嘘をつくなと育てられた発達障害者の思わぬ弊害③
発達障害◀過去の記事:嘘をつくなと育てられた発達障害者の思わぬ弊害②
前回までで私がいかに“やべぇ奴”だったか、変わろうとどんな努力をしてきたかをお話してきました。今回は“ド”正直な私が建て前を使えるようになるまで、どんな考え方を学んできたかをお話しようと思います。
腑に落ちる大切さ
私は色んな事を学んだり、教えて頂くうちに自分を見つめ直す機会が増えました。すると、私は変なところで頑固だったり、不思議と曲げられない信念があることに気が付きました。一般的には「こだわり」と呼ばれるものですが、特性上それを変えるのは困難でした。なので、その部分は変えずに考え方を変えることにしたのです。色んな考え方を知り、その中で自分にフィットするモノを選びます。嘘だと捉えるかどうかもその人の考え方次第だと気づいたのです。考え方を選ぶ時、大切にするようにしたのが自分の“腑に落ちる”感覚です。頭ではいくら良い考え方だなぁと思っても、嘘が吐けない私は心にフィットしない考え方を持つことは出来ないからです。ある考えを持ちたいとたいと思っても、それが腑に落ちなければどこかに歪が生じてバランスを失います。なので私は“腑に落ちる”事を大切にしています。
“言わない”と言う選択
“言葉が足りないのと嘘を吐くのは違う。”どこで聞いたかは忘れてしまいましたが、これは使える!と思いました。今までいかに言い方を工夫するかで試行錯誤していた私でしたが、そもそも“言わない”という選択があることに気づいたのです。複数人いる時なら、「変な髪形にされたー」や「この服変かな?」に対して一人くらい何も言わなくても気付かれにくいという事です。この時ひとつコツがあって、それは必ず笑顔でいることです。「ニヤニヤ」してると怒られるので「ニコニコ」するのがオススメです。ある程度周りの人が話を進めてくれるので、もしこちらに意識が向いても「どこの美容院?」「どこで買ったの?」など話題を逸らしていけるワードから始めても不自然になりにくいのです。 更に“言わない”という事は部分的に言わないと言う選択肢もあるということに気が付きました。つまり“心の中で言う”のです。例えば、「美味しい?」と聞かれたら、自分でその料理の美味しいと思う部分をみつけ、余計なことは言わず、「(上のネギが)美味しい」と言うのです。「この服変かな?」と言われたら自分でその服の可愛い所を見つけ、余計なことは言わず「(ボタンが)えー、可愛いじゃん!」とかいうことです。もし、そのとき罪悪感を感じたら今度は声に出してしまえばいいのです「あー、このボタン可愛いねー」と。
言葉は記号
これはある心理学者の方が言っていて印象に残ったのですが、「言葉は記号だ」ということでした。例えば女子がよく「可愛いねー」というのは本当に可愛さについて同意を求めているのではないということです。この場合は「私に敵意はありますか?」と聞いているのだそうです。つまり「可愛い」と答えることで「敵意はありません」と言ってくれるのを待っているのです。つまり、「敵意ある?」「敵意ないない」という意味のやりとりを「可愛い?」「可愛いね」に置き換えているだけだというのです。この考え方を知った時、生きていくのがかなり楽になりました。これを当てはめると殆どの社交辞令は「今後もよろしくね」「こちらこそよろしくね」の記号です。 これまでに培ったノウハウと、この考え方を組み合わせた結果、私がコミュニケーションで困ることは無くなりました。こうして私は晴れて“やべぇ奴”を卒業できたのです。心の中を覗かれたらまだ充分“やべぇ奴”ですが、心の中は他の誰でもない自分だけのモノです。皆さんも自分の心を大切にしながら良好な関係を築いて下さいね。
三回に渡ってお届けしてきましたが、いかがでしたか?ここまで色々書いてきましたが、結局雑談などの場面では、別に特別なコミュニケーションスキルなど必要ないと思うのです。大切なのはその人と仲良くしたいと思う気持ちがあるかどうか、また言葉を記号としたときに相手がどんなシグナルを出しているのか読み取る力ではないでしょうか?“相手はどうしたいのか、自分はどうしたいのか”その間を埋めるのがコミュニケーションです。お互い気持ちよく過ごせるような表現の仕方は学んでいく必要があると思いますが、これはまた別の話。別の機会にお話できればと思います。
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