全盲エンジニアが生み出したDXアプリ「おでかけくん」~視覚障害者の外出支援を革新する挑戦

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視覚障害者の外出を支援するべく開発された業務用アプリ「おでかけくん」。これを世に出したのは、2人の全盲のエンジニアでした。

「おでかけくん」は直接音声ガイドをして導くようなアプリではなく、視覚障害者の外出を支援する福祉サービス「同行援護」のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を通じて当事者・ヘルパー・事業所がより効率的にやり取りできるようにするものです。言い換えると、視覚障害者が外出時にガイドヘルパーを利用するためのやり取りをスムーズにするツールとなります。

外出支援をDXで効率化する「おでかけくん」

「おでかけくん」の機能は、利用者からヘルパーへの依頼、ヘルパーから事業所への報告、事業所でのプロフィール管理、利用者とヘルパー間でのチャットなどです。これらのやり取りや手続きを、アプリひとつ且つペーパーレスで済ませられるのが特徴です。当然ながら、音声読み上げなどの視覚障害者向け機能も充実しています。

開発のきっかけは、視覚障害者相手でも紙と印鑑を使う従来型への不信感でした。紙に書かれた実績をヘルパーが読み上げ、利用者が印鑑を押す従来の方式は、お互いの良心への依存度が高く情報保障としても不健全なものです。また、事業所としてもヘルパーと利用者のマッチング業務が非効率的だという課題がありました。それらを一気に解決したのがおでかけくんです。

元々は、開発した「同行援護事業所みつき」だけで使用するシステムでしたが、他の事業所から同じような悩みを聞いたため、他事業所も使えるようにサービスをリリースしたという背景を持ちます。こうした開発作業も含めて、開発には2人の全盲エンジニアがコアメンバーとして関わっていました。

エンジニアは視覚障害者にこそ向いている

「おでかけくん」を開発したのは、2人の全盲のエンジニアです。彼らは視覚障害者こそエンジニアリングに向いていると考えています。その理由は、プログラミングが基本的にテキストベースの作業であり、音声読み上げソフトを活用すれば十分に対応できるからです。

「テキストができればプログラミングはできると知って、音声読み上げを使いながらメモ帳にプログラムを書いてきた」
「視覚情報に頼る必要がないからこそ、視覚障害者にとってプログラミングは適した職業の一つだと思う」
彼らはそう語ります。

実際、視覚障害者がエンジニアとして活躍する場面は増えてきています。プログラミングは主に論理的思考が求められる分野であり、視覚に依存しないため、視覚障害者でも十分に対応できる可能性が高いのです。さらに、音声読み上げソフトを活用すれば、晴眼者と同等にコードを記述し、開発業務に携わることが可能です。

さらに、「おでかけくん」の開発においては、視覚障害者と晴眼者が協力しながら議論を進めたことで、ユーザー目線の設計が可能となりました。これは、視覚障害者自身が開発に関与することで、より実用的で使いやすいアプリを作ることができた好例といえます。

自社用システムから社会実装へ~課題と未来

「おでかけくん」は、もともと「同行援護事業所みつき」内での利用を目的として開発されたアプリでした。しかし、他の事業所でも活用したいという声が増え、やがて一般リリースへと発展しました。

社会実装に向けて最も苦労したのは、自社向けのシステムから多様な事業所での活用に適応させるプロセスでした。他の事業所が導入するにあたり、管理するデータの種類や業務フローの違いに対応する必要があり、さらにセキュリティの強化も求められました。従来の運用を維持しつつ、将来的な拡張性も確保することは、開発において大きな課題でした。

それでも、重大なバグやサービス停止、個人情報の流出といったトラブルを起こすことなく、スムーズにリリースへとこぎつけることができました。

今後は更なる機能向上として、マッチング面での強化を考えているそうです。利用者の希望に応じて、趣味や性格が合うヘルパーをマッチングできるような機能強化が具体的な案として検討されています。

同行援護事業所みつき 
https://spot-lite.jp/

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

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