発達障害の感覚の特異性とは~発達障害の私の幼少期体験談

発達障害

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発達障害者は独自の感覚を持つことが、当事者出版や、テレビニュースなどを通じて認知され始めました。音が大きく聞こえる苦痛や、毛糸の衣服を着ると針で刺されているように感じるなどの「感覚過敏」の事例をよく耳にします。しかし、発達障害特有の感覚は過敏性に限らず、個人差が大きいです。発達障害の方々の感覚世界は、どれほど多様で複雑なのか。発達障害の傾向を持つ私自身の幼少期体験をもとに紹介します。

幼少期の体験

発達障害の傾向を持つ私には、味覚や一部の触覚の「過敏さ」のほか、変わった感覚の「好み」や「鈍さ」があります。味覚や顔に走る刺激に弱いため、好き嫌いが激しく、歯磨きが上手くできませんでした。野菜を口にすると、しゃりっとした触感が痛く、青臭い風味、苦味が嫌でたまりませんでした。子どもの私にとって、歯ブラシの感触も歯磨き粉のえぐみも苦痛で仕方がなかったのです。かわりに、プリンやハンバーグなどのやわらかいものばかり食べるので、栄養も偏っていました。

お風呂で髪を洗うときも、髪に触れられる感触や、シャンプーの泡が頭や顔にかかる不快感が怖くてたまりませんでした。おかげで私は小学校5年生になるまで、自分で歯磨きと髪を洗うことすらできませんでした。反面、不潔による体臭や不快感などには鈍かったです。そのため歯や髪が不潔で、周囲に何を言われても、当時の私は気にも留めていませんでした。幸いと言って良いのか、私の母は私が嫌がることを強要しない性格でした。周囲からは「しつけがなっていない」、と言われることもありましたが、私としては母のおだやかな対応には感謝しています。発達障害特有の感覚ゆえに苦しむ中、周囲からの叱責は大きなストレスとなります。もしも母がしつけに厳しく私を叱ってばかりいる人でしたら、私の感覚過敏はさらに悪化していたと思います。(色々な考え方があると思いますが)

感覚の鈍さと変わった好み

日常生活に支障が出やすい「感覚過敏」を持つ反面、感覚の鈍いところもあります。普通は嫌がられるはずのガソリンや灯油のにおいが平気です。むしろ好きだったらしく、母が灯油をかえる度に、私は自分からにおいを嗅ぎに近づいていました。やわらかいものへの執着も強かったです。フワフワの手触りの良いぬいぐるみや毛布は、幼稚園にいても片時と離しませんでした。

嗅覚のほか聴覚も、むしろ鈍感なほうです。騒音に対する苦痛はあまり感じにくいので、一見日常生活で困ることがないです。ただし聴覚が鈍い分、「聴き取り」には普段から苦戦していました。小学校の先生や親の指示が耳に入ってこないので、私はしょっちゅう迷子になりました。移動教室では、自分の行き先ややることも分からず、フラフラと歩きまわりました。そうなると周囲からは、「あの子は人の話を聞かない」、と叱られることが多かったです。当時の私は、ただ戸惑い、怖がるか、ぼんやりとするしかありませんでした。周囲は何故私に怒っているのか。その理由の言葉を聞き取り、意味を理解することもできていませんでした。

大人になった今

幼少期は発達障害に特有の感覚で苦戦してきた私ですが、今はだいぶ改善された点も多いです。苦手な野菜は、私の好きな洋風スープなどと混ぜたり、小さめに刻んだりすることで、食べやすい工夫をします。小学生の頃から今も、自分の好きなキャラクターや人物の好物を食べてみたりすることで、健康的な食材を摂るモチベーションも保てています。

苦手だった歯磨きと洗髪は、今では自分でできるようになりました。当時、小学校5年生になった私は、周囲の視線や虫歯による苦痛を感じ、「このままではマズイ」と危機感をもったことから、自分でやるように練習しました。

一方で最近の課題は、聴覚の鈍さにあります。大人になった私は、周囲の状況を認識するようになって初めて、「聞き取り」に苦手意識を覚えました。大人数の外食では、会話中の単語を拾うのが精一杯です。電話の声や話す相手の発音が上手く聴き取れないことも多いです。そのため、こまめにメモを取り、相手に確認をとることで、対応しています。

まとめ

今回は私の幼少体験を例に、発達障害の特異な感覚と日常生活への影響について述べました。以下にまとめます。

・発達障害の感覚は「過敏さ」のほか、「変わった好み・こだわり」や「鈍さ」もあること。これらが複雑に混ざり合っていること。
・感覚過敏など、同じ症状を訴えている場合でも、本人がどう感じ、何に困るのかは、人それぞれであること。
・発達障害の「感覚」は成長に伴って、変わることもあれば、新たな困難を自覚し始めることもある。周囲は叱るのではなく、長い目で見守ることも大切であること。
・本人にとって心地よい感覚を与えてくれるモノを使うことで、本人がリラックスできるようにサポートしていくのも、一つの方法だと思います。

私の幼少期記事が参考になれば幸いです。ご拝読ありがとうございました。

参考文献
岡田尊司(2017年)『過敏で傷つきやすい人たち』幻冬舎出版

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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