発達障害の検査とは?~こんなことをします
発達障害出典:Photo by Arseny Togulev on Unsplash
近年、発達障害の知名度が向上し、一般の人々にも知られるようになってきました。インターネットで検索すると、簡易的なチェックリストがあり、誰でも簡単に自己診断ができるようになっています。
しかしネット上のチェックリストは、誰にでもあてはまるように作られているものもあり、それだけで自身が発達障害であるとは言い切れないでしょう。やはり専門的な検査を受けることがいちばんだと思います。
では発達障害の検査とは、いったい何をするのでしょうか?私の経験をもとにご紹介します。
医療機関や医師、および特性、年齢などによって、検査の内容は異なるため、あくまで一例です。
受診の経緯
まずは、私が専門の医療機関を受診することになったきっかけについてお話します。私は幼少期から物忘れがひどく、日常生活に支障がでていました。学校では、授業に必要なものをいつも自宅に置き忘れて𠮟られたり、持ち物を紛失して1日中探し回ったり、友人との約束を覚えておらず、当日になって連絡がきてから思い出す、といったようなことがほぼ毎日ありました。
そして大学4年生の春、就職活動が始まると、私の物忘れのひどさは明確な困りごととなります。説明会や面接の予定が複数あると、どれかを必ず忘れてしまってすっぽかしたり、面接に必要な履歴書やプレゼン資料を自宅に忘れてくるなどして、就職活動はまったくうまくいきませんでした。
私が新卒で就職活動をしていた時期は、空前の売り手市場だったこともあり、周囲の友人や同級生が次々と内々定を獲得し、就職活動を終えていくなか、私は一向に決まる気配がありませんでした。
なぜ受からないのか。なぜ、いつも同じ単純なミスを繰り返してしまうのか。追い詰められていた私は、インターネットで就職活動がうまくいかない原因を調べはじめました。そこで、あるWebサイトのタイトルが目にとまります。「あなたの就職活動がうまくいかないのは発達障害が原因かもしれない?」というものでした。
発達障害ってなんだろう?なんとなく気になったため、そのサイトにアクセスしてみました。私は、その内容に、読めば読むほど引き込まれていきました。そこに書かれてあった、ADHDの特性が不思議なほど自分にあてはまっていたのです。これは私のことを知っている誰かが、私について書いているのではないか?と思ったほどでした。
そこからは、就職活動がうまくいかない原因をさぐる、という当初の目的も忘れ、ひたすらADHDについて調べはじめます。子供のときから感じていた、わずかな、しかし確かな違和感の正体が、一気に掴めたような感覚がありました。
さっそく、発達障害の検査を行っている病院を調べ、電話で予約をとり、診察を受けることを決めました。
発達障害の検査
私の場合は、病院に行く前に、電話での問診がありました。年齢や性別のほかに、どのようなことで困っているか、いつごろから症状がでているか、困りごとの具体的なエピソードなどについて聞かれました。所要時間は15分ほどだったと記憶しています。
電話の最後に、診察の日はできるだけ保護者と同伴で来てほしい、と言われました。発達障害は、幼少期から特性がでていることが、診断基準のひとつでもあるため、保護者による証言を求められることが多いです。事情があって、同伴できない場合は、この限りではありません。
また、もし残していれば、小学校から高校までの成績通知表も持参するように、とのことでした。おそらく、学業の成績ではなく、不注意や多動、または対人のコミュニケーションなどにおいて、なんらかの問題があった場合は、通知表に"落ち着きがない"などと書かれている可能性があるため、それを確認するためだと思われます。
予約日を迎え、保護者同伴で病院に到着しました。診察では、事前に電話で聞かれたものと同じような質問のほかに、保護者に対して、幼少期の様子はどうであったか、お子さんが発達障害だと思うか、などの問診がありました。1回目は問診のみで、検査などはなく、そのまま帰宅しました。
2回目は、受診した病院と提携している、カウンセリングセンターでの臨床心理士によるカウンセリングでした。このときは対人のコミュニケーションや交友関係に重点をおいた話が多かったです。過去に他人とトラブルになったことがあったか、友人は何人いるか、知り合いから発達障害の可能性を指摘されたことがあるか、などの質問に答えました。
3回目に1回目と同じ病院で、発達障害の検査を受けました。前回の臨床心理士と同じ方が検査を担当していました。発達障害は脳の器質的な問題のため、血液検査や頭部MRIなどは行いません。発達障害の検査には、さまざまなものがありますが、私が受けたのはWAISという認知機能検査です。
WAISは簡単にいうと、IQを測る検査です。IQには言語性IQと動作性IQの2つがあり、言語性IQは言語能力に関する知能指数で、動作性IQは視覚的な処理能力に関係する知能指数です。
なぜ、この2つのIQを測るのかというと、言語性IQと動作性IQの差がひらけばひらくほど、得意なことと苦手なことの差が大きく、発達の度合いに偏りがあるので、発達障害の可能性が高いといえるからです。
検査の具体的な内容について、記憶している範囲で挙げます。単語を書いた紙を見せられ、その単語の意味について説明するものや、イラストのなかから不自然な点を素早く見つけて指摘するもの、お手本を見ながら、まったく同じ文字を写していく作業、臨床心理士が言った数字を順番に覚えて答えるものや、見本と同じようにパズルを完成させるものなどがありました。
検査自体は2時間ほどで終了しました。最初の電話での問診から、最終的な結果がでるまで2か月ほどかかりました。費用は合計で3万円ほどだったと記憶しています。
私が自身の発達障害を疑い、家族や友人に相談したときは、みな口をそろえて「考えすぎだよ」と言っていました。しかし実際に検査を受けたところ、不注意優勢型ADHDであると、はっきりと診断されました。
逆に「自分は絶対に発達障害だ」と思っていても、検査を受けてみると違っていた、という場合もあります。
いずれにせよ、インターネット上のチェックリストや、専門家でもない周囲の意見のみで自己診断するのは危険です。疑わしいと思ったら、専門の医療機関への受診をおすすめします。
参考文献
【大人の発達障害はどうやって診断して、どうやって治療するの?|疾患について|名古屋市瑞穂区の心療内科・精神科あらたまこころのクリニック】
https://www.mentalclinic.com
【WAIS-Ⅲ知能検査を受ける意味はなんですか?|すなおクリニック Q&A】
https://sunao.clinic/qa