就労移行ITスクールを運営するLOGZGROUP株式会社の古徳一暁代表にインタビューしました
仕事「就労移行ITスクール」は、ITスキル特化の個性的な就労移行支援事業所で、実際にエンジニアやデザイナーとして、時にスタートアップ、ベンチャー企業にさえ就職する人も居ます。また、お笑い芸人のEXITを公式アンバサダーに迎え、福祉業界で異色を放っています。そんな「就労移行ITスクール」を全国30拠点以上展開するLOGZGROUP株式会社の古徳一暁代表にインタビューしました。
弟の精神疾患から福祉の世界へ
──福祉分野に入ったきっかけは何ですか
「弟が統合失調症になったのがきっかけです。それまで何も知らなかったのですが、親なき後を考えて調べ始めると施設や支援についての情報が山ほどあり、そこから興味を持ちました。なぜ弟が統合失調症になってしまったのかというのが原点です。弟が社会復帰するときに役立つインフラを作るのが経営者である自分に出来ることだと考えて、就労移行支援を立ち上げようと思いました」
──福祉の勉強を始めるまではどのような社会人でしたか
「大学を中退して起業したので、社会人経験はありません。元々インターネットメディア事業を立ち上げていて、個人でWebマーケターやアフィリエイター的なことをしていました。受験生の頃からブログを始めて、そのブログから生徒を募集して、学習塾を開くなど、ネット上で人を集める才能はあったと思います」
──就労移行支援を選んだ理由は何ですか
「今でこそ障害者雇用にもエンジニアやデザイナーの選択肢は増えていますが、やはり軽作業や事務系だけでは選択肢として少なすぎると感じていました。やりがいを持って働けて、自分の障害を個性とさえ捉えられるようになるには、就労移行支援を始めるのが最善と思ったのです。ITスキル特化の就労移行支援は、自分たちが先駆けとなったのではないでしょうか」
──弟さんのこともあって色々なコースを設けられたのですね
「そうですね、ゲームやパソコンが得意だった弟の適性を考えると軽作業や事務には向いていません。企業としても、その人にしかない高いスキルがあれば配慮できます。そうしてお互いがwin-winとなって初めて長く働けると思います。配慮を受けるために必要な水準があるという厳しい現実も、福祉の立場で伝えていく必要があり、プログラムにも反映させました」
より多くの「困っている人」に広めたい
──お笑い芸人のEXITをアンバサダーに起用するなど、福祉業界で広報戦略を取るのは珍しいですが、どのような思いでやっているのでしょうか
「7年間やってきて卒業生の4割がエンジニアやデザイナーに就職できているので、健常者が一から学んで身につけることができる割合より障がい者の方が絶対に高いと思ってます。これだけの実績を持てたならば、次は広めていくフェーズではないかと思いました。福祉制度すら知らないような困っている人にも届けるにあたって、派手な広報戦略をとりました」
──派手な広報を行うことで、批判を受けたりすることはありますか
「考え方の相違がある以上アンチは必ず居るでしょうが、それでも前に進まなければ業界は変わりません。賛否両論あろうとも、道理に反していなければ大して気にするものでもない筈です」
──軽い感じでなく、特集を組んで重く取り上げるケースが多いですよね
「障がい者のお涙頂戴のいい話ばかりじゃなくて、たまには違った角度で見せていかないとイメージは変わりません。ゆえに広告もポップな路線を貫きました」
システムを作ることで、利用者・企業・事業所すべてに貢献できる
──就職先に大企業が多いですが、個性的な取り組みや強みがあるのですか
「企業様とのつながりが強いので、企業側が求職者に求める基準をテンプレート化してカリキュラムに入れています。それぞれの企業が求める人物像という鮮明な目標を目指すスタイルが、高い就職率にも反映されているのではないでしょうか」
──利用者は20~30代の若い人が多いのですか
「年齢幅は18歳から30代前半までといったところで、40代以上はほとんどいません。ITというだけで上の年代に忌避されているのか、問い合わせに来る段階で年齢層が決まっている印象です。意図して年齢制限は設けていませんが、自然とそうなっています」
──障害福祉の管理・請求ソフトのシステムを開発されていますが、きっかけは何ですか
「現場で不便に思うことがまだまだ多い業界です。正しく時間を使うための簡略化や利便化にはシステムで解決すべきだし、事業所を運営するからこそ役立つシステムを作っていくべきだと思います。また、自分たちで上手くいったことは、独占せずに他の事業所にも伝えねばなりません。業界の競争力を高めていかないと、労働環境は良くならないし、相対的に良くならないと国の予算も上がりません。こうした伝導をしていくことも私たちの使命だと感じています」
福祉請求クラウド 公式ホームページ
e-sports版パラアスリートを広げ、障害者雇用の選択肢を増やす
──今後はどのようなことに挑戦したいですか
「大会を作るなどe-sports版パラアスリートの受け皿を増やしてから、e-sportsにも参入するつもりです。来年4月に秋葉原でe-sports専門の就労移行支援を開くほか、我々も独自のe-sportsチームを持って力を入れています。e-sportsには可能性を感じていて、誰もがe-sportsのプロ選手になるのは現実的に難しいですが、実業団レベルならあと数年で形になりそうです」
──e-sportsを含め、障害者雇用の選択肢が広がっていくといいですね
「障害者雇用する企業が増えれば、我々としても選択肢を増やすことができます。障害者雇用に対して企業側に理解していただく上で、イメージを変えていくことは課題として残っていますね。依然、障害がある人は軽作業を行っているというイメージが広く残っています。それが悪いとは言いませんが、選択肢がもっと広がっていってほしいと思います」
就労ITスクール 公式ホームページ
https://itschool-lp.logz.co.jp/