ディスグラフィアとは?その症状・兆候と原因と治療法
発達障害「ディスグラフィア」という言葉をご存知でしょうか?ディスグラフィアは「学習障害」のひとつで、文字を書くこと、特に文字を手書きすることに困難さを持つ症状のことです。日本語では「書字障害」と呼ばれます。話し言葉は普通に理解できますが、それを文字として書きとることが困難な障害です。ディスグラフィアは、読字障害であるディスレクシアにともなって発症することもあります。
ディスグラフィアの種類別の特徴
ディスグラフィアの人は、文字の体系やつづり方を認識することや、手や指など小さな筋肉の調整による運動に困難さを持っており、一貫性をもって文字を書くことが困難です。言語障害や注意欠陥障害などと症状が重なる部分もありますが、文字を書くことにおける学習障害のひとつです。
ディスグラフィアは主に以下の3つに分類されます
①失読症型
失読症型のディスグラフィアの人は、書かれた文字を見たままに書き写すことはできますが、大抵の場合、スペルミスをともないます。手や指を使う微細運動の速度の測定結果から、この症状は脳の障害が原因でないことが分かっています。
②微細運動障害型
微細運動障害型のディスグラフィアの人は、異常な筋肉の緊張などが原因で、指先や手先の筋肉を使う細かい運動に困難さを持っています。ごく短い文章であれば、文字の並びを意識して書くことができますが、普通の人よりも多くの時間と努力を必要とする上に、手に関節炎に近い筋肉の緊張を生じることもあり、文字を長時間書くことが困難です。
また、失読症型の場合と異なり、微細運動障害型の人が書き写した文字は判読しづらく、絵も上手く描けません。
③空間認識障害型
空間認識障害型のディスグラフィアの人は、空間認識に困難さを持っています。
微細運動障害型と同じく、空間認識障害型の人書き写す文字は判読しづらく、描く絵も判別が困難です。
ディスグラフィアの症状と兆候
子どもが授業に集中でしていない、やる気がない、配慮に欠けている、運動機能に遅れがあるという見た目や思い込みから、ディスグラフィアの症状はしばしば見逃されてしまいます。
次のような症状が幾つも当てはまる場合はディスグラフィアである可能性があります。
・短い文章を書くだけで指がけいれんする
・手首、腕、体、または用紙の向きを90度曲げる癖がある
・書いた文字を頻繁に消す
・大文字と小文字が混在してしまう (※英語の場合)
・文字の形と大きさに一貫性がない
・1つの文字を最後まで書き終えない
・線と余白をうまく使えない
・文字を書き写すのにかなり時間がかかる
・文章を書くときは細かい部分に注意がおよばない
・指摘されても同じ書き間違いを何度も繰り返す
・これから書く文字の並びを、あらかじめ頭の中でイメージできない
・読みやすい字が書けない
・紙の上にバランスよく字を配置できない
・考えながら書いたり、書きながら考えることが難しい(メモ取り、創作など)
・文字を書くこと自体が難しいため、つづりや作文が思うように書けない
・同音異義語が理解できず、どう書けば良いのかも分からない
・思ったことを文章にすることが難しく、場違いな言葉を使って表現したりする
・文字を書いている最中に痛みを感じることがある(指や手首や手のひらが痙攣する)
ディスグラフィアの原因
ディスグラフィアの原因は、生物学的には遺伝性の脳障害という説が有力になっています。具体的には、短期記憶の問題であり、文章を書くために必要な脳の部分が十分に発達しなかったことによるものとされています。それによって、指や手の微細運動、空間の把握に問題が生じ、文字を書くこに困難さを持つようになるそうです。
ディスグラフィアの治療法?
現在の所、ディスグラフィアに治療法はありません。そのため、個々の症状に対する対処療法がおこなわれています。字を書く手の動きをコントロールできるようにする訓練などもそのひとつです。教師にディスグラフィアの知識のある場合は、学校の授業において教育療法を採用することで効果を期待できます。その他には、記憶障害や神経の障害に用いられるような方法もおこなわれています。
ディスグラフィアは、その症状からも分かるように「ディスグラフィアであると診断する」こと自体が大変難しいのですが、その兆候がある子どもを学習障害専門施設で観察できれば診断は可能と考えられます。しかし、ディスグラフィアの症状を実際に目にすると、子どものやる気のなさや、作文嫌いなどが先に目についてしまいます。ディスレクシア同様、家族や周囲の大人が普段から注意深く観察し、本人の悩みを傾聴し、困り感に共感することがディスグラフィアを早期に発見するきっかけになります。
学習障害(LD)