社会問題としての機能不全家族を考える(後編)

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前編では、機能不全家族とは何なのか、当事者たちは機能不全家族にどう向き合うべきかお話しました。本編では具体的な解決のために当事者たち、また社会全体としてどのようなことができるか考えていきたいと思います。

当事者たちの回復への道

機能不全家族の回復を図るためには、どうすればいいのでしょうか。

機能不全家族を形成する親にその本質を治してもらう事が一番早いのでしょうが、彼らは家庭機能が不全になっていることや改善の必要性に気づきにくく、外部からの指摘や子どもからのサインで変えるのはなかなか難しい所があります。

第二にできることは、機能不全家族で育った子どもが親になる前に、その連鎖を止めることです。彼らは、機能不全家族の第一の被害者ですが、親になり機能不全家族を再形成し加害者となる可能性もはらんでいます。一方で、その有害性を一番に分かっているからこそ、その改善の必要性を理解でき、連鎖に歯止めをかける事ができるとも考えられます。

改善を図ろうとする元機能不全家族生まれの人々は自らを「アダルトチルドレン(AC)」と呼んでいます。自分は過去に親からこんな仕打ちを受けたから自分は悪くない、生きづらさやできないことはアダルトチルドレンだから仕方ないだと思う為ではありません。回復のために、当事者が自分の特性を理解し、然るべき対処方法を正しく判断する為の言葉です。

アダルトチルドレンたちの回復プログラムには、心理士など専門家によるセラピーやカウンセリング、自助グループ主催のミーティングなどがあります。どの方法で回復にアプローチするにしても、アダルトチルドレンであるという自覚し、自分は親に縛られた過去を持っていると認め、それを乗り越えようと自分はしているのだと意識することが求められます。

社会全体の課題として機能不全家族に向き合う

ここまで当事者たちの立場から機能不全家族について、その回復にはどのような糸口があるのか考えてきました。しかし、「当事者の親は機能不全家族であることを自覚がしにくい」、「当事者の子どもは自分だけで解決するのは難しい」など、彼らの自助努力だけでは対処できない場合がありました。つまり、社会全体の課題として、機能不全家族を捉える必要があるのではと思います。

実際行われているものとして、子どもからのSOSを受け付けられる体制を学校や自治体の施設に常時作っておくことや、子どもが自らの問題に気付けるような教育を行うこと、子どもが情報をあつめやすい情報共有の場の提供をすること、家庭内の問題について相談でき、かつ解決に向けて支援できる機関を設けることなどが挙げられます。しかし、社会からのアプローチがあったとしても、それを当事者が活用しなくては意味がありません。

社会がこの問題に関し一番求められるのは、機能不全家族という概念の社会的周知することではないかと思います。そういう問題が身近にあり、自分も当事者になるうる可能性があることを誰もが知っていることこそが、第三者の支援や当事者本人の気づきをより迅速なものにできると思います。

社会とは、行政や専門機関だけでなく、当事者本人たちも含むすべての人々のことを指します。つまり、機能不全家族の問題を「家庭は個人のものだから」と割り切らず、世の中様々な人の正しい理解が求められているのだと思います。

まとめ

家庭の果たす役割は、子どもの教育の場や家族の安らぎの場経済的安定の基盤など、様々な側面を持ちます。その役割の性質や保たれ方は時代とともに変化し、多様なものになってきています。様々な家庭がある中で、トラブルや問題が発生するのは当たり前の事なのかもしれません。問題があることそのものが問題なのではなく、問題に上手く対処できるかが問題であるのだと思います。問題のさなかにいる当事者を「社会問題の元凶だ」と責めるのではなく、いかにして社会全体でこれらの問題を乗り越えていくか考えていける社会を目指していきたいものです。

参考文献
「機能不全家族」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
https://www.just.or.jp

「アダルトチルドレン」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
https://www.just.or.jp

「アダルトチルドレンの由来」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
www.just.or.jp

「アダルトチルドレン6つの役割」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
www.just.or.jp

「アダルトチルドレン13の特徴」日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオン
www.just.or.jp

haru

haru

あまいものと中華料理が好きな24歳です。数年前海外大学院を中退。帰国後、うつ病と診断。一人暮らしをしながら就活をしています。現在アサーションやセルフモニタリングを勉強しながら人との関わり方や自分の保ち方を模索しています。

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