視覚障害者でもお菓子作りができる

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unsplash-logo Kobby Mendez

私は網膜色素変性症で暗いところが見えにくい、色の差異がわかりにくい、小さい文字が見えにくいなどの症状があります。そんな私の趣味はお菓子作り。それを聞くと、視覚障害を持っているのに計量できるの?切ったり泡だてたりできるの?と疑問を持たれる人も多くいらっしゃいます。そこで今回は私がどうやって趣味を楽しんでいるかお話します。

弱視の人は料理よりお菓子作りが簡単

私にとっては料理よりお菓子作りのほうが簡単です。料理と違ってお菓子作りに必要な工程は主に「計る」「切る」「湯せん」「混ぜる」「オーブンで焼く」など限定されています。「計る」工程は、より簡単にするために数字が大きく表示されるデジタル式計量器を選びました。目盛や針を直接指で触って確かめられる視覚障害者用の計量器もありますが、高額なものが多く手が出しづらいのが現状です。明るい照明の下でも、計量器に載せた大きなボウルの影になって数字が見えにくいこともありますが、それほど苦労せずに計量できます。「切る」工程は、食材の形や大きさを手で触って確かめてから包丁を使えば特に不自由なくできます。小学生の頃から料理が好きだったので包丁で切ったり皮を剥いたりすることに慣れているのも大きいかもしれません。「湯せん」工程は、お湯を使わなくてもレンジでチンで大丈夫。温めすぎにさえ気をつければ問題ありません。「混ぜる」工程はかなり大雑把です。「バターを白っぽくなるまで混ぜる」「ホイップクリームをツノが立つくらいまで混ぜる」などは正直適当です。ただ、経験上混ぜすぎて失敗することはあまりないように思います。「オーブンで焼く」は、一番簡単です。ほとんどのお菓子のレシピで「食材に火が通るまで焼く」という焼き加減を目で確かめる必要はありません。決められた時間通りにオーブンで焼くだけでいいんです。火が通っているかは竹串を刺して生地がくっついてくるか指で触れば確かめられます。料理でも、切って煮るだけのカレーやシチュー、煮込みハンバーグなら作れるのですが、豚の生姜焼きはお肉が固くなるし、野菜炒めは焼きすぎてしなしなになることが多いです。

ホットケーキの壁と解決法

決められた時間オーブンで焼けばいいものと違ってホットケーキは焼き目が肝心です。この焼け具合を判断するのは生地表面に出てくる気泡と、気泡がつぶれた穴の多さです。私にとってこれを見極めるのはとても困難です。簡単に作れるお菓子代表のようなホットケーキが、いくつもの工程が必要なアップルパイよりも難しく感じていました。しかし、最近このホットケーキの壁を克服することができました。解決の鍵は「におい」でした。フライパンに生地を流し込み、火をつけたから生地の上でにおいを嗅ぎます。そうすると、最初は独特のホットケーキミックスのにおいから、ふっくらと香ばしく甘いにおいに変化するタイミングがあることに気づきます。このにおいが変わるタイミングからだいたい1分待ってひっくり返すときれいな焼き色のホットケーキができあがります。

今ではガトーショコラやシュークリーム、イチゴのタルト、アップルパイ、みたらし団子など色々なお菓子を作っています。でも本当は、作ることよりも誰かにおいしく食べてもらうのが嬉しいのかもしれません。「また食べたいから作って」と言われると心の中でガッツポーズしています。

あきら

あきら

網膜色素変性症を持つ三十代女性。趣味はお菓子作りとカラオケ。非障害枠で就職後、症状の進行に伴って業務が厳しくなり、現在は就労支援を受けながら転職活動中です。

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