横浜音祭り2019が挑戦する本気のバリアフリー~音楽フェスと障害者を繋ぐロボット

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写真:3月23日の横浜音祭りの記者会見に登壇した、出演する菅野祐悟、私立恵比寿中学、葉加瀬太郎、林英哲、村治佳織、吉藤健太朗(敬称略)

「横浜音祭り2019」がこの秋、9月15日(日)から11月15日(金)まで開催されます。「横浜音祭り」とは、3年に1度横浜市内で開催される日本最大級の音楽フェスティバルです。会場は横浜市内全域となっていて、ホールにとどまらず横浜じゅうに音楽が響き渡ります。まさに“街”そのものを舞台とした巨大な規模を誇るイベントです。参加する音楽家も、プロアマ・ジャンル・世代を問わず極めて多くの分野から横浜に集結します。

アンドレア・バッティストーニ指揮による東京フィルハーモニー交響楽団演奏の「横浜音祭り2019オープニングコンサート」を皮切りに、期間中は毎日どこかで音楽イベントが行われています。横浜の未来を担う横浜在住・在学の高校生対象には、プロに学ぶワークショップも開催され、「ヨコハマ・ポップス・オーケストラ2019」(11月1日)の出演者をオーディション選出します。選ばれた高校生はコンサート当日、ももいろクローバーZと共に、ワークショップの成果を披露します。ラストを締めくくる「横浜音祭り2019クロージングコンサート」(11月15日)では、葉加瀬太郎とMay J.のコラボレーションや横浜シンフォニエッタを中心としたこの日限りの特別編成の演奏が企画されています。

初回が2013年、第2回が2016年で、今年が第3回となる「横浜音祭り」。障害者もフェスを最大限に楽しめるよう、本気のバリアフリーに向けた努力も注目の的となっています。

3年前に掲げた「スーパーユニバーサル」

前回にあたる2016年の横浜音祭りでは、「スーパーユニバーサル」というテーマが掲げられていました。ユニバーサルデザインの概念がフェスに導入された形で、ジャンルも年代も知名度も、そして障害も関係なくすべての人が楽しめる音楽フェスを目指したのです。

「スーパーユニバーサル」を象徴したのが「ミュージック・イン・ザ・ダーク」というイベントでした。これは視覚障害者と健常者による弦楽オーケストラで、会場の照明を落とした真っ暗闇の中で行われたのが特徴です。楽団も観客も皆、視覚以外の情報だけでイベントを盛り上げていきました。この「ミュージック・イン・ザ・ダーク」は今回も11月2日に開催され、視覚障害のあるヴァイオリニストスト・川畠成道など障害のある演奏家とない演奏家によるアンサンブルが真っ暗闇の空間で演奏します。

  • 「ミュージック・イン・ザ・ダーク」(c)oono ryusuke

今回の音祭りでは、「スーパーユニバーサル」を継承し、「クリエイティブ・インクルージョン」の理念を掲げます。「クリエイティブ・インクルージョン」とは横浜市文化観光局が掲げる理念で、「障害・人種・国籍・宗教・年齢・性別等の様々な違いを超えて創造的に課題解決を図るとともに、誰もが対等な関係で関わり合い、社会や組織に参画する」ことを是としています。

障害者とフェスを繋ぐ方法として今年注目されているものの一つが、株式会社オリィ研究所より製作された分身ロボット「OriHime」です。

  • 分身ロボット「OriHime」 (c)oono ryusuke

分身ロボットがフェスと障害者を繋ぐ

分身ロボット「OriHime」とは、「子育てや単身赴任、入院など距離や身体的問題によって行きたいところに行けない人のもう一つの身体」と公式サイトで紹介されています。OriHimeはカメラとスピーカーを内蔵した小さい胸像型ロボットで、専用アプリからOriHime側の様子を観察したり遠隔操作で会話や感情表現をしたりして、その場にいない人間と高度なコミュニケーションをとることが出来ます。

OriHimeは不登校児が授業に参加したり、在宅勤務者が会議に参加したり、様々な用途に少しずつ進出している最中です。その中でも、寝たきりのALS(運動ニューロンが侵され全身の筋力が衰えていく難病)の患者らがOriHimeを用いて集会を開いた試みは画期的なものでした。障害により外出のままならない人もOriHimeを用いれば外出できるという新たな可能性を示したのです。(OriHime本体を持っていく人は必要ですが)

横浜音祭り2019は、OriHimeにとって初めての音楽フェスティバルとなります。一人で外出できなかったり介助があっても外回りが難しかったりする人が、OriHimeを通して臨場感込みでフェスを楽しむことができるのです。「スーパーユニバーサル」や「クリエイティブ・インクルージョン」の理念は、より重い障害をも包み込んで賑やかな音楽のフェスへと導こうとしています。

さらに、9月には、国内外で活躍する和太鼓奏者・林英哲、英哲風雲の会が特別支援学校に出向いて和太鼓パフォーマンスを披露するとともに、ワークショップを行いフェスを盛り上げます。子どもたちはワークショップを通じ、その成果を校内発表会で披露することを目指します。

  • 「林英哲 特別支援学校・和太鼓ワークショップ」(c)S.Oguma

横浜市全域で行われる巨大音楽フェス「横浜音祭り2019」では、ジャンルや知名度の違いはもちろん、障害の有無までも超越したユニバーサルデザインを目指して様々な取り組みがなされます。前回の「スーパーユニバーサル」を継承し、「クリエイティブ・インクルージョン」を掲げた今回は、遠隔で動かす分身ロボット「OriHime」を用いた新たな試みに挑戦します。ASL患者同士の集会を実現した実績のあるOriHimeであれば、外出が困難なほどの障害を抱える人も臨場感あふれるライブ体験を得ることが出来るでしょう。

障害者とフェスを繋ぐロボットの試みは、福祉に新たな風を呼び込むはずです。

横浜音祭り(ヨコオト)公式サイト(Yokohama OTOMATSURI)
https://yokooto.jp

分身ロボット「OriHime」
http://orihime.orylab.com

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

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