発達障害は依存症になりやすい?②
発達障害②2019年5月25日、世界保健機構(WHO)は、日常生活に支障をきたすほどゲームに没頭してしまう「ゲーム障害」を病気であると正式に認定しました。“遊び”だったはずのゲームが依存症になってしまう…実は、発達障害者は、依存症になりやすいといわれています。 前回のコラムでは、依存症について紹介しました。今回は引き続き、依存症になりやすい背景と、なってしまったらどうすればいいのか、ご紹介します。
なぜ依存症になりやすいのか?
依存症になりやすい障害特性とは… ADHD(注意欠陥多動性障害)の特性のある人は、やる気や快感を出すドーパミンが少ない傾向にあることがわかっています。刺激が少ないと、やる気が出ず不注意によるミスが多くなります。何かに依存することでドーパミンを出すことができるので、それを続けていくうちにやめられなくなってしまい依存症に陥ってしまうのです。 また、ADHDは衝動性が高く欲望のセルフコントロールの難しさがあります。大好きなお菓子が目の前にある場合、それをお預けで待つのが難しいのです。この特性が依存症になりやすいといわれています。 ASD(自閉症スペクトラム)の特性のある人は、過集中/こだわり/のめりこみが依存症へ陥りやすい特性といえます。 依存症になりやすい背景には… 発達障害者は、前頭葉の発達が未熟なため、学習・認知障害があり判断力・創造力の乏しさにより、社会性が発達しにくいことから、日常生活や仕事がうまくいかず対人関係でもストレスを抱えやすくあります。 障害特性により、こどもの時から、まわりのこどもと違うことからいじめに遭いやすかったり、親や先生から叱責されることが多いため、自己評価や自尊感情が低くなります。劣等感が強いことから人付き合いを避け、問題を相談できずに孤立してしまい、不安障害を発症したり、ストレス発散の手段として依存行為をしてしまうことがあります。 また、アルコールなどの依存症は、世代連鎖があるといわれています。親が依存症である場合、家庭の仲が機能不全な状態にあることが多く、こどもが依存症になる確率も高いそうです。
依存症は治る?
依存症は治りにくい病といわれています。ひとつは、本人が依存症を否認し治療につながらないこと。もうひとつは、まわりが問題行動を隠してしまい、治療につながらないことがあげられます。 本人は社会的に都合の悪い問題行動を公にはしたがりません。そして、家族や配偶者などまわりの人も、身内の恥をさらしたくないと、問題行動の後始末に奔走してしまいます。そこでなかなか発覚せず、病院や支援機関の介入が遅れてしまい、病が進行してしまうのです。まわりが問題行動を隠したり、その後始末をすることは、結果的に本人の依存症を容認していることです。本人にとってもおおごとにならずに済むことから問題意識を感じにくくさせてしまいます。 アルコール依存症の場合に、よくいわれていることは、「次に飲んだら離婚する」という脅し文句があります。この場合、本当に実行するという覚悟を持たなければいけません。なぜならば、このセリフを何度も繰り返し、実行に移さない場合には、「脅すだけで実行されない」と本人は学習し、辞めるためのストッパーとしての機能を果たさなくなるからです。やめるきっかけを得るためには、本人が「このまま続けていては、もうダメだ」という底つき体験が必須です。そのため、まわりは専門家のサポートを得ながら、心を鬼にして向き合うことが大切です。 依存症者に対しては、問題行動だらけで、自暴自棄でだらしないし、どうしたらいいの?と途方にくれてしまうこともあると思います。しかし、依存行為は、自己治療という一面を持っています。それは、不眠/痛み/不安/ストレスなどを解消させるために依存行為を繰り返してしまうという側面があるのです。生き伸びるため、毎日の生活をこなすために依存行為を取り入れているのです。依存症は少しずつ体を蝕みます。傷つけるという意味では、自傷行為と同様、“生きたい”というメッセージなのです。
どこからが依存症?
依存症は否認の病といわれています。まわりの人がやめるようにいっても、「このくらいは、まだ大丈夫」と、本人が認めないのが依存症の大きな特徴です。 問題行動にはどのようなものがあるでしょうか。たとえば依存行為が原因で、暴言・暴力をふるう/事故を起こす/遅刻・欠勤・離職する/犯罪行為/借金/心身の不調/疾患などがあります。本人の困り感はさておき、どれほど周囲に迷惑をかけているかがポイントです。あやしいな、と思う場合は、依存症の自己診断(家族がかわりにやってみてもかまいません)サイトがありますので、一度チェックをしてみてはどうでしょうか?様々な依存症のチェック・サイトがありますが、ここでは2つをご紹介します。インターネット依存症のスクリーニング・テストの方は、インターネットを気になる他の依存物質に変更して自己診断をしてみましょう。 依存症は治療が可能で、回復できる病です。 専門病院やクリニックでの心理療法や薬物療法を用いて、治療が行われます。まずは、問題をひとりで抱え込まないでください。本人が相談へ行きたがらない場合には、家族からの相談にも応じてもらえます。専門病院やクリニックのほか、市町村や民間の専門援助機関がありますので、まずは相談してみてください。
参考文献
地域におけるアルコール依存症の治療や支援の実態及び課題 アルコール依存症に関わる専門職の語りからその対策を考える 九州保健福祉大学 西田 美香
アルコール依存症WHOチェックテスト アルコール依存症治療ナビ
http://alcoholic-navi.jp
【独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター IAT : Internet Addiction Test (インターネット依存度テスト)】
https://kurihama.hosp.go.jp
今村明先生にADHDを訊く 長崎大学 今村明
https://www.jspn.or.jp/
発達障害 その他の障害・病気 注意欠陥多動性障害(ADHD) 自閉症スペクトラム障害(ASD)