勘違いの「アットホーム感」は通所型施設にとっての劇毒である
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B型事業所など通所型の障害者施設では、往々にして「アットホーム」を勘違いしたような言葉や行動が表出しがちです。「第二のおうち」「就労より居場所」を目標にしている施設も多いでしょうが、実際に居場所となっているかどうかを判断するのは入所者の方であることを忘れないようにしたいものですね。
勘違いのアットホーム感、言い換えれば「里親気取り」が常態化していると、職員と利用者が本来対等な大人同士であるという当たり前のことを忘れてしまいます。その結果、不適切なアプローチへの歯止めが利かなかった事案へと容易に繋がります。
施設への送迎車の中で、支援員と運転手が性的な内容の会話をした挙句、女性の利用者に性的な質問を投げかけた事例が実際にあります。これはれっきとした性的虐待にあたり、利用者はしばらく施設に通えなくなったそうです。支援員は「仲良くなるために卑猥な質問をした」と証言しました。
猥談で盛り上がるというのは、それほど「アットホーム」であることを意味します。「アットホーム」な環境に浸かっているあまり、利用者の前で卑猥な言葉を発するのに抵抗が無くなったのでしょう。当然、性的虐待にあたるかもしれないという観点も欠落しています。
誤ったアットホーム感の浸透した施設では、彼我の侵されざる領域を意識し認識することが出来なくなります。その結果、猥談や陰口で盛り上がったり、利用者に嫌味を言ったり、イジり行為をしたりといった素人未満の行動を日常的にやらかすようになります。
そういった虐待の温床へと落ちぶれないためには何を意識すればいいのでしょうか。ひとつ確かなのは、「利用者への子ども扱いをやめる」ことです。特に成人の知的障害者に対し「名字被りなどの理由もなしに下の名前、酷いとあだ名で呼ぶ」「赤ちゃん言葉や幼児言葉で接する」などの行為をしている職員は、アットホームを盛大に勘違いしています。
成人の知的障害者への子ども扱いは「分かりやすいコミュニケーション」と「低年齢向けのアプローチ」を混同しており、業界に入りたての新人がよく犯すミスなのだそうです。つまり、初歩的なミスがいつまでも直っていないことになります。問題を起こさない訳が無いですよね。
繰り返しになりますが、「居場所」を目指したいのであれば、それをジャッジするのは利用者の側であることを忘れないようにしてください。そもそも施設とは、職員にとっては「職場」ですし、利用者にとっては「施設」ないし「作業場」です。決して「家庭」にはなれません。