「障害からくる様々な行動」の理由を解説したポスターの話〜横浜からSNSで全国へ
ニュース 発達障害福祉の素人にはよくあることなのですが、雑踏や電車内などで重度の障害者を見かけると身構える場合が多いです。身構える程度なら可愛いもので、より性悪な者は障害者の様子を盗撮したりレポートを5ちゃん等で報告したりします。
さて、素人に“奇行”と見做されがちな行動について、去年4月に横浜市港南区の自立支援協議会が「あたたかく見守ってほしい」と啓発するポスターを掲示しました。ポスターは港南区の様々な場所へ進出し、1年が経った今では区内のバスに張り出されるようになり、リニューアルまでされた模様です。未だ横浜市港南区より外には出ていないようですが……。
6つの行動とその理由
ポスターでは障害由来の行動で理解を得にくい6つの行動と、その行動をとる理由がイラスト付きでわかりやすく解説されています。病院の待合室というシチュエーションで描かれています。
①ぴょんぴょんぐるぐる
「感覚を楽しんだり緊張や不安を解消するために、何度も飛び跳ねたりグルグル回るなど、同じ動きを繰り返すことがあります。」
いわゆる常同行動で、感覚の再確認をする意図もあります。
②うろうろ
「気持ちが落着かない時、歩きまわって平静を保とうとすることがあります。何もしないで待つことが苦手な人もいます。」
昔通ったB型作業所でも居ました。歩き回るというより走って狭い室内を往復していましたね。
③ぶつぶつ
「独り言を言いながら趣味の世界を楽しんだり、出来事を繰り返し思い浮かべて気持ちの整理をしていることもあります。」
いわゆる独語(独り語)です。
④大きな声
「聴覚の過敏さから耳を塞いだり、自分の声で落ち着こうとして大きな声を出すことがあります。先の見通しが立たず不安になっている場合もあります。」
障害者であっても成人が急に怒鳴るのは擁護したくないのですが、一応こういう理由があるみたいです。怒鳴るのは威圧行為なので、そこまで考える余裕はないかもしれませんが。
⑤いつもの場所
「特定の場所にこだわることがあります。いつもの場所だと安心できます。」
そのこだわりの席に座れない状況だと……あまり考えたくはないです。
⑥集める・触る・整頓する
「コレクションのようにものを集めることにこだわる人もいます。チラシはデザインが豊富で紙質も様々なため魅力的です。」
病院の無料冊子ならいいのですが、冷凍食品コーナーだと……やはり考えたくはないです。
なお、バスや電車の中では広告サイズに直され、記載されているのは「ぶつぶつ」と「大きな声」だけになっています。電車広告向けに改造された感じですね。
職員や障害当事者らが案を出し合った
啓発ポスターを作る計画は一昨年の7月からスタートしました。区の職員と、子が障害を抱える親たちとでポスターのコンセプトについて検討を重ねたようです。そうして厳選された6つの行動を、イラストの上手い区職員が描き上げて完成しました。
イラストを区職員が手掛けたのは予算の都合だけでなく、手作り感を演出するためでもありました。その結果描きあがったポスターは、決して上手いと言えないながらも独特のゆるさを醸し出しております。
掲示から4か月後、ポスターの画像がTwitterに上がり、それが拡散されました。現在もなお港南区外での貼り出しはしていないのですが、ポスターの存在自体はSNSを通じて全国に知れ渡りました。
港南区内では好評だが、ネットの声は賛否両論か
啓発ポスターを扱う港南区では、「わかりやすい」と住民から高評価で迎えられています。全国に知られるきっかけとなったツイートも、7万もの「いいね」を得ました。不可解だった行動の理由が分かるだけでも不安感は著しく減りますからね。しかし、必ずしも称賛の意見ばかりではありません。
中には「理由を知っていても、つい身構える」「健常者側の防衛行動も認めてほしい」「昔障害者から暴力を受けた自分に言わせれば〜」「結局何をしてくるかはわからない」といった意見もあります。行動の理由が分かる安心感があるとしても、その行動が他人へ迷惑をかけるものだった場合、見守るどころではないでしょう。
私ならば、「大声を出す」ことの理由が聴覚過敏などと分かっていても、実際に見かけると「公共の場で怒鳴り散らすなんて非常識だ」という思いが先行します。「怒鳴り散らして脅かす大人」が避けられることに健常も障害も関係ないですよね。
迷惑にはならない範囲の「ぴょんぴょんぐるぐる」「うろうろ」「ぶつぶつ」などは、理由を周知する価値は十分にあります。行動と理由の因果関係がはっきりしていれば、奇異に思うこともありません。健常者の側から無知ゆえに迷惑をかけることも減るでしょう。
まとめ
横浜市の一部でのみ展開されていた障害啓発ポスターですが、独特かつ親しみやすい絵柄や簡潔で分かりやすい説明からTwitterを通じて全国的に有名なポスターとなりました。
行動と理由の因果関係が周知されれば、無知からくる不適切な反応も減るのではないかと思います。同時に、急に大声で怒鳴るような公共の場に相応しくない行動に対しては当事者側の工夫も求められてきます。それが障害者と健常者の歩み寄りではないでしょうか。
なんにせよ最優先されるべきは知識の共有化です。横浜の啓発ポスターは分かりやすさと馴染みやすさの2点からして模範的な取り組みであると言えるでしょう。
参考文献
あたたかく見守って! 障害由来の”6つの行動”を描いたポスターが話題に、制作経緯は?|オトナンサー
https://otonanswer.jp
うろうろする訳は? 「理解しやすい」障害啓発ポスター|話題|カナロコ
https://www.kanaloco.jp
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