社会問題としての機能不全家族を考える(前編)

暮らし その他の障害・病気

unsplash-logo Dennis Acevedo

本来あるべき家庭の姿とはなんでしょうか。殆どの家庭が何らかの問題を抱えていると言われる現代、その本質を身を持って語れる人は少ないのではと思います。誰しもがぶつかる可能性のある問題、機能不全家族について、親の立場、子どもの立場から、そして社会の立場からいかに向き合っていくべきか考えたいと思います。

機能不全家族とは

「機能不全家族」とは、家族間に何らかの問題があり、本来果たすべき家庭の機能が損なわれた家族の状態を指します。そして虐待や育児放棄といった目に見える問題が発生していなくても、両親の不和や子どもへの過大な期待なども、家庭機能を崩壊させ、子どもの心の成長とその後の人生に大きく影響します。機能不全家族の中で育った子どもも大人になった後、また機能不全家族を自ら形成してしまう傾向があり、この世代間で続いていく連鎖を断ち切るのは容易ではありません。

昨今、児童虐待による死亡事件が大きくニュースになったことを皮切りに、家庭内の教育やしつけのあり方について様々な意見が出るようになりました。そして、これまで個人のものとして社会の介入が難しかった家庭問題について提起され始め、より一層家庭とはどうあるべきかもう一度見直す時期に来ているのではないかと思います。日本の8割以上の家族が機能不全家族もしくはその予備軍であるとも言われ、各家庭の問題の解決は社会的な課題であるとも言えます。

機能不全家族の親はどうするべきか

現代の日本では、家族の中で一番権限があり、家庭の明暗を決める存在が親といっても過言ではありません。一昔前までは、祖父母や親戚など一緒に住み、近所づきあいがよく行われていました。子どもは地域で育てるという認識がまだ根強く、親も子育てについて初めてでも頼れる存在が身近にいました。しかし、核家族世帯や共働き夫婦、一人親などが増え、親は子育てするにはあまりに狭い世界の中で奮闘しなくてはいけなくなりました。機能不全家族は、家庭という限られた空間の中で、親の一方的で偏った考えや行動によって引き起こされます。それは、ともすると、頼れる存在のいない環境のせいだともいえるかもしれません。しかし、実際にその家庭を作り上げ、その基盤を支えているのは親であり、周りの環境だけがその要因だとは言い難いのです。逆に捉えると、親が自分が作り上げた家庭環境の異常さ気付き改善することで、問題はいち早く解決へ導けると捉える事も出来ます。

機能不全家族の子どもはどうするべきか

機能不全家族の特徴としてよく挙げられるのが、子どもの心身の成長への影響があるかどうかというです。機能不全家族で一番の被害者は子どもであり、その影響を自ら回避できないことも問題を長期的に悪化させている要因でもあります。子どもは自分の家庭の異常さや違和感を覚えながらも、経済的にも、精神的にも、生まれた家庭の中でしか生きていけない現状になすすべがありません。そのため、彼らはその中で生きる「術」を身につけることで生き延びようとします。それはのちに本来の自分の素直な気持ちや個性を隠す「役割」として自分の行動や思考を縛っていくようになります。例えば、剣呑な空気が常に漂う家庭に育った子どもは、雰囲気を自分が明るくしなくてはと思い、わざとおどけたり、ふざけたりします。彼らは成人し家庭を出てからも、この役割から中々離れることができません。もともとある自分の性格、個性と思いこもうとしますが、その違和感を完全にはぬぐえず、生きづらさを感じるようになります。そして彼らが親になった時、自分の親と同様の行動をして、機能不全家族の形成を繰り返していくのです。

では、機能不全家族に生まれた子どもはどうしたらいいのでしょうか。

機能不全家族の影響目下にいる子どもの場合、自らできる対応は限られます。第一にできることは、身近な信頼できる人、学校の先生や祖父母などに相談することですが、最近では相談しても適切な対応をとって貰えなかったりして、最悪の事態を招いた事例があります。なので、学校以外に相談できる専門機関を頼る事など、別の対策を持っておくことも必要だと思われます。しかし、どこに相談したらいいか知る方法もしらない、自分のケースに適切な相談先はどこか選択できないなど、子どもだけでは対応に限界があるのが現状です。

では、機能不全家族の回復を図るためには、どうすればいいのでしょうか。後編では、具体的にどのように解決に向け取り組んでいけばいいか考えていきたいと思います。

▶︎続きのページ:社会問題としての機能不全家族を考える(後編)

参考文献
「機能不全家族」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
https://www.just.or.jp

「アダルトチルドレン」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
https://www.just.or.jp

「アダルトチルドレンの由来」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
www.just.or.jp

「アダルトチルドレン6つの役割」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
www.just.or.jp

「アダルトチルドレン13の特徴」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
www.just.or.jp

 

haru

haru

あまいものと中華料理が好きな24歳です。数年前海外大学院を中退。帰国後、うつ病と診断。一人暮らしをしながら就活をしています。現在アサーションやセルフモニタリングを勉強しながら人との関わり方や自分の保ち方を模索しています。

その他の障害・病気

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください