発達障害の特性を活かす④「視覚言語型情報処理~小柴昌俊さんを例に~」
暮らし 発達障害出典:https://www.photo-ac.com/
シリーズ第1回目発達障害の特性を活かす①「学びの特性に合った教育・仕事の大切さ」では、3つの学びの特性についてお話しました。「視覚空間型」「聴覚言語型」「視覚言語型」の3つでした。第2回目発達障害の特性を活かす②「視覚空間型情報処理~安藤忠雄さんを例に~」では「視覚空間型情報処理」について、第3回目発達障害の特性を活かす③「聴覚言語型情報処理~バラク・オバマさんを例に~」では「聴覚言語型情報処理」についてお話しました。シリーズ最後の今回は、「視覚言語型情報処理」について掘り下げてお話します。
「視覚言語型情報処理」の特徴
「視覚言語型」の情報処理が得意な人は、記号や論理を扱うことに優れています。「視覚言語型」の情報処理における特長と問題点には次のようなものがあります。
特長
1 文章言語や数字、記号を扱うのが得意
2 具体的なものより、抽象的な概念に強い
3 分析が得意で、物事を論理化、法則化、図式化して理解
4 マイペースを好み、対人関係は不器用で消極的
5 自分の興味に熱中する一方で、それ以外のことには無関心
6 細部へのこだわりや完璧志向が強い
7 学生時代、成績がよいことが多い(特に理数系、語学)
問題点
1 意味のあいまいな会話や詩的な表現は理解できない
2 感情的なニュアンスが読み取れず、無神経な発言をしてしまう
3 理屈は得意だが、現実の問題解決や身近なことは苦手
4 社交性が乏しく、くだけた、気のおけない会話ができない
5 手先や体の動きが不器用で、運動も苦手な傾向
6 一度に二つのことができず、実践面では滞りやすい
7 筋道や理屈にこだわり、納得できないと頑なに抵抗する
小柴昌俊さんも「視覚言語型」な人
物理学者で、ノーベル賞も受賞した小柴昌俊さんも「視覚言語型」の情報処理をお持ちなようです。
小柴さんは小さな頃から本の虫で、いつも目が赤いため、「ウサギ」というあだ名がついていました。中学一年生の時に小児マヒにかかり、五カ月間学校を休みます。見舞いの際に担任の先生が持ってきてくれたのが、アインシュタインの『物理学はいかに創られたか』という本で、それが物理学との出会いでした。高校時代は成績が振るわず、教師が雑談で「小柴は成績が悪いので、(東大へ進学しても)インド哲学科くらいしか入れない」と言っているのを聞いてしまいます。一念発起した小柴さんは、猛勉強をし、東大物理学科へ入学します。人から言われても動きませんが、自分で決意すると猛烈な努力ができる人が、このタイプには多いそうです。
その後は東京大学理学部教授に就任し、「カミオカンデ」の功績が認められ、ノーベル賞も受賞します。小柴さんがここまでの成功を収めた理由の一つとして、人間的魅力、リーダーシップがあるでしょう。理論物理ではなく、実験物理を選考した小柴さんには、チームで仕事をする能力が必須でした。そのような能力は、勉学ではなく、高校時代に全寮委員会の副委員長を務めたことや、生活費を稼ぐためのアルバイトで培われたと思われます。ちなみに、アルバイトのために、学校に行くのは週に1日の時期もあったそうです。
「視覚言語型」の人に向いた学習法
視覚言語型の人は、抽象的な言語や記号が得意で、言語で思考するよりも、シンボルやイメージで思考します。学校の成績もよいケースが多く、特に理数系や語学が得意なことが多いです。ただし、会話やヒアリングよりも、文章読解の方が得意です。論理や法則が好きで、細部へのこだわりや完璧志向も強く、曖昧な表現や空気を読むことは得意とはしませんが、精密さ・厳密さを要求される仕事には強い適性を示します。実技面、管理面での能力は見劣りするケースもあり、体験型・実技型の学習によっての訓練や自己管理の練習が後々役に立つ場合もあります。向いている職業として、デスクワークや研究室での勤務があります。研究者、学者、技術職、IT関係、法律関係、会計関係などが合っています。コミュニケーション面の難しさを補うために、社交や交渉が得意な聴覚言語型の人と組むと、ビジネスが非常に上手くいくことがあります。
4回に渡るシリーズで、3つの情報処理の特性について見てきました。ご自分の成長のため、また周りの人達の成長を応援するためのヒントを少しでも見つけて頂けたら、とても嬉しいです。
参考文献
wikipedia 小柴昌俊
https://ja.wikipedia.org
岡田尊司著『子どもが自立できる教育』小学館文庫/2013年
発達障害