サッカー界のスラング「オ・ウンゴル選手」

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Photo by Jonathan Petersson on Unsplash

2024年10月15日、サッカーW杯アジア予選の日本VSオーストラリア戦で、両チームとも1回ずつオウンゴールした末に1-1の引き分けとなる出来事がありました。その中で急に湧き起こったのが、「オ・ウンゴル選手」という文言です。

オ・ウンゴル選手とは、サッカー界でいつの間にか存在していたスラングらしく、オウンゴール時に得点者名を記載しないことから「オ・ウンゴル選手が決めた」などと擬人化したのが始まりだそうです。実際の試合後も、「オ・ウンゴル選手が両軍のゴールを揺らした」「オ・ウンゴル選手が2得点。試合は引き分け」といった文言が踊りました。

いつから存在しているスラングかは分かりませんが、少なくとも2023年のエイプリルフールではこれにちなんだビールが限定販売されていました。なぜエイプリルフール企画なのかというと、実在の選手と勘違いされることがあった為です。

このスラングが、今回は意外な評価を受けています。なんでも、「犯人探しをせず、ミスをネチネチと咎めない良い言い回し」や「オ・ウンゴル選手という表現によって、誰のオウンゴールかを問わない姿勢は健やかだ」といった好意的な声があるのだそうです。

そういえばオウンゴール絡みで刑事沙汰があったようなと調べてみると、1994年にコロンビアで起こった「エスコバルの悲劇」に行き着きました。エスコバルとは当時のコロンビア代表だったアンドレス・エスコバル選手のことで、彼はよりによってW杯敗退の決まった試合でオウンゴールをしていました。他の選手が報復を恐れて帰国を拒む中、エスコバルだけは「自分には説明責任がある」と主張し一人帰国。しかし、暴漢から「オウンゴールをありがとう」の嫌味と共に拳銃で12発も撃たれる最期を迎えました。日本にも「自殺点」を「オウンゴール」と呼び改めるほどの影響を残しています。

エスコバルの悲劇という前例を踏まえると、「オ・ウンゴル選手」というスラングが好意的に評価されているのも納得出来るでしょう。こういった“善いスラング”に巡り会えたのは、肌感覚では7年ぶりです。7年前には「でも、幸せならOKです!」「へーきへーき、フレンズによって得意なことは違うから」という前向きなネットミームがありました。

しかし、これ以降の流行ワードには碌なものがありませんでした。こどおじ・チー牛・親ガチャ・弱者男性・片親パン・和室界隈etc…3回見たら死ぬ絵に倣い「3回見たら死ぬ文章」でも目指しているのかと言いたくなるほど、多種多様な侮蔑語ばかり生み出されていました。その中で見れば「オ・ウンゴル選手」はまさに泥濘に咲いた一輪の花です。7年前に比べると、いちいち背景を説明しなければならない手間はありますが。

なお、オウンゴール自体の原因はほぼ半数が相手のクロス(サイドからペナルティエリア内へのパス)絡みの攻防中に起こるようで、先述したエスコバルも相手のクロスをカットしたのがゴールへ流れ込んでオウンゴールとなっていました。オウンゴールの半分は、ゴール前のゴチャゴチャした攻防で稀に起こるヒューマンエラーの結果と言えそうです。

参考サイト

波乱のサッカーW杯アジア最終予選 両チームにオウンゴールでSNSに「オ・ウンゴル選手」爆誕
https://news.biglobe.ne.jp

「オウンゴールをありがとう」と言われ射殺されたコロンビア代表DF「エスコバルの悲劇」
https://middle-edge.jp

オウンゴールはなぜ生まれるのか
https://www.football-lab.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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