ヘルプマークに酷似したグッズに批判の声!そもそもヘルプマークとは何なのか
暮らしシンガーソングライターの椎名林檎さんが11月30日に発売するリミックスアルバム「百薬の長」について、大きな問題が浮上しています。問題の焦点となったのは限定盤に付属される特典グッズで、デザインがヘルプマークや赤十字マークに似ているというのです。
ヘルプマークは、援助や配慮を必要としながら外見では分からない人が配慮を求めるためのマークで、要はSOSサインのようなものです。それの酷似品が世に出回れば、本物のヘルプマークを必要とする人々にとって迷惑なことこの上ないでしょう。
酷似品騒ぎで炎上するほど、ヘルプマークの認知度は高まってきたといえます。ここで今一度、ヘルプマークについて復習も兼ねて解説しましょう。
ヘルプマークとは何か
「ヘルプマーク」は赤地に白の十字とハートがついた見た目のカードで、バッグなどにぶら下げて使います。東京の都営地下鉄から始まっており、現在は東京都が管理しているほか、東京都を権利者とする商標登録も既にされています。
これの意義は、援助や配慮が必要であるにもかかわらず外見では分からない人が円滑に配慮を受けることにあります。例えば、義足や人工関節、内部障害や難病、知的障害や精神障害や発達障害などが対象です。妊娠初期の人がマタニティマークの代わりに携帯することも出来ます。
もしこれを携帯している人が近くにいるようなら、席を譲ったり「お手伝いしましょうか」と声をかけたりするといいでしょう。たとえ「結構です」と断ることはあっても、ヘルプマークを付けている以上はこちらの親切心を攻撃的に返すことは少ない筈です。きっと、少ない筈です。
重ねて申し上げますが、ヘルプマークは外見から分からない配慮事項を抱える人々がSOSサインを出しやすくするためのものです。そして、ヘルプマークの認知度は右肩上がりに上昇しています。
自治体によるが簡単にもらえる
ヘルプマークは自治体によって配布場所や難易度は様々ですが、必要とする人が円滑に利用できるようにするため、配布を受ける際に書類や手帳の提示などは求められていません。極端に言えば申し出さえあれば誰でも配布を受けられます。
配布される場所は大抵、公共交通機関(各駅の駅務室やバスの営業所など)や病院や福祉センターなどです。しかし、自治体によってどこで配布されているかはまちまちで、配布自体していない自治体もあります。東京都の調べでは2021年10月31日の時点で全ての都道府県がヘルプマークを導入していますが、配布については県でなく市町村がおこなっている所(富山県や福井県など)やそもそも配布すらしていない自治体(青森県や福岡県など)などバラついています。
実際に取りに行くのが難しい人の為に郵送や代理人もOKという自治体もあれば、対面の受け渡し以外認められていない自治体もあります。その点は自分の居住地がヘルプマークをどう扱っているか調べてみるまで分からないかもしれません。一応、在宅でも東京都福祉保健局のガイドラインに従ってダウンロードと印刷をすれば自作も出来るようですが。
ただ、難しい所があるとすればそのぐらいで、先述のように配布を受けるにあたって障害者手帳を提示したり専用の書類を書かされたりすることはありません。必要な時だけ携帯する使い方も気軽に出来る訳です。それこそ、妊娠し始めてからお腹が大きくなるまでの間だけでもヘルプマークの対象になれます。
特典グッズ騒ぎ
そこで今回の酷似品騒ぎです。椎名さんの最新アルバム「百薬の長」の限定盤に付属される特典グッズが、ヘルプマークや赤十字マークに酷似しているという指摘があり、大問題となりました。
ヘルプマークに似ているというのは、「諸々券ケース」というカードケースで、ヘルプマークのハート部分がリンゴマークに差し変わったようなデザインをしています。なまじ白の十字がそのままなので、ぱっと見だとヘルプマークと間違えても仕方ありません。
問題の焦点はヘルプマークと間違えかねないことで、酷似品というよりニセモノや贋作と呼んでも差し支えないレベルです。仮にこの「偽ヘルプマーク」が出回れば混乱の火種となるでしょう。椎名さんのネームバリューはかなり大きいので、ヘルプマークの方が「偽グッズ」扱いされる危険性さえ考えられます。なんにせよ、ヘルプマークの存在意義が危機に晒されている訳です。
また、マスクケースの「夢語りマスク」というグッズも、白地に赤い十字をあしらったもので、「赤十字マーク」への酷似を指摘されています。赤十字マークは戦争や紛争地域の救護活動にも用いられるもので、ジュネーブ条約などの法律で使用について厳しく定められている世界的に由緒正しいマークです。こちらの方が問題としては大きいでしょう。
使う人や見る人のモラルも課題
酷似品騒ぎを抜きにしても、ヘルプマークに関する問題や悩み事は時々耳に入ってきます。主に使用者のモラル、それ以上にヘルプマークを見る人のモラル面です。
使用者のモラル面における問題とは、なにもヘルプマークを印籠代わりにしたり若い女性の介助だけ求めて他を邪険にしたりするだけではありません。なんと無償で配布されるはずのヘルプマークを「転売」する人までいるというのです。願えば簡単に配布されますし、ガイドラインを守れば自作も出来ますし、そもそもヘルプマークの転売は東京都が禁じています。なぜ転売が起こるのでしょうか。
ヘルプマークを取りに行けず自作も出来ない人が転売に頼ると考えられる他、配布を受けようとしても入荷未定になっていていつ手に入るか分からない事情があるようです。品薄状態は転売が蠢きやすくなる要因の一つでもあります。買う側の事情が何であれ、ヘルプマークを金に換えようという発想の方がおかしいというのはご尤もですが。
とはいえ、ヘルプマークにおいてモラル面を問われるのは、やはり「見る人」の側でしょう。ヘルプマークに対して端から「嘘っぱち」と決めつけたり、「ダメな人のマーク」と解釈したり、携帯する人に悪口を投げかけたりする人のことです。ヘルプマークとその意味について知っていながら理不尽な態度をとる人間も世の中には居ます。
ヘルプマークはほとんど善意の元で成り立ち流通しています。善意で回っているというのは、それだけ脆弱性も大きいという意味でもあります。もし周知が遅れていればファングッズ一つに潰されていたかもしれません。しっかり「酷似品騒動」として大衆が取り上げたことは、ヘルプマークにとってはある意味救いであったといえるでしょう。
参考サイト
助け合いのしるし ヘルプマーク
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp
ヘルプマーク、赤十字マークに酷似した椎名林檎グッズに「誤認を招く」「やめてほしい」と批判の声続出
https://nlab.itmedia.co.jp