発達障害と子育て~悪いのは親か子か
暮らし 発達障害出典:Photo by Jimmy Dean on Unsplash
障害を語る上で避けられない話題のひとつに「子育て」があります。障害の中でも特に、発達障害の子どもの場合は子育て面のトラブルが多くなりやすいです。
今回のコラムではそんな「発達障害と子育て」について、発達障害である私の意見を交えながら、難点や対処法を書いていきます。
なぜ発達障害の子はトラブルが起きやすいのか
はじめに「なぜ発達障害の子にトラブルが起きやすいのか」を考えていきましょう。比較のために、身体障害を持つ子供と発達障害を持つ子供を仮定して考えていきます。
「障害者」という言葉は、元来「日常生活に何かしらの障害を抱える者」という意味で作られた言葉です。つまり、どちらの子供も日常生活に支障をきたすことは間違いありません。
しかしながら、その支障の種類が違います。
身体障害者の場合、例えば視覚障害者なら目が見えない(にくい)という、"明確な"支障があります。逆にいうと明確である分、対処法がある程度確立されており、親も配慮しやすくなります。
発達障害者の場合、例えばASDの場合は基本的にこだわりが強く、コミュニケーションが苦手なのですが、"どのように"こだわりが強く、コミュニケーションが苦手なのかは人によって大きく異なります。そのため、アプローチも人によって異なり、親が配慮をしづらくなります。
また、身体障害と違い、発達障害は他人から一目でわかるものではないため、家族以外の配慮はなおさら受けにくいです。その分、親に負担がかかってしまい、ストレスを抱えるなど大きく疲弊してしまうのです。
発達障害の子育ての例
先ほどものべた通り、発達障害でも人によって種類や症状が大きく異なるため、ここでは1つの例に絞って考えていきます。
長男……10才の時にADHD、ASDを診断され、現在中学1年生。成績は中の下、失敗があるとすぐ人のせいにし、親とよくもめる。
母……専業主婦であり、障害を持つ子を育てるため奮闘中。とはいえ、育児が上手くいかないことも多く、ストレスを抱えている。
父……役職を持つビジネスマン。仕事で忙しく、あまり子供のことを気にかけていない。なにか悪いことを長男が起こせば、すぐに怒り喧嘩や口論になることもしばしば。
今回はこの家族を例に、それぞれの視点から考えてみましょう。
母の視点から見る子育て・家族
はじめに母の視点から見ていきます。
今回の例では、ADHDやASDを抱える息子を育てるため、色々奮闘しているものの、進歩が見えなかったり、反抗する息子にストレスを抱えています。また、そのことを夫はあまりわかっておらず、協力できる人がいない状況です。
この協力者・相談者がいないという状況は、発達障害の子育てではよくあることで、普通の子供と違うため、他人と共有することも難しいのです。また、父母で考え方を共有できていないこともよくあり、酷い時ではストレスを抱え過ぎて、うつ病になる場合もあるようです。
このような状況の人は、共有者を作るという意味でも、地域の相談所や診療所を探してみるのがおすすめです。相談所や診療所はあくまでも他人で、親身になってくれない場合も多いので、親戚や友人などで探しても大丈夫です。
子育てに関して「あなたに障害者の母である私の気持ちが分かる?」という文言をよく聞きます。私にその気持ちはわかりませんが「あなたに障害者である私の気持ち」もわからないでしょう。人はあくまで"他人"であり、完全に理解するのは誰であっても不可能です。だからこそ、少しでも理解してくれる"誰か"を探しましょう。
長男の視点から見る日常・家族
次に長男の視点から見ていきましょう。
長男はADHD、ASDの障害を持っており、こだわりや不注意により、どうしても失敗が多くなってしまいます。また、精神年齢が低く、自分の失敗を他人のせいにしがちです。
では、長男が悪いのかと言われると、そうとは言い切れないでしょう。もちろん、数多くの問題や失敗は長男自身が悪いのですが、本人も問題や失敗を起こしたくて起こしているわけではないからです。
私もそうですが、発達障害をもつ子ども自身は、自分の境遇を恨むことが多いです。自分が悪いことを理解しておきながら、自分が悪いことを認められない子供が多くいるのです。
このような場合、しっかりと「なぜ」「どういう意図や考えで」問題や失敗が起こるかを家族で話し合いましょう。もちろん、すべてを肯定する必要はなく、叱る時は叱るべきです。ただ、その𠮟り方を工夫して、あくまで子供のせいでなく、病気のせいという形で叱るのが良いかと思います。
父の視点から見る子育て・家族
最後に、父の視点から見ていきましょう。
父は働いている以上、家庭のことは母にまかせるというスタンスです。事実、家庭のことは省みないという人も多いそうで、私の家庭もそうでした。まあ実際、仕事での疲れなどもあり、家庭まで手が回らないというのも分かります。
今回の場合、父が悪いのは、よく理解しないまま叱るという点です。
発達障害の子供に病気を理解せずに怒り、結果子供がさらに反発する、というのは本当によくあります。ですからこのケースだと、しっかり理解してもらって家族で話し合う、もしくはすべてを母にまかせるというのがいいと思います。
特に「母の育て方が悪い」という怒り方をする父は多いです。しかしながら、育児をまかせているのは夫婦の同意の上ですし、母だけに責任を押し付けるというのはお門違いでしょう。
結局誰が悪いの?
ここまで、家族それぞれの視点で見てきましたが、結局誰が悪いのでしょうか。
正直、私は全員が悪いと思います。
各々の視点で見れば、長男はそう産まれたくて産まれたわけではない、母は教育をしてあげている、父は仕事を頑張っている、と自身は悪くないように感じています。しかしながら、別の視点から見ると、全員に悪い点があります。
そのため、このケースでは、各々が自身を客観視し、少しずつ歩み寄っていく。これが解決方法だと思います。
おわりに
今回のコラムでは「発達障害と子育て」について、私の考えをのべてきました。もちろん、私の考えが必ずしも正しいというわけでなく、それぞれの家族の状況に応じて、色々な解決法があると思います。
実際に私も障害を抱えており、子供のころは父や母ともめ、時には殺されかけたこともありました。しかしながら、現在は様々な経験をへて、家族全員仲良く協力しながら暮らしています。
もし、前が見えなかったとしても、みんなで協力して少しずつ前に向いて進んでみませんか。
発達障害