「境界知能」よりも「性犯罪者」のほうが叩きやすく消費しやすい

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以前「境界知能叩きが流行るかもしれない」と書きましたが、これが誤りになるかもしれない線が出てきました。標的として“上位互換”となる存在を見落としていたのです。境界知能よりも安心して叩ける完全な存在、それは「性犯罪者」です。

念のため書いておきますが、当記事に性犯罪者を擁護するような意図は一切ありませんし、頭ごなしに「叩くな」と批判するものでもありません。直接与えるトラウマとその倍以上の重荷を背負わせる性犯罪者など、好んで擁護する人間はいないでしょう。だからといって、その“異常”な性犯罪者を叩いていれば“正常な人類”として扱ってもらえるかといえば、違いますよね。ただ事件と犯人を“消費”するだけで恰(あたか)も社会正義を遂行した気になれるムーブメントは、一時の快楽と引き換えに思考の単純化と精神の退行を招く「情報ドラッグ」です。

消費された「小児性愛者殺し」

アメリカのテキサス州で前科持ちの小児性愛者の男が射殺される事件があり、その犯人が逮捕されたとニュースになりました。犯人は未成年者を装って男を呼び出し、車越しに射殺して逃走したそうです。動機については「当局は性犯罪の防止が不十分だ」「子どもに害を及ぼす小児性愛者から金を奪って傷つけてやりたい。警察が何もしてくれないなら自分で殺せばいい」と供述しており、担当検事は「被害者の好悪に関わらずわが国は法治国家。気分次第で判事や陪審員、死刑執行人になれる人など存在しません」と厳しく糾弾しました。

ネット上では「よくやった!」「まるでバットマンや必殺仕事人だ!」「是非日本でもやって欲しい!」と犯人を称賛する意見が溢れました。また、「処罰をしっかりしていれば起きなかった」と犯人を擁護する声や、「仕事が無くなるから必死なんだろ」と警察や検察を中傷する者も出ています。勿論、担当検事のように私刑を咎める意見もありましたが、ほとんどは「善意の市民が悪漢を射殺したスカッと事案」として“消費”されていきました。

当然ながら性犯罪者に保護すべき要素など皆無で、そもそも咎人でありパブリックエネミーです。境界知能に比べれば由緒も歴史も段違いで、誰でも安心して石を投げられる“優良物件”として古今東西認められています。刑務所の囚人社会では性犯罪者はカースト最底辺に位置付けられますし、宮崎勤報道は過激なオタクフォビアを呼び起こし今の40代辺りを直撃しました。「性犯罪者予備軍」のレッテル貼りは極めて強烈で反撃も受けにくい人格攻撃です。ハンデは自業自得ともとれて、弱者と位置付けることすら躊躇われる存在は、境界知能など足元にも及ばぬ“最良のターゲット”といえるでしょう。

加えて、性犯罪者は他の属性とも両立しますし、別のヘイトを煽る呼び水にもなります。知的障害者が性犯罪の容疑者として捕まった日には、「それみたことか」とばかりにアンチ知的障害がしゃしゃり出ることでしょう。

本物は捕まらない

ところで、性犯罪者にはどのような人が多いのか、どのようにして性犯罪者が生まれるのか、ご存知でしょうか。最多は「過激な性的コンテンツに影響された男」や「小児性愛者」「性嗜好障害」…ではありません。奈良女子児童殺害事件で死刑判決を受けた小林薫(既に執行済)などは性犯罪者の中だと相当のレアケースです。性犯罪者の中で多数派となっているのは、教師・塾講師・聖職者・担当医など、被害者(男女問わず)にとって近しく目上の大人です。

加えて申し上げますと、“捕まってくれる”だけでも親切なほうです。本物の性犯罪者は絶対にバレないよう十重二十重の対策をしており、社会的地位も保ったままのうのうと生活しています。証拠を残さない、口封じをする、知識の疎い相手を狙う、取り巻きを増やしておく、ほとぼりが冷めるまで雲隠れする、などといった方法で発覚を防ぎ泣き寝入りへ持ち込みます。

ここで幾つか実例を挙げてみましょう。いずれの性加害者も逮捕ないし訴訟を受けてはいますが、それまでの期間は決して短くなく、多くの被害者を生んできました。

子どもばかりしつこく狙う
強制わいせつ罪などで逮捕されたT男は、4年間で計27人もの被害者を出していました。被害者はいずれも6~10歳の児童で、T男は言葉巧みに自宅へ連れ込んでわいせつ行為を繰り返していたのです。性知識に明るい筈もない年代の児童ばかり狙っていたことになりますが、これこそが4年もバレずに潜伏できた要因でしょう。たった1人の被害児童が親に告発したことから一気に逮捕へ至りましたが、裏を返せばそれまで口封じがうまくいっていたことにもなります。

業界の偉人がハラスメント三昧
K郎は、その業界ではトップどころか偉人と言っていいほどの業績を誇る大人物でしたが、裏では多くのセクハラやパワハラを働き続けていました。社内どころか業界全体への影響力も凄まじかったため、告発に対して有形無形の圧力がかかっていたことでしょう。地位と取り巻きによって長い間黙らせてきたK郎ですが、元社員によってついに訴訟を受け、表舞台から退くことになります。しかし、社内では未だにK郎の影が蠢いているといわれています。

所属する病院と結託
聖路加(せいるか)国際病院で患者のメンタルケアを担当していた牧師(チャプレン)のG太は、自身の担当する女性患者に性加害を働いていました。これを告発しようとすると、病院はG太に味方し、なんと必要な治療を勝手に打ち切ろうとするドクハラまで加わります。余程可愛がられていたのか、病院や教団はG太の肩を持っており、告発を揉み消されてもおかしくない状況でした。被害女性は警察署など様々な外部機関を頼り、どうにか訴訟まで漕ぎつけます。

他にもよくあるのが「ストーカーのでっち上げ」だそうです。直談判などで出向いた被害者を仲間が呼び止め、その隙に警察へ通報して逆にストーカー被害で訴える方法です。このように被害者の立場を著しく不利にしておいて、口封じしてしまうのです。

このように悪辣で狡猾な性犯罪者は世界各地に存在しますが、そのような“本物”は却って性犯罪者としてイメージされにくくなっています。本気で性犯罪と向き合う意思も覚悟もなく、ただ処罰感情という本能を満たせるかどうかでしか物事を考えていない人々は、仲間も人脈もない癖に迂闊で弱い“少数派”を性犯罪者のステレオタイプとして消費するのが精一杯です。

では、実際に性犯罪の関係者と接触している人はどのような生活をしているのでしょう。その一例として、東京強姦救援センター(TRCC)の織田道子(おりた・みちこ)さんが取り組む性被害者への擁護活動を取り上げてみましょう。

実際の性被害者支援の一例

聖路加国際病院の裁判に伴うシンポジウムで、織田さんはTRCCの活動や性加害者のやり口について話しました。前述した「ストーカーでっち上げ」も、織田さんの身近で起こったケースとして同シンポジウムで語られており、「不利になった加害者側がほぼ確実にやる」とまで言い切られています。

さて、TRCCは報酬がほとんどないボランティアに近い団体にも関わらず、相談員や医師や弁護士などといったスタッフは厳しい適性チェックを受けた女性だけで組まれています。主に求められるのは「常に被害者の側に立ち続ける」こと(加えて、対等な関係を築くこと)で、特に弁護士は「加害者側の弁護をした経験がない」ことも採用基準となっています。少しでも被害者を疑うような人はTRCCに必要ありません。

被害者の言い分だけを聞くスタンスをとっているのは、こうでもしないと頼られないからだと思われます。性被害者は往々にして「信じてもらえないのでは」「お前にも原因が…と言われないか」といった不安を抱えているものです。近年、ある町議の性被害告発が虚偽だったと発覚する事件もあり、実際に受けた性被害を訴えるのは今後ますます難しくなっていくことでしょう。であれば尚更、TRCCのような考え方をする相談先が必要となってきます。

ただ、TRCCの目的はあくまで「被害者の立ち直りを支える裏方」であって、加害者を叩きのめすことではありません。「裁判では解決しない」という考えから本人が強く望まない限り裁判を勧めることはなく、裁判で予測されるリスク(生活が裁判中心になること等)を必ず伝えたうえで判断させるくらいです。ましてや、復讐行為は本人にとって却ってマイナスにしかならないので絶対に止めるそうです。

相談に来た人から「理不尽な体験で心が折れて意欲が湧かない」「話がズレたり攻撃的になったりする」「同じ意見でなければ相談相手を否定する」といった態度を取られることもありますが、性被害が下地になっている以上仕方のない事と割り切っています。それでも被害者が前を向いて生きていけるよう寄り添っていくのがTRCCの役割です。

TRCCはほんの一例ですが、実際の性被害支援とはこのようになっています。正義感や処罰感情を満たすために報道を消費したり、気に入らない人物や表現などを性犯罪に絡めて中傷したり、そのような人々とはレベルが違うのです。


参考サイト

子どもを装い小児性愛者を呼び出して殺害「警察がやらないなら自分で殺す」
https://news.livedoor.com


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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