ASD(自閉スペクトラム症)の恋愛~誰かを好きになるうえで大切なこと

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ASDの人達はどんな恋愛をするのでしょうか。気になる相手への好意や、恋愛関係の築き方、恋愛に伴う問題への対処等。恋愛の悩みごとは、障害に関係なく誰もが抱えるものですが、やはりASDには特有の悩みがつきものです。ASDによく見られる恋愛スタイルから、恋愛の悩みと注意点、気になる相手と恋愛関係に発展するために大切なことを話します。

ASDの恋愛スタイル

ASDの恋愛においては、恋愛に興味が持てない、気になる相手にアプローチできない、好意を伝えても相手にうんざりされてしまう、そういった悩みが多いです。情緒的な強い結びつきと愛情表現を求めるか、もしくは利害の一致で付き合うドライな関係等、障害に関係なく恋愛に求める関係は多種多様です。とはいえ、ASDには共通する恋愛スタイルと行動パターンが見られます。

【ASDの恋愛スタイル】
ASDの代表的な3つのタイプは、彼らの恋愛スタイルを強く反映していると考えます。

①受動型:大人しく従順なタイプです。受動型は、基本来る者拒まず去るもの追わずの性格なので、恋愛においても受け身になりがちです。
私自身も受動型の傾向は強いほうで、恋愛に興味がないわけではありません。ですが私は、恋愛よりも自分の興味を優先しがちなうえ、告白されることもなかったので、誰かと恋愛関係を築いたことは一度もありません。今までに気になった異性はいましたが、相手が私に関わりをもたなくなった時はそれで終わりました。私の中では、接点を失ってしまった相手の気を引くという発想が浮かばず、積極的なアプローチには繋がりませんでした。

ASDの女性で注意しておきたいことは、受動型は交際相手からのDV(ドメスティック・バイオレンス)やハラスメント、性被害に遭いやすいことです。ASDのドナ・ウィリアムズさんやASDの精神科医Lobinさんも、迫ってきた相手から逃げる、はっきり断るという発想が浮かばず、身体的・金銭的に利用された経験が多かったです。私自身も運が良かったのですが、危うく被害に遭いかけたことはあったと思います。ASD男性の場合も、パートナーからの逆DV(多くは女性のパートナーからの暴力)等の危険もあるかもしれません。

②積極・奇異型:好奇心旺盛で他者と積極的に関わるASDです。一見コミュニケーションが取れているようで、実はマイペースに自分のことばかり話す等、一方通行のやり取りが多いです。このタイプは恋愛においても積極的で、人によってはかなり惚れっぽい傾向があります。

私の知り合いのASDさんも、「恋人が欲しい!結婚したい!」が口癖で、私から私の友達、事業所に通う利用者さん、職員さんを褒めちぎっては口説いていました。ただその方も、婚活パーティーにも色々参加し、相手と知り合っても、最後は上手くいきませんでした。理由は、その方が相手を好き過ぎるあまり、仕事中もしきりにメールを送り、しかも内容は自分の興味のあることで一方的だったからです。積極・奇異型の恋愛では、好奇心旺盛でユーモア溢れる所が相手には魅力的に映ります。反面、付き合いとコミュニケーションが一方的になりやすいので、相手によってはしんどさを覚えるかもしれません。

③孤立型:孤高の一匹オオカミで、人との密な関わりを好まないASDです。このタイプは、自分の興味のあることにのみ強い関心を注ぎ、人付き合いへの関心や喜びをあまり見出しません。恋愛に対しても淡泊であることが多く、愛情表現も乏しくなりがちです。私はこのタイプほどではありませんが、一生独身でいるのもかまわない、という考えもあります。

ASDの恋愛と悩み

ASDの方がしばしば恋愛でつまずくのには、ASDの特性や今までの人生経験等、以下の背景が考えられます。

①自分の興味・関心を優先する
ASDの特徴として、興味の限定・こだわりの強さがあります。気になる相手がいても、自分の趣味やスケジュール、日課を優先しがちで、自発的なアプローチに結びつかないことが多いです。またデート中でも、自分の関心ごとばかり話してしまう、デートでの食事や行き先、計画したデートスケジュールへのこだわりから柔軟なデートを楽しめない、不測の事態に対するパニック等があります。さらに、私もそうですがASDには何気ない会話が苦手・できないです。そのため友達関係はもちろん、そこから信頼に基づく恋愛関係へ発展させることが難しい、時間がかかりやすいです。

私が、ASD男性Bさんと二人で映画に出かけた時の話です。上映まで待ち時間があったので、私はお店を見たいと伝えました。しかし、Bさんは一人でぶつぶつ話しながらショッピングモール内を歩き回り、何故か駐車場に辿り着きました。Bさんの中では映画のことが頭を占めているので、他のことが目に入らず、さらに多動もあったので落ち着かない様子でした。Bさんとは同じ趣味があったのでその話をしますが、Bさんは同じこと・同じセリフしか話しません。そのため会話は進まず、キャッチボールが成立しないことが多かったです。

②コミュニケーションが難しい・一方的になりがち
ASDは、相手の表情や言葉に隠れた意味を察することがほぼ難しいです。相手は疲れ切っているのに、相手に言われないと気付かずに連れまわしてしまう。相手はあいづちを打っているけれど、本当は退屈で一生懸命合わせていることにも気づかず、自分の話をえんえんと続けてしまう。相手からの返事はないのにしつこく連絡し、「私はあなたが好きだから、あなたも私を好きでしょう?」、と思い込む。これらの行動は、私を含む多くのASDがやってしまいがちです。もともとの特性に加え、対人スキルをきたえる機会に恵まれづらく、人付き合いでの経験値も浅くなりがちであることも、特にASDの恋愛を悩ませます。

③心理的・情緒的な揺らぎが大きい
私もそうですが、ASDの人が恋愛に興味を持てるようになるまで、恋愛感情の発達もゆっくりです。中には、幼い内から恋愛感情を発達させるASDもいますが、その自覚や表現が難しく、行動上の問題として表れることもあります。ASD女性のCさんは、恋愛感情が高じて情緒不安定になる、自分をコントロールできなくなるストレスから恋愛に踏み出せません。私自身も、わりと好きなマンガやアニメのキャラクターに夢中になりやすく、四六時中考えながら日々を送っています。なので、いざ現実の誰かに恋をした時に自分がどうなってしまうのか、興味と不安はあります。

またASDの方で、過去の人間関係でのつまずきやトラウマ、恋愛の失敗経験等によって、自信を失っていることも多いです。ASDに限る話ではありませんが、好意を持つ相手に自分からアプローチし、信頼と親密性で成り立つ恋愛関係を築くには、ある程度自分を好きになることが大切です。しかしASDの多くは空気が読めない、ズレている、自分勝手だ、と周りに言われ、いじめや叱責等のネガティブな体験を重ねる内に、自己否定を強めてしまいます。

私も昔は、異性からよくいじめられ、変わった言動から反感を買われていました。そのせいか、私は今も心のどこかで「普通に雑談ができない、世間知らず、オタクな自分を好きになる異性はいないだろう」、と思っています。恋愛よりも自分の趣味と興味を優先したくなる気持ちが大きいのもありますが、恋愛での自信のなさも、恋愛感情にブレーキをかけているのかもしれません。

ASDの人が幸せな恋愛をするには?

では、ASD以外の方にも言えることですが、幸せな恋愛をするために自分ができること、アプローチや相手を選ぶ際の注意点等について挙げます。

【好きな人に魅力を感じてもらうには】
・清潔感、身だしなみを整える
服のえりやすそがヨレヨレで汚れている、パジャマのような服装、寝ぐせやヒゲ、口元の汚れがひどいとなると、相手は自分が恋愛対象として意識されていないと思い、好意は伝わりません。自分の服装や身だしなみが大丈夫なのか、自分で判断するのが難しい時は、家族や身近な人にチェックしてもらいましょう。

・自分のテリトリーから一旦降りてみる
自分のペースやこだわりばかりではなく、相手の気持ちやペースを尊重し、相手の話も聞くようにします。自分の趣味・関心を話してもいい時は、①相手も共通の趣味・関心がある、②相手が自分の話に興味津々であいづちをうっている時は、たいてい大丈夫です。どうしても疲れた時は、お手洗い等の休憩や間を取る、デートの時間を短くしておきましょう。

雑談が苦手な方は、映画館、水族館、動物園、演劇、コンサート等、会話があまり要求されない、共通の話題が出やすいデートを選ぶ、雑談に使えるネタのリスト・台本を用意して練習する手もあります。恋愛心理学の本で勉強しておくのもいいと思います。もちろんそれだけで、人間関係・コミュニケーションが全て上手くいくわけではありません。それでも知識があるだけでも安心しますし、練習しやすくなります。

交際初期のタブーな話題:収入、宗教、政治、性、道徳、相手の体・年齢、死刑、子どものしつけ、健康、過去の恋愛と交際相手、相手が怒りや不快感を示す話題(人によっては仕事、家族もNGになる場合もあります)

・あなたにとって、相手は特別で大切な人だと信じてもらうには
文化的な違いや男女差によっては賛否両論あると思いますが、女性に好かれるためには、ささやかな気遣いが大切です。相手の持ち物や服装を褒める、扉を開けてあげる、人ごみや車からかばう、ものを取ってあげる、相手の好きなものや、ほんの小さなプレゼント(手のりサイズの小物や花、お菓子等)等、ささやかなことの積み重ねが、相手には嬉しかったりします。性別問わず大切なことですが、相手の良いところを褒める、感謝と笑顔を絶やさない、一緒にいられて楽しいことを伝える、余程のことがない限り相手を否定しないことです。それによって人は、自分を肯定してくれる相手に好意を持ちやすく(好意の返報性)、自分が大切にされていると感じます。

【相手が好意・関心を抱いている可能性の高いサイン】
人によっては、内気で好きな人にそっけなくなる人もいますが、多くは好意を示している非言語的サインや態度は以下の通りです。

・あなたの隣に座る、手や体が触れても嫌がらない
・あなたが隣に座ってきて、近づいてきても嫌がらない
・柔らかく微笑んでいる(口元を無理矢理あげるような愛想笑い、馬鹿にしたような笑い方は除く)
・あなたをじっと見つめている(アイコンタクト)。もしくは一旦そらしても、またじっと見ている。
・リラックスしているサイン:両腕を開いている、体があなたのほうを向いている、

【関心・好意を持たれていないサイン・してはいけない行動】
・あなたに関心のないサイン:腕を組んでいる、頬杖をついている、視線をそらしっぱなし、距離を開ける、あいづちを打たない・返事が淡々としている、無表情で微笑んでいない。
・上記のサインが見られる時は、脈がないと考えていいです。相手から返事がまったくない場合は、自分のほうからしつこく連絡しないほうがいいです。

【恋愛のパートナーにふさわしい人】
・あなたの意見を尊重してくれる
・ちゃんと話し合いができる
・あなたがノーと言ったら、すぐにやめてくれる
あなたを本当に好きな人は、あなたの嫌がることをしません。あなたを本当に大切だと思う人は、あなたの体と心を傷つけることはしません。そのためにはあなたも、どうしたいのか、どこまでがよくてどこまでがダメなのか、自分の中で明確にしておきます。断り辛い時は、「家でお茶は無理だけど、近くのカフェならいいよ」、というように「でも〇〇ならいいよ」というフレーズを使えば相手も不愉快にはなりません。もし分からないのであれば、素直に「分からないから待って・考えてさせて」と伝え、信頼できる人に相談します。
もちろんこれ以外にもあると思いますが、他には:
・一緒にいると安心できる
・分からないことは、馬鹿にせずにちゃんと教えてくれる
・あなたの嫌がることを強要しない

【恋人にしてはいけない人・恋人でもしてはいけない行為】
・あなたに暴力をふるう、閉じ込める
・あなたに暴言を吐く、馬鹿にして笑うような発言をする
・あなたに嘘ばかり吐く
・あなたのお金やモノを利用する
・他にも恋人がいる人、既婚者
・あなたに常識や価値観を押し付けてくる
・あなたの体に無理やり触ってくる
・デリケートゾーンを無理矢理見せる、触らせる

最後に

ASDを含む全ての人にとって幸せな恋愛のために、大切な前提が一つあります。それは、

「あなた自身はどうしたいのか」

自分の素直な気持ちを確認することです。

現に好きな人がいて、その人との関係を発展させたい、と思っているのならいいのです。ただASDに限ることではありませんが、「この年で恋人がいない、恋愛経験がないのはカッコ悪い」、「結婚のためにも恋人は作ったほうがいい」、といった周りの期待や圧力に押されて、とりあえず恋愛しようとするパターンは多いです。

ですが、本来恋愛も結婚も、「互いに一緒にいたい」、「一緒にいると安心・幸せな気持ちになれる」、「特別で大切なこの人と一緒に生きたい」、と思えるような深い絆で結ばれる親密な関係です(恋愛スタイルも多様化してきてはいますが)。今はもう恋愛・結婚、生き方も多様になっています。

私も自信がないことを前述しましたが、自分は恋愛に恵まれないことに不幸やコンプレックスを感じたことはありません。生きている間に、一緒にいたいと思える人が現れたらそれは幸せですし、もしいなければ独身で趣味と仕事を楽しむのも悪くない。そう、のんびり考えています。

恋人や結婚の有無で、あなた自身の価値が変わるということはありません。

あなたはそのままのあなたを好きになっていいのです。

ASDを含む多くの方が、自分も相手も互いに大切にできる素敵な恋愛ができることを願います。

参考文献
・デビ・ブラウン(翻訳:村山光子・他)(2017)『アスピーガールの心と体を守る性のルール』東洋館

・マクシーン・アストン(翻訳:テーラー幸恵)(2015)『アスペルガーと愛~ASのパートナーと幸せに生きていくために~』東京書籍

・マクシーン・アストン(翻訳:テーラー幸恵)(2013)『アスペルガーの男性が女性に付いて知っておきたいこと』東京書籍

・岡田尊司(2016)『アスペルガー症候群』幻冬舎新書

・ドナ・ウィリアムズ(訳:河野万里子)(2000)『自閉症だったわたしへ』新潮文庫

・Lobin.H(2011)『無限振子 精神科医となった自閉症者の声無き叫び』協同医書出版社

・グニラ・ガーランド (熊谷高幸監訳・石井バークマン麻子訳)(2007)『自閉症者が語る人間関係と性』東京書房 

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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