自虐は悪用される
暮らしPhoto by Zanyar Ibrahim on Unsplash
「自虐」と「自爆テロ」は紙一重で、その加減が出来る人は少ないです。というか、この世に一人もいないのではないでしょうか。特に自分の属性や特徴を絡めた自虐は、同じ属性や特徴を持つ不特定多数を巻き込む自爆テロに化けやすいと思います。私は長い事これを、出来もしないことに挑む人の傲慢さに因るものだと考えていました。
ところが最近、新たな視点が提供されたのです。自虐が悪用されるという概念です。最初は純粋な「自虐」だったのが、多くの人に広がって共有されていくにつれ、「こういう属性は馬鹿にしていいんだ!」と山を降りてきたイノシシのような者までも惹きつけて「侮蔑語」に成り果てるという流れ。これが、自虐が悪用されていく仕組みです。
自虐が悪用され侮蔑語に成り果てるプロセスは、「片親パン」が好例となるでしょう。片親パンとは、ひとり親家庭の食生活を揶揄するネットスラングですが、その生まれは他でもない、ひとり親世帯の当事者による「自虐」からでした。TikTokなどでひとり親世帯を自称する投稿者が、山崎製パンの薄皮クリームパンなどを紹介したのが発祥とされています。しかし、広まってからの顛末は先述の通りで、ひとり親世帯を侮辱するための言葉に成り下がりました。
語気だけは強いスラングの数々が生まれ愛用される背景には、様々なものがあります。例えば、自分は“下”ではないと安心するためだとか、予防線として自虐的に用いるだとか、或いは不特定多数を不快にしてやりたいという嫌がらせのマインドなどです。その最たるものが「チー牛」でしょう。あれは生まれの背景などもいつの間にか上手にロンダリングされてしまいましたね。
片親パンにしろチー牛にしろ、ある意味食べ物を粗末にして遊んでいるようなものです。山崎製パンやゼンショーホールディングスなどにはガツンと怒って頂きたいのですが、デリケートな背景に触れず事なかれ主義を貫きたい気持ちもまた分からないでもないです。本当は自社製品をオモチャにする連中を𠮟るべきなのですけれどもね。
私はコンサルタントではないのでどう言えばいいかは分かりませんが、とりあえずこう言ってやればいいのではないかと思います。「発言者の個人的な好悪や価値観に基づく侮蔑的言動に弊社の商品を用いることは、弊社商品のイメージを著しく損なうだけでなく、特定の属性への侮辱や差別に弊社を加担させる卑劣な行動です。弊社や弊社の商品を巻き込むことなく、個人的な好悪は個人の範囲で示すに留めてください」など如何でしょう。
参考サイト
「親ガチャ」「片親パン」…若者の間で格差示すネットスラングが先鋭化 差別助長に懸念
https://www.sankei.com
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