大阪で行われたLGBT啓発イベント「映画上映会『私はワタシ~over the rainbow~』 TALK&LIVE」に200名以上が参加

イベント
去る6月29日(土)に大阪市立こども文化センターにて、LGBTの偏見・差別の解消や理解の推進を目的として、「映画上映会『私はワタシ~over the rainbow~』TALK&LIVE」が開催されました。
LGBTとは、セクシャルマイノリティーの中でも比率の高いレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字からとった用語です。この言葉自体は世間に浸透してきていますが、LGBT当事者への理解は未だ追いついていないのが現状です。

「私はワタシ~over the rainbow~」上映

映画「私はワタシ~over the rainbow~」は、LGBTの方々に自分の生き方、考え方、今までの 苦労や世間に訴えたいことなどをインタビューの形式で伝えるドキュメンタリー映画です。

この映画を制作したのは、一般社団法人Get in touchです。Get in touchは女優の東ちづるさんが代表を務め、誰も排除しない「まぜこぜの社会」をめざしてアートや音楽、舞台、映像などのエンターテイメントを通じて活動しています。

この映画では、総勢50名にも及ぶLGBT当事者が皆それぞれに思いを語ります。内容はそれぞれ異なりますが、共通点は、誰に何と言われようと、自分らしく生き抜き「私はワタシ」を貫く姿です。この映画に登場する長谷川博史さんは「自分の性別なんて自分で決めればいい。人からとやかく言われることねえって思ってね。」と語っています。「私はワタシ」という思いを貫くまでには、様々な偏見や差別などの生きづらさがあったことでしょう。LGBTの人達が銀幕を通じて思いの丈をぶつけるには、多大な葛藤や勇気ある決断があったように思います。

テレビでタレントとして活躍する、はるな愛さんは「辛かったら、ほかに、たくさん素晴らしい所があるから。絶対に自殺はやめてほしいと思いますね。」と自身も歩道橋から飛び降りようとしかけた過去を顧み、生きててよかったと命の大切さを訴えています。

LGBTについて理解して、応援する「アライ」の方はすごい勢いで増加していますが、この映画を通じてLGBTへの正しい理解がさらに多くの人々に広がっていくことを願います。

TALK SESSION~東ちづるさん×増田玄樹さん×渡邉あきさん×榊正文さん

 左から順に東ちづるさん、増田玄樹さん、渡邉あきさん
左から順に東ちづるさん、増田玄樹さん、渡邉あきさん

上映会後のトークセッションは、東ちづるさん(女優・一般社団法人Get in touch代表理事)、増田玄樹さん(映画監督・映像作家・シンガーソングライター)、渡邉あきさん(NPO職員・一般社団法人Get in touch事務局メンバー)、榊正文さん(大阪市浪速区長)の4名が登壇して行われました。

榊正文さん(大阪市浪速区長)

榊正文さん(大阪市浪速区長)
増田さんは映画の撮影を通して初めてLGBTという言葉の意味を知ったことを、渡邉さんは自分の性別に対する違和感を大人になって初めてカミングアウトした来歴を話されました。榊氏は淀川区長時代に、全国初の同性カップルの里親の実現に、市役所内部での問題提起から3年を要したことを語りました。

東さんは、オランダで同性婚の結婚式に出席した時のエピソードを話されました。幼い子から高齢者まで、親族や親しい友人たちが愛し合う2人を祝福している光景に感動して、日本との違いにモヤモヤした気持ちが生まれ、これが映画制作のきっかけの1つになったそうです。

東ちづるさん

映画を撮っていく過程で、LGBT特有の苦悩、悲しみ、憤りを聞けると思っていたら、なりたい私になりたい、幸せになりたい、認めてほしい、など当たり前のことばかりで、ドラマチックな映画にならないなあと制作がうまく進まない時期がありました。そんな中、東さんはLGBT特有の何かがあるという偏見で自分自身が捉えていたことに気づき、衝撃を受けたそうです。そこからは、何も望まないフラットな内容にしようと思い、ついにこの映画が完成したのです。

また、東さんはトークの中で「健常者、障害者、セクシャルマイノリティーというカテゴライズされているこれらの言葉の垣根を越えて、“まぜこぜの社会”を」と訴えていました。「まぜこぜの社会」とは東さんが代表を務めるGet in touchの活動理念でもあります。

岩瀬敬吾さん(元19)のライブ

岩瀬敬吾さん(元19)のライブ

イベントの最後は、元19の岩瀬敬吾さんのライブがありました。今回の映画やTALK SESSIONに対する自分の感想を交えながら、素敵な歌を歌って下さいました。岩瀨さんのLGBTに対する思いがこもったライブでした。歌は人の心を動かします。岩瀨さんのような人たちの歌がマイノリティも含め多くの人に届くことで、人々の心が変わっていくことを願います。

共生社会の実現に向けて

LGBTの割合について様々なデータが出ていますが、調査元によって8%だったり1%だったりとバラつきがあります。結果のズレには答えたがらない当事者心理や性別欄など質問側の不備が関わっているという指摘があり、特に当事者心理的な答えにくさは潜在的な偏見と地続きの難しい課題とされています。

また、理解者に恵まれない孤独から自殺行為に及ぶ例もあり、先進国一高い自殺率の一因となっているのではないかという問題提起もトークセッション中になされました。人との繋がりの中で自分の存在を実感できる「居場所」を誰もが持てるようになることが急務です。

こうした映画やトークセッションを通じて、私たち一人ひとりがLGBTについての誤解や勘違いを解消していくことで、生きづらさが緩和された世の中になっていくのではないかと思います。例えば、選挙へ投票して政治に参加することも、制度を変える力になります。とにかく何か行動を起こすことが大切です。そして、様々なセクシャリティ、世代、国籍、生活の生きづらさを抱えた人たちが、今よりももっと幸せに暮らせる共生社会になっていくことを願います。今回のイベントで考える機会を与えて下さった皆様に感謝いたします。

障害者ドットコムニュース編集部

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