動物と一緒に暮らす効果〜セキセイインコを飼ってみて
暮らし うつ病 その他の障害・病気私がうつ病を発症し、ひきこもりになった時、母から「セキセイインコを飼ってみない?何か変化があるかもしれないよ」と提案されました。うつ状態で何も考えられませんでしたが、母の協力のもと、飼うことにしました。
はじめまして
飼うと決めたのが、うつ病と診断された日の病院の帰り道。そのまま近くの商店街にあるペットショップへと向かいました。店員さんにすすめられた白いインコとは別の、鼻水が出てる黄色いインコを選びました。私の手につかまって離れなかったからです。名前はイーサンにしました。家に連れて帰っても、まだ家族が増えた実感がわきませんでした。そこへ、仕事から帰ってきた姉が、布をかけてある籠に気づいてびっくり。「インコ飼ったん?!しかももう名前まで決まってんの?!」母が事情を説明して、なんとか納得した姉は、籠の中で眠るイーサンに向かって「はじめまして」と言いました。ここからイーサンとひきこもりの私との生活が始まりました。
自分以外の存在
部屋にひきこもっていた私は、イーサンの籠がある玄関前の廊下にいることが増えました。また、毎日ご飯と水をかえるために早起きするようになり、籠の掃除をすることが日課になりました。ひきこもっている間、自分のことに意識が集中して、自分はダメだ消えたいと思い詰めていましたが、イーサンの世話をするときは、自分から意識が離れて考え事をしなくてもすみました。まだ幼いイーサンは、よく私の肩の上で眠っていました。イーサンといると、無理に話さなくてもいいし、でも一緒にいてくれることが、寄り添われているようでどこか心強かったです。
感情が芽生える
うつ病と診断される頃には、私は常に無表情で、感情が出なくなっていました。周りで起きることにも反応は薄く、何に対しても興味がない状態でした。ですが、イーサンの世話を毎日するようになって、言葉は返ってこないですが、少しずつ話しかけるようになりました。だんだんとなついてくるイーサンに、かわいいなぁと思ったり、小さな命がただ生きていることのすごさを感じたり、心が動きだしたのです。これは、相手が動物で、気をつかわずに自分のペースでゆっくり関わっていけたのが良かったのではないかと思います。
効果について
ペットや動物と触れ合うと、心が癒されて安らぎます。これは「オキシトシン」というストレスを緩和してくれるホルモンが分泌されているからです。特に互いの愛情や結びつきが強いと分泌量が多く、相手に対する愛情度が増して幸せな気分になります。またペットと遊ぶ時など、目を合わせて接すると、普通に接するよりオキシトシンの分泌量が3倍分泌されると言われています。これから、動物と触れ合うときは、ぜひ目を見て接してみてください。
外に出る
イーサンとの生活に慣れてきた頃には、早寝早起きができるようになっていました。規則正しい生活リズムができてくると、心も安定していきました。少しずつ笑えたり、感情が表に出るようにもなってきました。そして、イーサンの爪切りをするために、近くのペットショップまで外出することになりました。知り合いに会ったらどうしようなど、不安はありましたが、イーサンのためならと勇気を振り絞りました。久しぶりに太陽の光を浴びた時、眩しくて目が痛かったのを覚えています。こうしてひきこもりから外への第一歩を踏み出しました。薬の力ももちろんありますが、基本となる生活の部分でイーサンという存在は心にも体にも大きな影響がありました。自分のことを頼って信じてくれる存在がいると、人は強くなれるような気がします。
その後、イーサンがおしゃべりできるようになりびっくりしたり、相談相手になってもらったりと家族の一員としてなくてはならない存在になりました。イーサンと生活した9年半で、私はアルバイトができるまで回復しました。我が家に大きな変化をもたらしてくれた小さな命。あの日、私の手にしっかりつかまって離れなかった時から、消えそうな私を助けようとしてくれていたのかもしれません。これからもイーサンが救ってくれたこの命を大切にしながら、前を向いて生きていきたいと思います。
参考文献
ペットの癒し効果とは…動物は疲れた心を癒してくれる!|女性の美学
https://josei-bigaku.jp
うつ病 その他の障害・病気