NPO法人ファザーリング・ジャパンの試み「メインマンプロジェクト」とは
発達障害 暮らし男性の子育て・家事支援、夫婦のパートナーシップ応援などを行っている「NPO法人ファザーリング・ジャパン(Fathering Japan)」の事業のひとつに『メインマンプロジェクト』があります。父親の発達障害児支援を目的とし、父親がパートナーと協力して障害児を育てる、障害を理解し障害を理解してもらう、地域のみんなで障害児を育てる、を3つのテーマとして活動をしています。そんな『メインマンプロジェクト』を立ち上げた橋謙太さんにインタビューさせていただきました。
ファザーリング・ジャパンとは
──ファザーリング・ジャパンはどのような活動をされている団体ですか?
「仕事も育児も両立しながら楽しんで生きていきたいという父親の意識が広がりつつありますが、日本の現状は、長時間労働を強いる会社と、子育て参加して欲しいと願う妻のプレッシャーに挟まれ、「ワーク・ライフバランス」に苦しんでいる子育て世代の父親たちが少なくありません。ファザーリング・ジャパンは、父親支援事業によって「Fathering=父親であることを楽しもう」の理解・浸透を目指しています。「よい父親」ではなく「笑っている父親」を増やすために、部下のワークライフバランスを考える管理職を育成する「イクボス・プロジェクト」や「パートナーシッププロジェクト」など数多くの事業を展開しています。各地でもフォーラム、講演、イベントを開催し、メルマガやFacebook等で活動の情報発信を行っています。
メインマンプロジェクト立ち上げの思い
──メインマンプロジェクトを立ち上げた思いをお聞かせください。
「私の娘に障害があり、療育施設や保健センター、地域の支援団体に行くことがありますが、残念ながらお母さんしか見かけませんでした。また支援者の中には、父親の私が訪ねているのに「お母さんの連絡先を教えてください」と言ってくることがあり、私がここにいるのにと嫌な思いをすることがありました」
「共働き夫婦の子どものための保育園の保護者会に行ってもお父さんはあまりいなかったのですが、障害の世界に入るともっとお父さんを見かけなくなります。障害の世界では父親は、マイノリティなのです。そこでお父さんのコミュニティの必要性を感じたのです」
悩んでいるお父さんたちのコミュニティに
「発達障害を持つ親の場合、特に父親が子どもの障害を受容できていないケースがあります。仕方のないことかとは思うんです。健常児として普通学級でやっていけるんじゃないかって思える瞬間と、やはり無理かという瞬間を行ったり来たり。なかなか子どもの障害に正面から向き合えない。肝が据わりきれない、そんなお父さんは少なからずいます。でも悩んではいるんです。だからこそ「メインマンプロジェクト」は必要かと思えるんです。いわゆるグレーゾーンと言われている発達障害児を持つ家族、周りからは障害のない子どもと思われて困っている家族を、お父さん側の視点からサポートできたらいいな、というのが立ち上げの動機です」
──メインマンプロジェクトの活動について教えてください。
「私自身も悩んでいたので、自分自身も勉強したいと思い、コロナ禍になるまでは、メインマン・カフェという勉強会、シンポジウム、イベントなどを企画して行っていました。また、お互いに抱えている悩みを打ち明け、参加者全員で考えたりもしていました。今はコロナ禍で開催できていませんが、勉強会をオンラインで開催するようになり、全国から参加していただけるようになりました」
育児に関わるお父さんを増やしたい
──活動をされている中で、どんな課題を感じていますか?
「障害がある家庭は、離婚率が高く、母親のうつ病有病率が高いという調査データがあります。核家族化が進み母親の子育て負担が増えている中、いまだに子育ては母親という価値観は根強く、父親は子育てに協力的でない。さらに輪をかけるように発達障害児の子育ては健常児よりもどうして手がかかる。そして母親自身も、母親だから子育てをやらなければならない、と思い込んでしまっています。なので、そうなる前に、もう一人の親である父親が主体的に子育てに取り組む必要を感じます。父親が子育てに積極的になれば、当然母親は楽になるし、悩みを1人で抱え込むこともなくなる。子どもと父親の関係もよくなっていく。父親、母親、子どもすべてがWIN-WINになる関係になります。結果、離婚率もうつ病率も下がっていくと信じています」
──メインマンプロジェクトの活動を続けてきてよかったことを教えてください。
「両親で勉強会、講演会に参加してくれるケースが増えていて、家族に関わるようになった父親が増えたとか、療育施設に父親が連れて行ってくれるようになったという声を聞くようになったので嬉しいです」
──メインマンプロジェクトの今後の展望は?
「コロナが落ち着いたら、専門医、療法士、福祉職の方々を講師に招いて、パパスクールを開催したいと思っています。お母さんの子育てに共感しながら、自ら主体的に関わるお父さんをもっと増やしていきたいですね」
──最後に読者へメッセージをお願いします。
「お母さんというだけで頑張っているので、お母さんという言葉の呪縛に縛られないでほしいです。障害児の子育てで母親が孤立するのを防ぎたいという思いで、「パパのための発達障がい児ブック」を作成しました。両親の関わり方についてわかりやくまとめていて、役に立つ内容ですので、ぜひ手にとってもらいたいです。10冊3,000円(送料込)で購入できます。お問い合わせは、fjmainman@gmail.com までお願いします」
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