発達障害で感覚過敏・感覚鈍麻(どんま)を持つ私をハッピーにしてくれた感覚刺激とは

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音、色、景色、肌触り、風味、香り、あなたに安らぎをくれるものは何ですか?発達障害の感覚過敏等があるため、知らず知らずの内に日常生活がストレスの連続になっている方も多いです。しかし、発達障害のある方をリラックスさせる感覚刺激もあります。好みの感覚刺激を活用することで、ストレスや問題行動の軽減ができます。発達障害に安らぎを与えてくれる感覚刺激について、私のエピソードを交えて解説します。

感覚過敏と感覚鈍麻(どんま)について、簡単に

発達障害によく見られる感覚過敏・感覚鈍麻は、個人によって千差万別、かつ多くの方に共通する特徴が見られます。↓

感覚過敏の例
・人の話し声や街中の騒音が苦痛、プリントの擦れる音すら気になって集中できない。
・日差しに当たると、視界全体が真っ白に感じるほどまぶしい、痛みすら感じる。
・人に軽く触られるだけで痛みや不快感に襲われる。
・偏食がひどい。かたいものや味が複数混ざっている食べ物が苦手。

感覚鈍麻の例
・聴き取りが弱く、呼びかけに反応しない。
・痛みや疲労感に気付きにくい。
・標識や文字をよく見逃す。

発達障害によく見られる感覚過敏と感覚鈍麻は、複数同居しているのがほとんどです。個人によって様々ですが、感覚過敏のため音、光、匂い、手触り、味等、あらゆる刺激が通常よりも強く感じてしまうか、苦痛すら覚えるのです。私の場合、特に幼少期の味覚と食感、顔の触感が過敏でした。野菜のように固くて青臭いもの、歯磨き粉や香辛料の刺激物をまったく受けつけないので偏食がひどく、歯磨きすら小学校5年生までできませんでした。さらにシャンプーが顔にかかる感触は嫌で怖くてたまらなかったので、洗髪も嫌がる始末。昔は、いつも髪がぐちゃぐちゃでした。反面、人の指示が聴き取れない、灯油の匂いやマジックペンの匂いが平気、包丁で指を切っても痛みに気付かない等、感覚鈍麻も混じっていました。

感覚の特異性から生じるストレスや生きづらさを和らげるためか、発達障害者は特定の感覚刺激を好み、強い執着を見せます。モノや限度にもよりますが、日頃からストレスを抱えて生活する発達障害の子ども・人が安心できる感覚刺激を知っておくことは、問題行動やストレスの軽減にも役立ちます。

私をハッピーにしてくれる刺激~触覚編~

ふわふわのもこもこが大好き
子どもの頃から今も、私にはウール系のふわふわした肌ざわりの毛布と抱き枕が欠かせません。幼稚園に通っていた時も、お気に入りのぬいぐるみを肌身離さず持って過ごしました。秋冬を好む理由は、柔らかくて温かい毛布や衣服に包まれる心地良さを味わえるからです。夏はさすがに暑いので毛布は使えませんが、代わりにウールの抱き枕を傍におくことで安眠できます。今思えば、私は幼少期から中学校時代までは眠りが浅く、悪夢にうなされることが多かったです。しかし、毛布をかぶって眠れる冬や、夏でも抱き枕を使うようなって以来、ほぼスッキリ安眠できる夜が増えました。

自閉スペクトラム症の私は感覚の鈍さが優位ですが、発達障害には触覚過敏のため抱っこや服の素材・タグを嫌がる方が多いです。どんな感覚を好むのかは人それぞれだと思いますが、多くの発達障害の子ども・人は、ふわふわとした触り心地の良いものをよく好みます。人と肌で触れ合い、抱き締め合うことが叶わない分、柔らかくて温かく安心できる触覚刺激に執着すると考えます。

触覚過敏に悩まされていた自閉スペクトラム症のドナ・ウィリアムズさんや、テンプル・グランディンさんも、自分の感覚を調整し、安らぎを与えてくれるツールとして、柔らかい毛布やぬいぐるみを好みました。また、『光とともに…~自閉症児を抱えて~』では、光が女子生徒の髪を触ってしまうのを防ぐために、彼の好きなふわふわ素材のマスコットを常に持たせます。マスコットに触っておくことで、気を紛らわすのに成功します。『うちの火星人』のADHDのリスミーは、ゴムボールを握りしめることで、授業に集中できるようになります。何かに集中したり、ストレスを感じたりする際、貧乏ゆすりをする、爪を噛むことで脳に刺激を与えて気を紛らわすのと似ています。

しめつけられるのも好きです
幼少期の私は、自分の体を布でぎゅっとしめつける、という変わった遊びを好んでいました。大きな冬布団からカーテンの布、毛布、体育マット等で、自分の体をす巻きのようにぐるぐるとしめつけては楽しみました。その名残なのか大人になった今でも、秋冬には冬布団と毛布で頭から爪先をぎゅっと包まないと落ち着きません。自宅で休憩をとる時も、布団にくるまって抱き枕で自分の体をぎゅっとしめると、心身共に疲れが取れる気がします。

触覚においても過敏であったり、もしくは鈍くなったりする発達障害には、自分の体をしめ付ける=体全体を圧迫感で刺激することでリラックスできる方が少なくありません。自閉スペクトラム症の動物学者・グランディンさんによると、発達障害にしばしば見られる感覚過敏や不注意、かんしゃくは、むしろ脳に適度な刺激が行き届いていないことも一因だと考えました。実際にグランディンさんは、強い家畜牛の鎮静効果のある締め付け機で、自分の体をしめ付けて実験しました。結果、神経過敏やかんしゃくがかなり改善されたので、以来ストレスやパニックを和らげるために、締め付け器を日常的に使うようになりました。ふわもこ刺激の話と同じですが、人肌や抱っこが与えてくれる安心感を得られない代わりに、発達障害者はモノに触れ、モノに触れられることに安らぎを覚えます。毛布ごしであれば肌と肌が直接触れ合わずに済むので、発達障害のある相手を抱きしめるために、毛布を使うのはいいと思います。

私をハッピーにしてくれる刺激~視覚編~

人の気持ちがよく分からなかった子どもの私は、透明で綺麗なモノやキラキラと輝く石が好きでした。赤、青、緑、黄色、紫の透明なアメとゼリー、ツヤツヤ煌めく鉱石やおもちゃ、海や空に星くずを溶かしたようなレジン素材のアクセサリーを見かけると、私はつい足を止めてしまいます。小学校時代には、友達の家で見つけた綺麗なおもちゃをつい手に取り、ポケットに入れっぱなしにしたこともありました。その後、盗んだと誤解されましたが、当時の私には自分のモノと人のモノの区別がつかなかったのです。

綺麗なモノや色彩に強く惹かれるせいか、子どもの頃の私はアクセサリーや服、綺麗なおもちゃを買ってもらうのが大好きでした。モノを使ったり、人に見せたりすることよりも、集めては眺めることを楽しんでいました。当時の私の服装や色彩センスはわりとユニークでした。まだ10歳なのに、20歳くらいの女性が好む色鮮やかなワンピースや、浴衣の下にスカートとブーツを組み合わせる等、周囲の人間には当然うけなかった気がします。私の発達フレンドも、派手な柄ものやユニークなアクセサリー、ゴシックパンク等、個性の強いファッションの方が多いので、一緒にいて楽しいです。さらに、昔からお絵かきも大好きです。幼稚園から小学校低学年の頃は、マジックペンを使って、自分の腕やお腹にアライグマの絵や文字で落書きをよくしました。
このように、視覚の鋭い発達障害の内、キラキラ輝くものや色彩を好み、絵描きや手芸等のアート部門で能力を発揮したり、やりがいを見出したりする方は多いです(ただし、中には逆に視覚過敏なため光に痛みを感じる、色々な色彩を見ると混乱する等、かえって嫌がる者もいます)。

私を含む発達障害の方をハッピーにしてくれる感覚刺激を紹介してきました。しかし、個人的に最高の感覚刺激は、海とプールだと思います。青色に透き通ったプール、太陽や貝殻、魚の色彩に輝く海、水の優しい感触。透明な美しさも、清らかで心地よい感触も、両方楽しめるのが好きだったのか、私は海とプールも大好きで常に焼けていました。特に自閉スペクトラム症の方は、優しい感触と浮上感、透明な耀きを好むからか、水やプール、海を愛し、こだわりを持つことが多いです。

まとめ

発達障害、感覚の特異性を持つ私に安らぎをくれたものについて、以下にまとめます。

・発達障害で感覚過敏・感覚鈍麻をもつ者は、自分にとって心地よいモノを好み、強い執着を見せます。

・触覚においては、手触りの柔らかい毛布やファー、ぬいぐるみ等に触れることで抱きしめられるような安心感を得る、布団やマット、カーテン等で自分の体を圧迫することで神経を鎮める目的があります。

・視覚においては、キラキラ輝くモノや、美しい色彩に惹かれ、個性豊かなセンスや芸術面で才能を発揮する方もいます。

いかがでしたか。
発達障害のある人・子どもは、感覚の特異性に悩まされることも多い中、特定の感覚刺激に安らぎを見出します。発達障害の子ども・人に安らぎとやりがいを与えてくれる刺激は、今回紹介したもの以外にもたくさん存在し、好みは一人一人多様です。発達障害の子ども・人が見せる、特定のモノへの執着は、こだわりという問題としてしばしば見なされます。しかし、本人が好む感覚刺激を上手に活用すれば、本人が安心して日常生活を送り、ストレスに対処するツールにもなってくれます。

特定の感覚刺激へのこだわりや豊かな感性は、美しいものを発見し、新たなものを生み出すことに繋がります。

グランディンさんも、牛の締め付け器を自身の神経発作の治療のために開発し、その後自閉スペクトラム症の啓蒙や、肉用の家畜が低ストレスで処理される施設設置にも尽力しました。

発達障害のある我が子、もしくは発達障害を持つあなたをハッピーにしてくれる、あなただけの感覚刺激を見つけ、どうかそれを大切にできたら幸いです。

参考文献

・岡田尊司(2013)『過敏で傷つきやすい人たち、HSPの真実と克服への道』幻冬舎新書

・平岡禎之(2017)『うちの火星人』光文社

・テンプル・グランディン他(1994)『我、自閉症に生まれて』学研

・ドナ・ウィリアムズ(訳:河野万里子)(2000)『自閉症だったわたしへ』新潮文庫

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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