自分の感情を見つめよう~うつ病をやわらげた考え方の気づき、認知行動療法との出会い

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出典:Photo by Anastasia Nelen on Unsplash

うつ病になるきっかけとは、何でしょうか。

さまざまな要因があると思いますが、そのうちの1つは「自分自身の考え方」でしょう。

誰かにきつい言葉をいわれたとき、頭の中ではさまざまな思いが浮かんでくると思います。しかしその時の感情や考えを、その瞬間に見つめたことはありますか?

もし、現実はそこまで深刻なことではなかったのに、自分の考え方1つで深刻にとらえすぎていたとしたら。苦しい現状は、自分の考えが生み出したものであったら。それらの考え方を変えることで、生きやすくできるとしたら、やってみたくはないですか。

筆者はそうでした。以前は自分の考えに苦しめられて、深刻にとらえすぎ、すぐに死にたくなっていました。

しかし、認知行動療法との出会いが、筆者を変えました。

自分の感情を無視していた

筆者がうつ病を発症したのは、2年前のことです。当時キャリアチェンジをしたてで、やる気にあふれていました。未経験から勉強をして仕事についたこともあり、たずさわる仕事はどれもが初めての経験でした。

じょじょにまかされる仕事が増えていくと同時に、ミスも仕事量に比例して増えていきました。

どんなに見直しても、勉強をしても改善しない状況でした。だんだんと、ミスを指摘される恐怖がつのり、プライベートでも、これまでできたことができなくなってしまいました。やがて不眠症になり、仕事ができない状態となったため、心療内科を受診。うつ病と診断され休職しました。

療養中も「自分は怠けているんだ、なんて駄目な人間なんだ」と、自分の考えにさいなまれていました。周りの心配する声も、すべて「どうしてお前は、誰もができることをできないんだ」「なんて駄目なやつなんだ」といっているように感じられ、勝手にプレッシャーとなっていました。

この時の筆者は、頭にうかんでくる言葉に悩まされる一方で「現実はどうなのか」をきちんと見つめられていなかったのです。

振り返ったときに心の中で起こっていたこと

療養を続けるも「職場に戻る恐怖や不安感」は解消せず、休職期間が満了したことで退職となりました。

「このままではまずい」と考え、かかりつけ医の助言もあり自立訓練(生活訓練)を受けることにしました。生活訓練で「認知行動療法」プログラムを受けられる、と知ったためです。

以前から悩みすぎて死ぬことを考え「死にたい」と発信していたところに、知人から「認知行動療法がおすすめだ」とアドバイスをもらっていました。そのことが頭にあったため、うけてみたいと思っていたのです。

生活訓練で認知行動療法のグループワークを受けたことで、この時の自分の考えや感情、そして当時は気づけなかった現実の見え方が変わりました。

具体例として会社の先輩とのやり取りを、そのプログラムの1つである「7つのコラム法」を使って紹介します。

状況
・先輩からミスについて指摘されながら、定時をすぎても残されていた。夜の10時で疲れきっていた。

気分
・恐怖80%、緊張80%

自動思考
・私がミスをしてばかりいるから、先輩はきつく指摘してくる。なんて自分は駄目な人間なんだろう。また怒られるのではないか。

根拠
・以前先輩がよくきつく指導していた人について、先輩が「使えない」「全然駄目」などと発言していた。その人が別のプロジェクトの担当になったため、今度は自分が標的となった。

・実際に作業をしていて、ミスや理解不足でうまくこなせていないものがあった。

反証
・先輩が駄目と言っていた人は、先輩以外から見れば駄目な人ではなかった。能力はあったがたまたま、まかされていた仕事が、その人のスキルとあっていなかった。実際に、別の仕事ではその人が中心となって作業をおこなっており、問題も起きていなかった。
・私自身が「使えないやつ」「駄目な人間」と言われたことはなかった。
・自分の担当している仕事がチーム内で一番多く、難しいものでもあった。
・同じミスではなく、違ったパターンのミスだった。
・長時間働いていれば、頭もまわらなくなる。

適応的思考
・「もう少しオブラートにつつんで指摘してほしい」と先輩、もしくは上司に伝えていたら、違ったかもしれない。何を言われても「わかりました」といって頑張ろうとしてしまったことで、先輩にも私が苦しんでいると伝わっていなかった。
・先輩も私を助けようとしてくれたからこそ、一緒に遅くまで残って作業を見ていてくれた。できるように教えてくれていたこと、指摘しながらも考えさせようとしていたことが頭から抜けてしまっていた。

今の気分
恐怖30%、緊張40%

月日がたっているため、気分が大きく変わっています。仮に当時このように考えが変わっていれば、気分もこのくらいになっていたのではないか、と考えたものを表記しています。

この方法を使うことで怒られて怖かったことが、自分で思っていたより深刻でないと気付くことができました。より詳しくは次の章で見ていきます。

認知行動療法との出会いで考え方が変わった

生活訓練を通じて、日常での困りごとがあったときは、7つのコラム法をもちいて考える時間が増えました。

また、認知行動療法のプログラムを通じて「認知の歪み」や「スキーマ」「アサーション」に触れていきます。前述のコラム法にでてきた、自動思考にそもそも認知の歪みがある、ということに気づかされたのです。その認知の歪みは、スキーマ――根っこにある考え方、人生観からくるものでした。

筆者の場合、指摘を受けることは怒られること、というあやまった認知がありました。そして、そのあやまった認知から、指摘を受けることは「自分は無価値で愛されない人間だ」という、人生観を肯定することにつながっていました。

他にも、アサーションは人間関係トレーニングとして受けていましたが、筆者の問題として「ノン・アサーティブ(非主張型)」であることも、スキーマからくるものだと気づきました。自分に自信がなく、相手のいうことを重く受けとめすぎてしまったのです。

日常イライラすることや、人間関係でのトラブルは必ずあります。そんなときに、あらためて事実と感情を見つめる癖がつきました。そのおかげで、深く悩みすぎることもなくなったのです。現在は、まったく「死にたい」とは思いません。

前向きに考えられるようになり、就職活動でもその姿勢を評価してもらえました。また、普段の発言も前向きになり、自分の人生のために努力することが、苦ではなくなりました。その結果、私の努力を認めてくれる人、見ていてくれる人の存在に気がつくこともできます。

今は「自分も価値のある、愛されている人間なんだ」という人生観をえて、ポジティブに物事を考えられるようになったのです。

認知行動療法を始めてから1年と、まだまだ勉強中ではあります。しかし筆者にとっては、人生を変える出会いでした。筆者個人の話でしたが、この記事が参考になれば幸いです。

参考文献

【認知療法・認知行動療法とは?効果や実際の進め方を紹介|資格のキャリカレ】
https://www.c-c-j.com/

【うつや不安をやわらげる「かんたんコラム法」 | このサイトでできること | こころのスキルアップ・トレーニング】
https://www.cbtjp.net/

【認知の歪みのパターンについて。 | 高槻市、心療内科・精神科なかおクリニック】
http://www.nakaoclinic.ne.jp/

【アサーションとは? 3種類の自己主張とは? 自分のタイプを知るテスト問題 - カオナビ人事用語集】
https://www.kaonavi.jp/dictionary/

春水

春水

2年前にうつ病を発症。うつをきっかけに、自身の暮らしや考え方の癖を見直し生まれ変わる努力をした結果、就職が決まり彼氏もできました。どん底から幸せになれたので、今後の再発防止のための情報発信をしていきます。

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