目を閉じても履ける靴下「minamo」が登場。洗練されたインクルーシブデザインを見よ
暮らしコミュニティアパレルブランドouca(オウカ)では、新しい靴下「minamo」を世に送り出そうとしています。「minamo」はインクルーシブデザインとして非常に洗練された靴下となっており、「目を閉じてでも履ける、もう誰も間違えない、どう履いても正解になる靴下」と銘打たれています。
ouca代表の田村優季さんには全盲の祖母と友人がおり、自身はアトピー性皮膚炎を抱えています。これらが出発点となり、「履く方向もない!表裏もない!左右もない!ペアもない!」という、インクルーシブデザインを突き詰めた靴下を開発しました。
campfireでのクラウドファンディングは既に目標金額を達成しておりますが、6月29日まで継続して受け付けております。リターンという形で、靴下からインクルーシブを体験しましょう。
minamo4つの魅力
「minamo」には4つのセールスポイントがあり、これらが究極のインクルーシブデザインに貢献しています。「時短でスッとカンタンに履ける」「履き心地がいい」「自由な組み合わせ」「長く履ける」という4つの美点を個別に解説していきましょう。
時短でスッとカンタンに履ける
通常の靴下は踵の部位で折れ曲がっており、縫い目もついており、裏返しで使うなどもってのほかです。しかしminamoは筒状で裏表のないデザインとなっており、無縫製ニットのため縫い目のズレも気にならず、どこからでも簡単に履くことができます。視覚障害者や体を動かしにくい方にとって優しい靴下です。
履き心地がいい
靴下のゴムや縫いしろによって痛みやかゆみを感じることは多く、肌の敏感な人にとっては非常に気がかりな問題です。田村代表もアトピー性皮膚炎を抱えており、履き心地に関しては真剣に追求されました。ゴムの締め付けを弱め、フォルムをふくらはぎに合わせるなど、着用時のストレスを和らげる配慮がなされています。
自由な組み合わせ
minamoにはペアや表裏前後の概念がありません。そのため、「片方がない」「左右反対」「裏返しになった」というトラブルとは無縁になる訳です。どの組み合わせや履き方でも違和感が出ないようデザインされており、表裏含めて8パターンの色味を楽しめます。
長く履ける
通常の靴下は、使い込んでいると踵や爪先に穴が開いてしまうものです。しかしminamoは筒状であるがゆえに、同じ位置で履くこともなく結果として寿命が延びています。
インクルーシブデザイン協会による協力
oucaは、製作協力した一般社団法人インクルーシブデザイン協会の会員になっています。そのインクルーシブデザイン協会代表の国宝孝佳さんにインタビューをしていますので、 そちらも併せて掲載いたします。
「minamo(ミナモ)は視覚障害者を巻き込んで作りました。 左右の色を間違えたり表裏逆に履いてしまったり、面倒なことが靴下には多いです。これらを取っ払って何も考えずに履ける、最初から色違いが前提の、もう誰も間違えない靴下がminamoです」
「協会として、実際の靴下の困りごとを探るためのヒアリング、アンケートで協力をしました。協会には当事者やその関係者、インクルーシブデザインに関心がある方など、様々なメンバーいるので、リアルな声を沢山聞くことができます。それが協会の強みでもあります
「リアルな声を掬い上げる「機会」をつくることも、協会としてインクルーシブなデザインが広がる為に大事な役割だと思っています」
こう語るのは、 一般社団法人インクルーシブデザイン協会の国宝孝佳さんです。インタビューの節々からはインクルーシブデザインにかける思いが伝わってきました。
──インクルーシブデザイン協会とはどういった団体でしょうか
「『障害のチカラを社会のチカラにというスローガンを掲げ、障害者の不便な体験を乗り越えた知恵を起点に、今までになかったものをデザインしています。今まで排除されていた人間をインクルーシブしてデザインしていけばいいものが生まれるという啓発も兼ねています」
──インクルーシブという言葉にこだわる理由をお聞かせください
「ユニバーサルデザインは出来上がった物や結果を独自の7原則で査定したようなイメージです。けれども実際は使いにくいことが多くて、名前負けしている側面があるんですね。対して作り始め、企画の段階から障害者が入り困りごとを解決していくのがインクルーシブデザインです。インクルーシブデザインで作った結果、ユニバーサルデザインになることはあります。僕たちにない視点をお持ちなので、教えてくださいというスタンスです」
「みんなに向けて(ユニバーサルデザイン)ではないんですよ。特定のニーズには確実に応えられるのがインクルーシブデザインです」
障害者のニーズをデザインに組み入れる
──沢山の方と協力できる秘訣は何ですか
「インクルーシブ自体が応援されやすいことでしょうか。お陰で様々な方をご紹介して頂けます」
──インクルーシブデザインをやろうと思ったきっかけはありますか
「理学療法士1年目の頃から、ワイシャツが着られない・ズボンが履けない・ベルトが通せないという患者さんを多く目にしてきました。『あと5・6年したらいいのが出るから、それまで我慢しましょうね』と宥めてはいましたが、現実にそのような商品は出ず、彼らの存在は忘れられているのではと疑ったものです。障害者はインクルーシブどころか排除(エクスクルージョン)されていましたから、デザイン会議の俎上にも上がりませんでした」
「個人的に便利なものを作って患者に与えていたのですが、需要は多いしこれをビジネス化出来ないかと思い、知り合いのアパレルメーカーなどに話を持ち掛けました。しかし反応は冷たく、『障害者の為の商品を作っても儲からない』と言われ断られました。諦めの悪い僕は、障害者が使えて皆が喜ぶという折衷案を出せばいいと思い至り、インクルーシブデザインに手を出したわけです」
「最初はインクルーシブデザインという言葉を知りませんでした。僕の理念にそういう名がついていると知り、イギリスからそれを輸入した人が京都に住んでいると聞いて、話を伺ったこともあります。そこから人脈が広がっていき、組織化することが出来ました」
──今後のビジョンなどは考えておられますか
「(良い意味で)インクルーシブデザインという言葉が無くなればいいなと思っています。いちいち言わなくても、障害者を包摂するのが当たり前、障害者も健常者も関係なく同じ仲間として居られるのが当たり前になって欲しいです」
参考サイト
minamoクラウドファンディング
https://camp-fire.jp