発達障害者の家族、同僚などの皆様へ、『困り事の主体を整理すれば物事はそんなに難しい物でない』(『発達障がい~神からの贈り物~』第45回)
発達障害出典:Photo by Courtney Cook on Unsplash
『発達障がい ~神からの贈り物~』 第45回 <毎月10日連載>
先日の自助会で、『当事者と一緒に暮らすのに困っている』という意見があったのでそのような時にどんな風にアドバイスしているかについてお話ししたいと思います。
身体障害者、例えば車いすで生活している人と生活や仕事を共に行うにあたっての状況を想像してみてください。『彼が歩けないから困っている』と簡単に周りの人は言うでしょうか?身体障害者も様々で、一時的に足が動かない人もいれば、片足、または両足共に失っている人もいます。しかし、どんな人であれ、歩けない人を無理やり歩けるようにしようとするでしょうか(本人の意思がないのに歩くことを強要するのは既にその時点で虐待となっています。)?きっと、歩けないなりにどうすれば生活や仕事がしやすくなるかを考えませんか?まさか、車いすから10歩くらいなら歩けるなら、どこにでも歩いていけるだろう、なんて言いませんよね。
これが精神障害、強いては発達障害者への対応となると、できないことを強要することが良く見られます。発達障害は全くできない事では無く苦手なことが多く存在する場合が圧倒的です。確かに、全くできないわけではないが、人より時間がかかったり、その行動に強くストレスを感じたり…、このあたりを社会になかなか理解してもらえないように思います。
さて、私が普段ピアカウンセリングで行っている内容は以下です。例で、発達障害児の親から、『子供が大人しくしていられなくて、授業を座って聞けなくて困っている』という内容を受けたとします。まず最初にすることは、何故授業を座っていけないのかから考え出します。ある一定の授業の時だけできないのか、またはある先生の時だけだめなのか、休み明けに弱いのか、などなど探り、できる環境を見つけ出します。そしてそのあたりを学校と情報共有しながら協力を得て行けば、改善は大きく望めます。学校や先生によって対応はまちまちでしょうが、私たちが育った昭和の教育環境からは大きく理解が進んでいます。しっかり話し合っていけばきっと道筋は見えてくるでしょう。
そして次の段階で、そのことで誰が困っているのかを明確にしていきます。『子供が言う事を聞いてくれないから私が恥ずかしい思いをする』というのは親の困り事であって、子どもの困り事ではありません。子供も同様に『自分が授業に集中できないのは何故だろう』と悩んでいるのならそれはその子供の悩みごと、困り事であって、親が困る必要はありません。私のコラムでこれまで何度も述べてきましたが、人は失敗を積み重ねて、そのことに向き合って一歩ずつ成長していきます。子供が困っているということは一所懸命成長しようとしている時ではないでしょうか?見ていて手を貸したくなる気持ちは共感できますが、子どもが困らないようにレールを敷き続けて大人になってしまったらどんな事態が待っているでしょう?実際に社会人になった発達障害者の家族からの相談も多く耳にします。しっかり自分のことに困れる子供の方が将来はきっと明るくなると思いませんか?
仮に、子どもはそれほど困っていない、というのであれば困るまで放っておくことを進めています。先ほども言ったように親の体裁で子供を躾けたってただ単に無理やり強制されているだけで、子どもは強いストレスを抱えやすい物です。本人が自分と向き合いだすまで、時間がかかるかもしれませんが、成長とは時間がかかるもの、しっかりその時を待つことが大切ではないでしょうか?
そして、最後の段階として、親御さんの毎日の生活を振り返ってもらっています。現在はコロナ禍の影響もあり、生活は不安定なものかもしれませんが、親御さん自身が毎日楽しく過ごせる環境を探すことを進めています。子供たちもやがては大人になる、その時のモデルとなるのは誰でしょう?きっと周りにいる大人たちではないでしょうか?毎日暗い顔ばかりして疲れ切っているとしたら、子どもたちはそんな大人になりたいと思うでしょうか?まして、子どもの障害が原因で暗い顔になっているとすれば、その子供の背中に抱えきれないほどの重石を背負わせることになってしまいませんか?先ほども触れましたが、大人になった当事者たちが親を喜ばせたいという気持ちに焦り、できもしない事や目先の結果にばかり囚われ、余計に事態を混乱させている例を百例以上見かけてきました。彼らはできない自分が周りを不幸にしていると自分自身を責め続けています。余計に能力が阻害されてしまいます。
世の中は持ちつ持たれつ、お互い様、そんな気持ちで前向きに生きることできっとそれらの重石から解放されるでしょう。自分自身が楽しく生きられればきっと周りも明るくなるはず。失敗にくよくよするのでなく、前向きな失敗は皆で笑い合える、そんな環境だったら自然な能力が発揮されるもの。先ほども述べたように心を凍らせるようなプレッシャーの中で焦って行動したって失敗は増えるだけ。これは健常者も同じではないでしょうか?
このようなアドバイスをする私が、毎日暗い顔をしていれば、そんなアドバイスは大嘘になってしまいますよね。だから、私は普段から自分の興味のあるものにまっしぐらに飛びつき、毎日の人生を楽しむように心掛けています。そうしだしてからはるかに困り事は減り、周りとのコミュニケーションも楽になりました(もちろん、私を妬む人は一部存在しますが、そんな人はそういう疲弊した生き方をして頂ければ結構なので構いません)。
さあ夏本番です。今年は遊び足りていない人も多いと思うので、環境整備は必要でしょうが、折角の夏を楽しんでみてください。きっと何かの変化が現れるはずです。
発達障害