RTA→eスポーツ←障害者の食い扶持、そんなラインが組めるのか

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ゲームのやり込みに、「RTA(Real Time Attack)」というものがあります。RTAは海外だとSpeedrunと呼ばれ、ゲーム開始からクリアまでの実時間を計測することで競技性をつけています。確認した限りでは、「マリオ3」の攻略ビデオ内で告知されたタイムアタック企画が最古と思われます。

主に動画サイトの隆盛によって広く知られることとなったRTAというやり込みは、遂に「RTA in Japan」などの大型定期イベントが組まれるまでに発展し、海外の走者が来日したり、逆に日本の走者が海外へ出向いたりするほどのワールドワイドな動きまで見せています。競技というよりは学会発表や新春かくし芸の趣が強いですが、何人かで同時に並走するレース形式もあるにはあります。

ゲームと競技性がマッチングすれば、すぐ思い浮かぶのが「eスポーツ」という単語です。eスポーツ、すなわち始めから対人戦を前提に調整されたゲーム達と違い、完全ソロプレイのゲームにも競技性を持たせられるのがRTAの世界です。もしかしたらRTAがeスポーツに含まれる日も来るのではないかと思われるでしょうが、それは少し短絡的なようです。

RTA、特に何でもありのany%では、バグ技を積極的に用いたド派手なショートカットも珍しくありません。バグどころか、途中で別のカセットと差し替えたり、特定の互換機を一定の温度までホットプレートで熱したりと、下手をすればゲーム会社への挑発とも受け取られかねない内容の走りさえあります。ゆえに、RTAが公然と認められることは無いと思われていました。

ところが、ゲーム業界とRTA界隈の歩み寄りを思わせる作品が世に出ました。2024年7月に任天堂より発売された「ファミコン世界大会」です。厳選されたファミコン作品の中で、単純なアイテム取得からステージやボスの突破まで、様々なルールやシチュエーションでのタイムトライアルをし、世界中の記録と競う内容です。RTAの文化をゲーム業界の立場で咀嚼して出力した一つの回答に、文字通り世界中のゲーマーが熱中しました。

さて、障害者の食い扶持としてeスポーツが真剣に考えられるほど、収入事情が厳しいのは誰もが知るところだと思います。ですが、限られたタイトルで競争し上澄みにならないといけないのは結構非現実的です。そこで、eスポーツの範囲をRTAなど他のやり込みにまで広げていくのも一つの方法ではないかと思った訳です。RTA走者もプロゲーマーとして含まれないかという話です。

実際、プロゲーマーは大会賞金などよりも、その肩書を用いて講演するなどの形でマネタイズしていることの方が多いです。そもそも賞金の出ないイベントも多いので、競技系のゲームを通して自分の名前に箔をつけ収入の原動力に変えるスタイルが自然と根付いたのでしょう。ただ、RTAでそこまでの名声を得るには、単一の有名タイトルをこれでもかとやり込むか、夥しい数のタイトルに幅広く取り組むかせねばならず、簡単にはいきません。

そもそもeスポーツという不安定なものが候補に挙がっているのは、障害者の就労環境が全く整っていないことの表れでもあります。社会から締め出しておきながらプロゲーマー路線に賭ける様子を嗤う、性根の腐った“社会人”で溢れかえっているのが最大の病理なのかもしれません。


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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