ポリコレ棒と反DEIの、戦争史料をも巻き込む内戦模様

暮らし
Photo by Kyle Cleveland on Unsplash

第二次トランプ政権が発足してから、「反DEI」の動きが活発になっているそうです。DEIとは、ダイバーシティ(多様性)エクイティ(公平性)インクルージョン(包括性)をまとめたもので、よく「ポリコレ」と一緒くたに扱われています。“守護範囲”も似通っていますし、混同されるのは仕方がないといいますか、表向き改名した程度にしか思えないのが正直なところです。

その反DEIの動きとして、国防総省のウェブサイトから戦争史料が削除された件が挙がります。第二次世界大戦の頃、米軍が硫黄島を制圧し星条旗を掲げたという写真があるのですが、これにアメリカ先住民の海兵隊員も映っていました。かつて「先住民の貢献ぶり」などと国防総省自身が褒め称えていたのが、その先住民を理由に手のひら返しで削除されたというのです。

言ってしまえば、かつて「ポリコレ棒」を担いで暴れていた人々と、「ポリコレ疲れ」の象徴でもあるトランプ周りが繰り広げる“内戦”です。しかし、トランプ陣営も“暴徒”だけを咎めていればよかったものを、史料や人事といった領域に手を出して(恐らく)無関係の人々ばかり締め上げているのは何なのでしょうか。戦争で真っ先に犠牲となるのは無関係の弱者からだとよく聞きますが、その流れで戦争の史料まで犠牲となるのはなんとも皮肉な話です。

飽くまで“人”に疲れたのだというのに

もはやポリコレは人類の尊厳だとかそういった高尚なものではなく、ただ暴力と破壊と選民主義を振りまくだけの厄介者としてイメージされる界隈と成り果てました。作品や文化を雑なアレンジで破壊し、“守護範囲”に含まれない層への差別を奨励すらしたのが、ポリコレを掲げた諸々の運動による成果です。

人の尊厳を謳いながら、幾らでも尊厳を損ねて良い層を定義づけし線引きするような者が騒いでいては、“疲れる”のも当然でしょう。「ポリコレ疲れ」とは、そうした“人々”に対する辟易です。普段から怒って暴れて、守護範囲と被差別層の線引きをやり直すだけの思想家など、接していて疲れるのは当然でしょう。

ところが彼/彼女らときたら、己の行動や人間性に対する疲れだとは断固として認めず、「ポリコレ」そのものへの疲れだと解釈を捻じ曲げて新たな怒りを自己生産しています。曰く、「差別表現をせず他人を尊重するのは当然のことであって、何ら疲れる要素はない。ポリコレを自然に守れず疲れたなどと抜かすのは惰弱だ」

おまけに反DEIも“人”への疲れと理解していないのか、人を咎めるのではなく「ポリコレ」自体への逆張りに傾倒しています。信奉する内容が逆なだけで、行動そのものはポリコレ棒を振り回していた暴徒と変わりません。だからこそ、何の咎もない史料に飛び火したのです。

多様性を謳いながらその実は「多様性を認めない多様性」の体現に過ぎない人々と、主張の内容が逆なだけで暴力性や滅茶苦茶さは変わらない人々。どちらも強固かつ膨大な被害者意識を内包しており、本気の刺し合いは依然続くでしょう。他の罪なき諸々を巻き込みながら。

せめて、特定の属性の保護に留まらず「全ての人のあらゆる尊厳が守られるべき」「尊厳を損なわれていい人や層などない」という領域に至っていれば、より多くの人がポリコレの恩恵にあずかり、反DEIなどでウザがられることもなかったでしょう。しかし現実は、「自分だけ他の尊厳を損なっていい特権」すなわち「多様性を認めない多様性」を希求し囲い込んでいたに過ぎませんでした。

エノラ・ゲイ号も槍玉に

ところで、トランプ体制下の国防総省は「エノラ・ゲイ(Enola Gay)」も規制の対象にしようとしているのではとまで報じられました。エノラ・ゲイとは広島に原爆を落としたB29爆撃機のことで、人類史ではあらゆる意味で重要な立ち位置に居り今も公開されている機体です。規制の理由は「ゲイ」が含まれているからだそうです。

なお、エノラ・ゲイの名の由来は、機長の母親であるエノラ・ゲイ・ティベッツからきています。戦中当時、gayは「陽気な」「快活な」といった意味の形容詞で使われることが多く、「陽気なエノラ」という意味もありました。同性愛としての意味が主流になったのは戦後のことだそうです。

英辞郎によれば、gayには「陽気な、快活な」「派手な、鮮やかな」「呑気な、屈託がない」といった意味もあります。ただ、いずれも「古めかしい表現」が附いているのですが。

参考サイト

米国防総省、硫黄島の星条旗写真を削除 DEI認定か
https://www.nikkei.com

gayの意味・使い方・読み方|英辞郎on the WEB
https://eow.alc.co.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください