怖感について、書いていこうと思います。

その不安の名前

医学的に検査して問題がなかったのに不安になったり、専門科から大丈夫だといわれているのにも関わらず、自分のちょっとした不調を大病のサインだと思い込んだりする症状。これは「心気症(心気神経症)」と呼ばれています。

心身の些細な不調を重大な問題だと思い込み続け、その状態が6か月間継続しているときにこの診断を下されます。精神疾患のひとつとして考えられており、発症の原因は人によって様々です。

不安のままに不調についてネットで調べてしまい、結果的により恐怖感をあおられてしまうことも多く、そういった場合は「サイバー心気症」や「グーグル症」といった呼ばれ方もします。

病は気から

生きている限り、誰しもが病気になる可能性はあります。普段から健康に気を配っていたとしても、残念ながらなるときはなります。ですので、病気を恐れること自体は仕方のないことです。

しかし心気症は、どうしようもない安心を欲しがります。「絶対に大丈夫だ」という確信が欲しい。そのために病院にいき、お医者様から太鼓判をもらう。しかし、すぐにまた同じ不安に囚われてしまう。そういった繰り返しを起こすのが心気症です。

そのように心配しすぎて心が病んでしまい、最初は何ともなかったはずが、いつの間にか本当に体調不良を引き起こしてしまう。そういったパターンもあります。まさに、病は気からということですね。

サイバー心気症においても同じことがいえます。ただの一時的な不調の理由を検索してみた結果、恐ろしい大病の名前ばかりがヒットし、「自分はこの病気に違いない」と勝手に思い込んでしまいます。

さらに、思い描く予想はいつも最悪なものです。「いきなり心臓発作になって、誰にも発見されずに死ぬのでは?」「寝ている間にいきなり脳梗塞になって、そのまま目覚めないのでは?」などといった、考えうる限りでもっともよくない未来を想像してしまいがちです。

実際のところ、そういった心配には終わりがありません。身も蓋もない表現ですが、どれだけ不安を募らせたところで、きりがないのです。

不安を認めて今生きていることに集中する

心気症は、実はありふれた症状です。「未知を恐れる」という意味では、どんな人でも一度は経験したことのあるものだと思います。その心配のときに「最悪の結果を意識しすぎてしまう」というのが、心気症の分かりやすい特徴です。

私の場合は、芸能人が病気になったというニュースや、身近な人の発病の報告を聞き「自分もそうなるのではないか」と怖くなるときがあります。たとえ今、特に大きな不調が見られなくても「今朝は少し頭が痛かったから脳出血しているのかも」と、日常の中の小さな不安を飛躍して心配してしまったりもします。

恐怖を拭いたくて、ネットでその病気について調べ、ちょっとでも自分に当てはまる症例が出てくる度に、余計に不安になっていました。安心したいはずなのに、自分から不安になりにいっていたのです。

「死を怖がる」という感情は「生きていたい」という気持の裏返しです。なのに、死ぬことを意識しすぎるあまりに、今生きているという事実を忘れてしまう。この症状の1番恐ろしいところはそこだと、私は思います。

万が一といったことはあるので、健康を心配してお医者様に診てもらうということは、大切です。そこで大丈夫だといってもらえたのならば、割り切って、今元気に生きているという現実に集中する。

まだ見えてもいない最悪の予想に、振り回され疲弊するよりも「ある程度の不安や心配は、正常な感覚なので仕方がない。それよりも、今生きていることを楽しもう」と、不安を受け止める。そうしていっそのこと開き直った方が、精神的にとても健全に過ごせます。

それを理解していても、つい病気について考えてしまう、調べてしまう、といった気持ちはよくわかります。心気症に悩む方は、考えぐせ、調べぐせがついている場合が多いです。それを急にすべてやめるということは、不可能に近いです。考えてはいけないと思うことで、より深く考え込んでしまいます。

よく効く薬

心気症で不安になり来院される患者さんも、少なくはないといいます。ですが、大抵の診断結果は「自律神経の乱れ」や「気にしすぎているせいで、体の普通の変化を過敏に捉えている」といったものになるそうです。

目に見える数値(体温や血圧、心拍数など)に固執しすぎるあまり、余計に体調を崩してしまう人もいます。体温や血圧などは、一日の中で常に変動していくものですし、腹痛や頭痛などもほとんどは命にかかわるようなものではないです。健康な体でも、その日の気分や天気によって、一時的に不調になることもあります。

それらを頭ではわかっていても、漠然と心配になってしまうのが心気症です。よく効く薬はなく、場合によっては、向精神薬を処方されることもあるようですが、完全に治すことは難しいです。大切なことは「今の自分の状態を正しく知ること」と「不安から逃げずに認めること」だと私は考えています。

私も睡眠時間にこだわるあまりに、逆に眠りづらくなった経験があります。「今日は5時間しか眠れなかったから体調を崩すかも」とか「途中で2回も起きてしまったからよくない」など、マイナスの方向に考えすぎて不眠と中途覚醒が悪化し、最終的に睡眠導入剤を処方してもらうことになりました。現在はかなり眠りやすくなって、自分なりに元気にやれていると思います。

そうなれた一番の理由は、薬ではないと思っています。信頼の置ける身近な人に相談できたからだと考えています。不安になったときに、一人で悪い方向に考え込むのがこの症状の特徴です。そのまま自分の想像だけで怖くなり、ネットで情報をえようとしたりします。しかし、ネガティブな思考になっている状態でそんなことをしても、悪い情報ばかり取り込んでしまい逆効果です。

抱え込むことをやめて、家族でも、友人でも、お医者様でも、誰でもいいので第三者に不安を聞いてもらい、一緒に考えてもらいましょう。万が一、本当に病気だったとしても、誰かに話すことで早期治療に繋がります。最悪なことばかりに囚われず、楽観的に考えてみましょう。個人的には、何か趣味をもつこともおすすめです。

参考文献

【水谷心療内科 こころの総合診療医  心気症とその治療】
https://www.dr-mizutani.jp/dr_blog/

【心療内科・神経科ハートクリニック こころのはなし】
https://www.e-heartclinic.com/index.html

真夜中

真夜中

アニメや漫画、ゲームが大好きなオタク。
軽度の不眠症持ち。
柴犬を飼いたい。

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