アダルトチルドレンがかかえる後遺症~演じてしまい、心を閉ざした私の葛藤
暮らし出典:Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash
「アダルトチルドレン」ということばを知っていますか?「アダルトチルドレン」は"機能不全家族"(不安定な環境の家族)のなかで育った子供が、子供のころの生きづらさを大人になっても引きずったままでいる人たちのことを指します。
アダルトチルドレンは「育ってきた環境」のなかで身に着けた偏った考え方のせいで、社会に適応しにくいなどの問題を抱えて生きています。
子供のころから長い時間をかけて染みついてしまった考え方の癖を克服するには、大きな苦労を必要とします。アダルトチルドレン自体は「病気ではない」のですが、社会での生きづらさによって"PTSD"や"うつ病"などの精神疾患を発症してしまうこともよくあります。
アダルトチルドレンの特徴
アダルトチルドレンの特徴としては、以下のようなものがあります。
・自分を責めてしまう傾向
・自分を正当化する傾向
・ものごとを白黒にわけて決めてしまう傾向
・特定のものごとにこだわってしまう傾向
このように自分の殻に閉じこもって、自己と他者の間に壁を作ってしまう傾向があります。
アダルトチルドレンになってしまう原因
アダルトチルドレンになってしまう原因には、以下のようなものがあります。
・親からの愛情不足
・自分を否定され続けること
・家庭内暴力を経験したり、実際に目の前で見た経験
・他人の目を気にして、家庭内の問題を隠してしまう環境
これらは私が体験した原因の一部でしかありません。ですが、子供のこころに与える原因はとても大きく、いつまでもその傷が残り続けてしまいます。私はそんな環境のなかで、常に家族の期待に応えようとしてきました。
私の責任として家の暗い雰囲気を変えるために、ピエロのように"理想のいい子"を演じ続けてきたのです。
私が経験したこと
私は父親が誰なのか分からず、母親が違法薬物の中毒者でした。産まれた瞬間、孤児になってしまいましたがすぐに祖父母の養子となりました。
私にとっては母親と離れて祖父母と一緒に住んだほうが、まだ良かったのではないかと思っています。しかし現実は、家族の責任として祖父母が母と同居することを選んだため、"少しでも幸せな環境"で育つことができませんでした。ちいさな子供は正しい判断ができないため、私はその環境に無意識のうちに適応しようとせざるを得ませんでした。
母親は機嫌のいいときは優しく接してくれました。しかし、違法薬物の後遺症で脳が委縮し暴力的になり、正しい判断がつかない状態にありました。覚えているいちばん古いトラウマ体験は3歳のときです。母親に突然、たんすに叩きつけられ、大人の力で殴られ、たばこの火を押しつけられました。その時の私は泣いて祖父母に助けを求めようとしましたが、母親からは「お前が泣くせいでママがあいつらに怒られるだろ」「絶対に声を出すな」と言われ、部屋に閉じ込められ、誰にも助けを求めることができない状態でした。
次の大きな体験は9歳のときです。母親の薬物後遺症の幻覚・妄想症状が突然はじまり、下校時間に私のクラスメイトに暴力を振るったことがありました。それ以降、クラスメイトからイジメを受けるようになりました。母親の状況や病気について先生に伝えると、少しだけでも理解が得られたかもしれません。しかし、祖父母は「おまえも頭がおかしいと思われるだけだから絶対に言うな」「おまえが我慢していれば問題は起こらない」と私に言い放ち、そのせいで知らずのうちに世間体を気にする性格が身についてしまいました。
11歳の時には殴ったりタバコの火を押しつけないことと引き換えに、母親から頻繁に強姦されるようになりました。思い出したくもない記憶ですが、今も心に傷跡として残っています。これ以上は強姦被害について書けませんが、どれだけ大きなトラウマだったか想像できると思います。
中学生になり、体が大きくなってきてから母親からの性的虐待は無くなりました。そして同時に私は反抗期を迎えました。性的虐待のことは伝えられませんでしたが、私にとって必死の訴えだったと思います。「どうしてあの時、僕を助けてくれなかったんだ」そのように祖父母に強く問いただしました。ですが、祖父母からの反応は優しいものではありませんでした。
「俺たちに反抗するのか」
「おまえは母親と同じで、どうしようもないクズだ」
その時から、完全に「自分のこころ」を殺して生きていくようになりました。子供が"機能不全家族"の中で生きていくには、他者から否定されるより先に自分を否定して、なるべく心が傷つけられるのを避けることしかできません。
アダルトチルドレンはそのようにして、自ら外の世界と離れていくことが身についているために「私自身」というものがわからなくなり、後遺症としてPTSDやうつ病を発症してしまいます。
「パパ」になった私ができること
私はなんとか結婚することができ、可愛い娘に恵まれました。その中で常に心掛けていることは「私が味わった苦しみを、娘にも経験させたくない」ということです。
私はこれからもアダルトチルドレンとして生きていかなければなりませんが、過去にえられなかった分の愛情を娘にたくさん与え「幸せな家族」という素晴らしい環境のなかで娘を育てていきます。
娘が幸せであるなら、今の私も同じくらい幸せです。
さいごに
"機能不全家族"の中に生きる子供たちは、いつも過剰に「いい子」を演じようとします。自分から「助けて」とは決して口にしません。助けを求める方法を、その子たちは知らないのです。
もし"機能不全家族"のなかで生きる子供たちを見かけたら「児童相談所」に連絡をしてください。その行動で一人でも多くの子供たちが救われるかもしれません。
参考文献
【人生相談&心理カウンセリング「あおぞら」 アダルトチルドレンからの完全脱出・改善方法】
https://www.ai-aozora.com/