HSPという特性に振り回されて
暮らし「HSP」という言葉をSNS上でよく見かけるようになり、その意味を知っている人も増えてきたのではないでしょうか。HSPは「Highly Sensitive Person」の頭文字から取られた言葉で「人一倍、繊細な人」という意味です。HSPは病気ではなくひとつの特性です。ですが、気を遣いすぎたり気にしすぎることで、うつ病といった病気を引き起こしやすい特性でもあります。私もこの特性がきっかけで、うつ病を発症して引きこもるようになってしまいました。
蓄積する疲れ
私は人の何気ない一言や冗談を重く受け止めてしまい、ひどく疲れてしまうことが多々あります。例えば、友達と楽しく会話している中で「ふーん」という言葉が返ってきたとき、「え、私の話つまらなかったのかな……きっとつまらなかったんだろう、恥ずかしい」と考えて1日中引きずってしまうことや、家族に頼みごとをしたときに返事が返ってこなかったら「もしかして頼みごとをしたことに対して怒ってるのかな……いわなければよかった」と思って何もいえなくなってしまうことがあります。
また、周囲と違うことをしていると「変だと思われてるんじゃないか」と考えて周りに合わせようとしたり、親しい人が落ち込んでいるとまるで自分のことのように辛くなってしまい、夜に布団の中で泣くということもありました。
そういったことで感じてきた疲れは、趣味に打ち込むなど自分の好きなことをすることで発散させていました。しかし、疲れを全て発散できていたかというとそうではなく、心に少しずつ残っていたと思います。そして大学4回生になったころ、卒業論文の作成と就活が重なり、疲れがどんどんたまっていく一方でした。変だと思われたくないがために周りに合わせたスケジュールで就活し、今までの何倍もしんどいと思うような日々が続きます。
日々感じる疲れを上手く発散させられない状態で活動を続けた結果、私はとうとう潰れてしまいました。その後、心療内科にいってみたところ、うつ病だと診断されました。
引きこもってから
大学はなんとか卒業したのですが、そこから3年間家に引きこもってしまいます。「外に出れば知り合いに会うかもしれない」「こんな出来損ないの自分を見られたくない」と思い、出るのが嫌になっていました。どうしても外に出なければいけない用があるときも、知り合いに会いませんようにと祈りながらびくびくしていました。
これまで必死に周りに合わせて生きてきた分、周りと違う人間になってしまった自分が嫌で仕方がなかったのです。
生活もかなり乱れており、昼過ぎに起きてはご飯を食べ、再び寝て晩ごはんを食べたのちにインターネットやゲームをするという堕落した日々を過ごしていました。母に叱られ、早く何とかしないとと感じても、結局行動に移せずにだらけた生活を続けていました。
当時は「自分は生きている価値がない人間だ、早く死にたい」という気持ちが強くなり、首を吊ろうとしたことが2回あります。しかし頭がぼーっとしてきたところで怖くなり、やめてしまいました。その時は自分は死ぬ勇気もないダメ人間だと泣いていましたが、今はやめてよかったと思っています。
カウンセラーや家族の助けもあり、ゆっくりではありますが回復に向かいました。引きこもってから3年が経ったころ、インターネットで就労移行支援所のサイトを見つけます。当時の私は精神障害の手帳の存在を知らなかったので持っておらず、サービスの対象にはならないだろうと思っていたので、流し読み程度で済ませようと思っていました。ですが私のように手帳がなく、うつ病を患っている人でも条件次第では通えることを知ってから、イチかバチか連絡をしてみたところ通えることになりました。
何も活動できていない自分が嫌だった分、就労移行支援所での訓練や実習に行って就職活動をしていると感じることで、気持ちも前向きになっています。ですが今も些細なことで傷ついたり疲れてしまっています。
スタッフさん側で何かミスがあって謝られた際に「謝らせてしまった……」と、自分が何かミスをしたわけでも無いのに落ち込んだり、面談がある日に自分の都合で休んでしまった日は「スタッフさんに迷惑をかけてしまった」「どうしようもない奴だと思われたかもしれない」と思って泣いてしまうこともありました。
小さなことでも褒めてみる
私のHSPという特性が無ければ、もっと楽しい人生になっていたんじゃないかと思い、この特性を呪うこともありました。しかしこれは治るものではないし、もうずっとこの特性と付き合っていくしかないと悟りました。そしたら急に「なんでこんな訳の分からない特性に私が苦しめられなきゃいけないんだ」と謎の怒りが湧いてきて、だったら逆に「些細なことで傷ついてしまうなら、些細なことでも自分を褒めまくってやろう」と考えるようになりました。
たとえば、朝起きた時に「ちゃんと起きて偉いな~」と思ったり、外に出たら「外出できてめちゃめちゃ偉いな~」と、少し大げさに褒めています。もっと小さなことだと、水を飲んだ時も自分を褒めます。時々ネットの知り合いと話すときも、お互いに「お風呂に入るなんて天才」「早く寝るなんて偉すぎる」という風に褒め合っています。こうやって自分を褒めていくことで、少しずつ気持ちも楽になりました。
最後に
今も生活する中で生きづらいと思うことは頻繁にあります。ですが、この特性と上手くやっていけるよう自分なりに工夫するようになりました。考え方が変わったのは、就労移行支援所に通って他のメンバーさんと困りごとを共有したり、自己理解のプログラムを受けて自分のことを理解できてきたからだと思います。
今後も自分を褒めることは続けようと思っていますが、頭の中で自分を褒めるだけじゃなく言葉に書き起こして、自分への褒め言葉で詰まったノートを作ろうと思っています。
参考文献
【心療内科TOP | 仙台の心療内科・精神科・美容内科マドレクリニック・HSP(Highly Sensitive Person)ハイリー・センシティブ・パーソン】
http://www.madreclinic.jp/pm-top
うつ病