発達障害の特性を活かす①「学びの特性に合った教育・仕事の大切さ」
暮らし 発達障害出典:https://www.photo-ac.com
皆さんは、学校の勉強は好きでしたか?(好きですか?)よく、「テストの点数だけで人の価値は測れない」と言いませんか?
色々な経験をすると、これが本当だと実体験を持って分かると思いますが、これは「学びの特性」の観点から言っても本当のことなのです。
3つの学びの特性
情報処理の特性は人によって大きく違います。発達障害をお持ちの方が、得意不得意に大きな偏りを持っていることがあるのはご存知かと思いますが、そのような得意不得意は、全ての人が持っています。
学びのスタイルは、大まかに分けると次の3つがあります。
視覚空間型情報処理型
視覚空間型情報処理が得意な人は、タイミングを上手くとって反応したり、バランスを取って体を動かすのが上手です。機械にせよ、計算問題にせよ、実際に手を動かしながら学ぶのが得意です。
聴覚言語型情報処理型
聴覚言語型情報処理が得意な人は、会話が得意です。論理的とは言いにくいですが、細かなニュアンスを掴み取ったり、相手の気持ちを察するのが上手です。
視覚言語型情報処理型
視覚言語型情報処理が得意な人は、会話よりも文章言語を使うことに優れています。「法則化」「理論的で図式的な理解」がキーワードです。意味の曖昧な会話は苦手とします。
学校教育や仕事における学びの特性の現れ方
学校の授業と言えば、先生が教壇に立って、言葉で説明するものが多いと思います。そのような方法は、会話を理解するのが得意な「聴覚言語型情報処理」傾向の強い生徒には合っています。しかし、「視覚空間型情報処理」傾向の強い生徒には、苦痛が伴うことが多いですし、「視覚言語型情報処理」傾向の強い生徒は、聴いて学ぶよりも読んで学ぶ方が得意です。
もうお分かりかと思うのですが、人の能力というのは、一定の方式だけで測れるものではないです。日本で多く採用されるマークシート方式のテストも、極端に言ってしまえば、「まず言葉で発される説明を聞いて(しかも基礎的な内容から応用へと、という順番で)勉強し、紙に書かれた問題を見て、いくつかの項目から正解を選ぶという形式の勉強方法が得意か不得意か」を測れるものです。これも大事な能力なのですが、例えば、視覚言語型情報処理が得意な生徒は、まず応用ありきで、そこから基礎を掘り下げていきます。よって、従来の教育制度ではなかなか興味が喚起されない、ということも実際あるようです。
仕事をする上でも、情報処理の特性は大きな影響力を持ちます。自分の特性に合った職業を選ぶことが、自分の能力を最大限活かすことに繋がります。不適応や、精神の病などを防ぐためにも、大切なことです。
「劣等生」と言われた男子中学生のお話
書籍『子どもが自立できる教育』の中で、岡田尊司さんは、ある男子中学生のお話を例に挙げています。中学二年生の男の子が、成績不振と問題行動(不用意な発言のくり返し)により、クリニックにやってきました。知能検査をすると、総合的な知能は平均的ですが、動作性IQ(視覚情報処理を測る)110に対して、言語性IQは90を下回っていました。実行機能(課題処理を効率よく行う能力)を反映する処理速度は110台半ばで、優秀です。典型的な視覚空間処理優位タイプだと言えます。手を動かして物事を処理する能力に優れる反面、言葉や数字を使いこなすことは得意ではありません。手仕事や、物作りに向いているタイプだと言えます。劣等感の塊のようになっていた彼には、かなり優れた能力も備わっていることが分かりました。が、この能力は周りには気付かれないままで、「勉強が苦手な生徒」とレッテルを貼られていました。それによって溜まった苛立ちが攻撃的な発言の引き金ともなっていました。
この記事を読んで、学びの特性(情報処理特性)について少し理解して頂けたら嬉しいです。続くシリーズでは、各特性について詳しくお話していきます。
▶︎続きのページ:気発達障害の特性を活かす②「視覚空間型情報処理~安藤忠雄さんを例に~」
参考文献
岡田尊司著『子どもが自立できる教育』小学館文庫/2013年
発達障害