「412」(セコラム!第15回)
『セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜』 vol.15 <毎月25日連載>
こんにちは。世古口です。
先日ふとTVを点けると、DJみそしるとMCごはんの曲が掛かっていました。
可愛い声でラップを奏でる、TV画面に映る彼女を通じて、とある男性と仲良くなったことを思い出しました。
そのとある男性とは就労支援のインターンシップ先のお店で出会いました。
アスペルガーと診断された人。人との距離をはかるのが苦手な人。僕と似通った部分がいくつも重なった人。
インターンシップをはじめて2週間が経った頃、彼がそのお店で働き始めました。
働き始めた初日の朝礼。彼の顔はどんよりと翳っており、緊張交じり。自己紹介もうまくままならない様相でしたが、与えられたタスクは卒なくこなし、さらに自分なりの手直しを提案する人でした。
でも同僚や上司とコミュニケーションをあまり図りません。休憩中はイヤホンを掛け音楽を聞くし、仕事中は黙々と仕事をしています。
その状況が気がかりでした。もっと職場に溶け込むことはできないだろうかと考えました。
休憩中はイヤホンで音楽を聴くことが多いとのことで、音楽を聴くことが趣味と思い、「どういう音楽が好きなの?」と質問しました。
「DJみそしるとMCごはんやでんぱ組.inc」が好きと、彼は答えました。
僕も好きだったので、ここから話をひろげていきました。ハイスイノナサがプロデュースしたsora tob sakanaやtofubeatsなど話が及びました。
この楽しい時間を機に、彼と僕の関係性が小さいながらも決定的に変わりました。
彼とお会いすれば、好きなミュージシャンのすることが恒例となりました。
彼と僕との関係性がつくられていくと、その関係性が少しずつ拡張していき、「彼と僕」から「彼と僕と誰か」とまあるい円が大きくなっていきました。
そうすると、彼のまわりに会話が生まれ、他の従業員たちとのつながりができてきました。
おはなしをするようになってきたある日、彼がオススメのミュージシャンを教えてくれるようになりました。
「僕がオススメを教えたから、世古口くんのオススメも教えてね。もっと知りたいから」
この言葉は非常に嬉しかったです。本当の意味で関係性が構築された瞬間でした。誰かを知りたいと気に掛けるところから、優しさが生まれると思います。
これを機に、彼から悩みを教えてくれたり、いくつかの話が及ぶようになったりしました。
結局、どれだけ会話をしていくのか。どれだけ気に掛けるのか。
このシンプルなアクションを積み上げることが、支援者にとって大切だと感じました。
その積み重ねをすることで、潜在的な思いをくみ取ることができ、真のサポートにつながります。
1ヶ月半のインターンシップを終えるとき、彼から餞別をいただきました。
Maison book girl「412」のCD。嬉しくていまでも棚に飾っています。
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