そのうち分娩室まで乗り込みかねない「アンチ障害者」たち

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Photo by Jonathan Borba on Unsplash

X(旧Twitter)の片隅では障害者ヘイトやミサンドリーなど、教養がない割に思想だけはべらぼうに強いアカウントが日々持論を熱く展開しており、それに一定数のファンが付いている奇妙な現実があります。片隅とはいいつつも、何かの拍子に浮上してくるので「もうブロックしちまったよ」という方も多いのではないでしょうか。鍵垢(非公開にすること)にせず開けっ広げにするあたり自分の意見(笑)を多くの人に見てもらいたいのでしょうが、下品な炎上マーケティングでしか己の承認欲求を満たせない生き様も晒していることに気付いていないのでしょうか。

それで、例のアンチ障害者アカウントがまた吠えていました。横浜の施設コンフリクト問題から波及して鮮烈デビューを果たした彼は、大通報祭りからの凍結を食らったのかサブアカウントに転生してまで「発信する価値のない妄言」を垂れ流しています。今回はダウン症についてで、「出生前診断で分かるのに、その上でダウン症児を産むとはけしからん!」みたいなことを書いていました。

産むといえば、「産むなら健常児がいい。障害児と分かって産む奴などいない。これが現実であり本音なんだろ?」とか何とか訳知り顔で語る有象無象も見かけました。彼ら/彼女らはそのうち、ネットで喚くだけでは満足できなくなって、無関係な妊婦の分娩室まで乗り込んでいくのでしょうか。そんな行動力はないと思いますが、願望だけはいっちょ前に持っていそうです。

出生前診断万能論

出生前診断の何がそんなに偉いのかといいますと、ダウン症に代表される先天性疾患が産む前の段階で分かるという点にあります。出生前診断には大きく分けて2タイプ、NIPTなど胎児への影響が少ない代わりに確定ではない「非確定的検査」と、羊水検査など確実な診断が出来る代わりに胎児への影響が懸念される「確定検査」が存在します。

先天性疾患が発覚すれば「陽性」となりますが、確実な結果が出ない非確定的検査では「偽陽性」という、いわば予想ミスが発生することもあります。精度が高いとされるNIPTですら3%弱で外れるとされており、非常に稀なケースでは「偽陰性」、すなわち検査では何もなかったのに産んだらダウン症だったことさえあったそうです。

それで、輩がよく持ち出すのが「陽性と分かった妊婦の9割近くが中絶を選ぶ」というデータです。これを根拠に「障害児と分かって産む奴はいない!」「障害児はこの世に必要ないという証明だ!」などと喚いているわけです。

狭すぎて視野とすら呼べない視野の彼らと違い、「出生前検査認証制度等運営委員会」では異なる視点での見解を示しています。曰く、「あきらめた方が多い背景には、妊娠継続を希望する方ははじめからNIPTを受けない傾向があるためと思われます」。つまり、最初から一貫して産むつもりならそもそも出生前診断を受けない、高齢出産など不安や迷いのある人が出生前診断を受けるから中絶率が高く出るという視点です。「出生前~」は10万人の追跡調査をしてデータにまとめた上で述べていることも付け加えておきます。

出生前診断をもとに妊娠を継続するにせよ中絶するにせよ、その判断へ至るまでには部外者になど推し量れない様々な葛藤や苦悩が存在します。中絶に至った妊婦をダウン症批判への「叩き棒」として利用するのは、生命を左右する重大な決断を迫られた人への冒涜でもあります。何でも叩き棒にするのは露悪系の習性といえばそれまでなのですが。

ちなみに、出生前診断では染色体異常や形態異常が分かるのですが、先天性の障害全てが分かるほど万能ではありません。出生前診断では陰性でも、出産時のトラブルで脳性まひになったり数年後に発達障害と分かったりすることは十分あり得ます。

夢見る自由すら否定したいお年頃

赤ちゃんは健康に生まれて欲しいものです。そう思うのは当たり前ですよね。しかし、その当たり前すらも「健康な子を産みたい。それってつまり、障害児は産みたくないってことだろ?」と解釈して叩き棒にする輩が存在します。敢えて障害児を産みたいのかと問い詰めれば黙ると分かっているのもなかなか嫌らしいですね。最も内心を縛られるべき人種が他人の夢や理想に口出しするなど滑稽ですらあります。

例え将来叶わなかったとしても、夢見ること自体に制限はありません。「健常児を望むのは、障害児が不要だからだ」と解釈するのは、「『将来なりたい職業ランキング』に入らない職業は必要ない」と豪語するようなものです。見たいものだけを見て信じたいものだけを信じ生きてきた“偏食児童”には通じない話かもしれませんが。

最後に、NIPTに詳しい「ヒロクリニック」のコラムから引用して終わりにします。「妊娠出産は母体の命や健康と今後の人生に直結した問題です。メディアの情報や一部の偏りある意見に耳を傾ける前に、パートナーと丁寧に話し合い最良の答えを導き出すことが大切です」

参考サイト

出生前診断でダウン症と分かったら?倫理的な問題と中絶
https://www.hiro-clinic.or.jp

NIPTを受けた10万人の妊婦さんの追跡調査
https://jams-prenatal.jp


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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